新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について (18)
2020月10月05日 配信
1.世界と日本のCOVID-19感染状況(Global and Japanese Situation of COVID-19)
■世界のCOVID-19新規陽性者と新規死亡者数(WHO 2020年9月28日)
新規陽性者数、新規死亡者数、陽性者致死率3.1%
世界の累計陽性者数3263万人、死亡者数99万人を超え、致死率は3.1%である。(2020年9月28日、WHO)
- 世界的には、週別の新規陽性者数は増加率が横ばいとなっており、最大のピークは脱している。
- アフリカ地域、西太平洋地域では、減少傾向に転じている。ヨーロッパ地域、東地中海地域では、一時減少傾向にあったものの、9月になり再流行しており、4月を上回る数となっている。ヨーロッパ地域では、フランス、スペインで、4-5月以上の新規陽性者数(毎日5000人以上)が確認されており、第二波の感染爆発といえる。
- アメリカ地域は、継続して、感染は拡大している。
- 南西アジア地域では、現在の世界の最も感染者数が多いインドの感染爆発により、新規陽性者数が増加しているが、インド以外の国では、新規陽性者数は減少している。東南アジア、西太平洋地域では、タイ、ベトナム、ラオス、カンボジアに関しては、感染拡大は見られていない。
■日本における週ごとのCOVID-19新規陽性者数と死亡者数 陽性者致死率1.9%(9月29日)
■東京都における週ごとのCOVID-19新規陽性者数 陽性者致死率1.7%(9月29日)
- 7月下旬から8月初旬の新規陽性者数は減少傾向となり、首都圏をはじめ、全体的には減少傾向である。感染第二波も収まっているといえる。
- 9月28日現在では、東京で新規陽性者数は100例以下となり、北海道、茨城、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、京都、広島、沖縄において10例以上の陽性例が報告されているが、いずれも減少傾向である。
- 東北地方、北陸地方、四国地方、九州地方においては、感染が抑えられているといえる。
2.加速するワクチン開発、残る多くの疑問点
- 新型コロナ感染症対策の中でも、最も期待されているのが、ワクチンである。有効かつ安全なワクチン接種により、感染による重症化、死亡が避けられる可能性がある。また、国家間の移動に関しても、黄熱病のように、ワクチン接種を義務付けることにより、コロナ流行以前と同じような状態に戻ることができる。すると、人の国家間の行き来が回復し、経済回復へのきっかけもつかむことができる。
- 欧米、中国などの製薬企業によるワクチン開発はすすんでおり、ワクチンが承認される日も近いと報道されている。
- このワクチン過熱報道の中で、多くの疑問点が上がっているのも事実である。第一に承認の時期である。通常、ワクチン開発は時間がかかるプロセスだ。過去の最速例でも4年を要している。だが、緊急の必要性が生じたことで、開発を急いでおり、製薬各社は迅速に臨床試験を進められるよう、巨額の資金を投じ、臨床試験が始められたワクチンは6種類ある。アメリカ食品医薬品局では、いかなるワクチンも、少なくとも50%の確率で疾病予防の効果がなければならないと述べており、これは普通のインフルエンザワクチンと同等の効果だ。だがすべてのワクチン候補が成功するわけではなく、失敗に終るワクチンに資金やマンパワーが無駄遣いされるリスクもある。
- 課題の一つとしては、「ワクチンが公正に配布されるのか」ということだ。ワクチンができた後、入手の列の先頭に並ぶのは、米国、英国などワクチン開発を支援してきた富裕国だ。公正な配布を保証するグローバルな機関は現在存在しない。
- すべてのワクチンで副作用が生じる可能性があることと、短期間の免疫しか提供できないという可能性がある。
- もっと心配なのは、各国政府が効きもしないワクチンを承認するよう規制当局に圧力をかけることだ。ロシアは8月11日、通常であれば薬剤の効果を証明するために行われる最終フェーズの治験すら実施しないうちに、1種類のワクチンを承認した。無効なワクチンは、投与を受けた人が警戒を緩めてしまうため、さらに大規模な感染拡大のリスクを高めてしまう。
- ワクチンの最終目的は集団免疫の獲得にある。つまり、感染が拡大しにくくするためには十分な数の人口が免疫を獲得しなければならない。人口の70%の人にワクチン接種をするには、多くの資金が必要となり、この目標に到達できない可能性がある。
- 日本においても新型コロナウイルスのワクチンへの期待は高まっているが、順調に開発できたとしても、現時点でワクチンにどれだけの効果があるかは分かっていない。
・コラム:加速するワクチン開発、残る多くの疑問点
・コロナワクチンに対して広がる不安、世界中で「接種受けない」の声
・ワクチン「過度な期待は禁物」...効果は未知数、副作用に懸念も
3.政府の新型コロナ対策 新たな方針で何が変わる?
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新型コロナウイルスの対応をめぐって、政府の対策本部は8月28日、検査体制の見直しなど新たな方針を打ち出した。
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検査に関して、これまでは、保健所などに設置された「受診相談センター」に連絡し、専門外来で検査を受けるルートと、医師会などが設けた「地域外来・検査センター」で検査を受けるルートが中心だった。これに加え、地域の診療所で、インフルとコロナの検査を同時に行えるよう体制を強化する方針である。
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新型コロナウイルスに感染した人の「入院」の運用も見直される。具体的には、無症状や軽症の人は医療機関に入院せず、原則、宿泊施設