新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について(15)
2020月06月03日 配信
1.世界の感染状況
*統計データは、WHO Situation Reportを使用。(グラフを作成)
** 地域は、WHOの分類による。西太平洋地域には、日本、中国、韓国、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ラオス、カンボジアなど、南東アジア地域には、インド、タイ、マレーシア、インドネシア、ミャンマーなど、東地中海地域には、中東、イラン、サウジアラビア、パキスタン、地中海沿岸のアフリカの国々などが含まれる。
▶アジアの国々:
- ヨーロッパにおける流行はやや下火になりつつありあるが、世界の累積のCOVID-19陽性者数は、継続して増加している。米国の増加率は減少しているものの感染者数は増加傾向、ロシア、ブラジル、インドでの感染拡大が始まっている。パキスタン、バングラデシュを含む南アジア地域、南米での流行がはじまり、地中海沿岸、中東の国々(サウジアラビア、クウェートなど)でも増加している。中東地域の流行拡大は、外国人労働者として、劣悪な住居状況にいる人たちの間での流行である。
- ヨーロッパや米国におけるロックアウトの解除、夏のバカンスにむけての観光地も開かれることとなり、感染の再拡大の可能性もある。
- 東南アジア地域では減少状況が継続している。
2.日本、東京都国内感染状況
▶日本全体:
▶東京都:
(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)
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5月25日、全国で緊急事態宣言が解除されたものの、愛媛、北海道、北九州市などの医療施設でクラスターが発生している。
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外国からの入国者の陽性例が増加してきている。陽性者には、14日間の隔離期間を設けている。
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東京都の発生数も減少傾向から、多少の増加傾向にある。
3.感染者数「ゼロ」ではなく、死亡者数「ゼロ」を目指す。
- 日本の新型コロナウイルス戦略は、基本的には、ある程度の感染は受容するが、重症化を防ぎ、死亡例を少なくすることを念頭に対策が行われてきた。しかしながら、3月末から感染者が急増したため、緊急事態宣言が発動された。医療機関の重症者の受け入れ能力を超ええることによる感染爆発が起きることを、防ぐためである。
- 新型コロナウイルス感染症対策チームが国や自治体に提言してきた『人と人との接触の8割削減』の目標のもとに、多くの国民が外出自粛を行ったことにより、感染者数は劇的に減少し、感染爆発を防ぐことができた。
- 緊急事態宣言による、人々の外出自粛、経済活動自粛の経済に及ぼす影響は甚大なもので、感染者数の減少等も考慮しつつ、5月25日に全国の緊急事態宣言が解除され、学校の登校が始まるとともに、経済活動が再開された。このような中、複数の医療施設等でもクラスター感染が起き、感染者数の減少傾向も停滞している。
- しかしながら、ある程度の感染者数の増加は、やむを得ないものであり、感染爆発を起こさないかを慎重に判断し、正常化に向けてのプロセスを進める必要がある。戦略としては、「感染者ゼロを目指すのではなく、死亡者ゼロを目指す」べきである。
- 今後は、学校においても、段階的にスポーツ活動の開始、他の接触活動も開始されていくことになる。経済的な活動も段階を経て、拡大していき、接触の機会も増大する。
- このような中、ある程度のクラスターの発生、無症状感染者(病原体保有者)による感染等により、感染者数は増減しながら、次第に減少していくことが予想される。ある程度の割合(厚生労働省:5/8 15547人の陽性者中1143人の7.4%が無症状、海外検疫150名中115名の76.7%が無症状))での無症状感染者がいることから、どのような対策を行っても、完全に感染を防ぐことは困難である。
- 社会的問題となる可能性があるのは、感染者に対しての「差別」「非難」である。このような「差別」「非難」が起きないようにすることを人々に伝えていく必要がある。特に学校においては、起こりやすいので気を付ける必要がある。
- 新型コロナウイルスに関してはまだ十分わかってないことが多い。1つは、どれだけ抗体があれば感染を防ぐことができるのか。もう1つは獲得した免疫が、どれほど長持ちしてくれるのか。ということである。これらの研究も進めていく必要がある。
- 効果的な治療薬ができることにより、死亡者をゼロにすることを目指して、治療薬の開発が行われているが、現時点では、特効薬はまだ発見されていない。
- ワクチンの開発も行われている。効果的なワクチンが開発されれば、ワクチンをすべての人に接種することにより、行動制限等も必要なくなる。しかしながら、ワクチン開発には通常2年かかると言われている。世界中で開発競争が行われ、早くなる可能性があるものの、1年以上は必要である。
- もう一つ言われているのが、集団免疫の考え方である。国民のある程度の割合(現在では50-60%以上ぐらいかと推定される。)が感染し、抗体を持つことにより、流行の拡大のリスクが下がると言われている。ただ、そうなるためには、3-4年の年月が必要と考えられる。
- パンデミックを起こし、まだまだ、世界での感染者の増加傾向が続いている中、新型コロナウイルスとの共存の戦略を練っていく必要がある。
※参照:https://www.nhk.or.jp/special/plus/articles/20200513/index.html
新型コロナウイルス 出口戦略
4.2歳未満の子どものマスクは不要、むしろ危険!
- 日本小児科医会は25日、2歳未満の子どもにはマスクは必要ないとする声明を発表した。呼吸がしにくくなるなど、むしろ危険な場合もあるとし、保護者らに注意を呼びかけている。
小児科医会によると、乳児は呼吸器の空気の通り道が狭いため、マスクの着用は呼吸をしにくくさせ、心臓の負担になるという。
- マスクそのものや嘔吐(おうと)物による窒息のリスクが高まること、マスクで体内に熱がこもり熱中症のリスクが高まること、顔や唇の色、表情の変化など、体調の異変に気づくのが遅れることなどの健康影響が懸念されると指摘している。
- 声明では、世界的に子どもの感染例は少なく、重症例もきわめて少ないと説明。学校や幼稚園、保育園でのクラスター(感染者集団)の発生はほとんどないとしている。
- 世界の新型コロナウイルス小児感染症から、①子どもが感染することは少なく、ほとんどが同居する家族からの感染である。②子どもの重症例はきわめて少ない。③学校、幼稚園や保育所におけるクラスター(集団)発生はほとんどない。④感染した母親の妊娠・分娩でも母子ともに重症化の報告はなく、母子感染はまれである。ということも分かってきた。
※参照:https://www.asahi.com/articles/ASN5T67CWN5TULBJ008.html
5.新型コロナウイルス感染症に関連する「差別」「偏見」「非難」
- 社会的問題となる可能性があるのは、感染者及び家族、医療従事者、自粛の中も仕事をせざるをええない人々、新型コロナ診療にアクセスできない在日外国人などの人々に対する「差別」「偏見」「非難」である。
- 今回の流行の初期に見られた欧米におけるアジア系の人々への偏見は、世界中で報道されている。
- 日本では、症状があったり、必要なのにもかかわらず、在日外国人ということでPCR検査が受けられないということも起こっている。
- 医療従事者や宅配配送者やその家族が嫌がられたり、タクシーを拒否されたりすることも報道されている。
- 学校や職場等において、新型コロナ感染症が起こる可能性は高い。無症状の感染者が多いので、新型コロナウイルスは誰もが感染し得ることと考える必要がある。感染した人々に対して、「予防意識が足りない」「予防対策をしていない」と言って、避けたり、非難すべきではない。
- 正しい情報を得ることにより、不必要な「差別」「偏見」「非難」は避けるべきである。
※今回で、シェアからの新型コロナウイルス感染症に関する情報提供は、一時休止します。
今まで、本情報を読んでいただき、ありがとうございました。
2020.06.03
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師
■「新型コロナウイルス(COVID-19)影響下におけるシェアの活動」
※新型コロナウイルス(COVID-19)影響下におけるシェアの活動ページへ移動します。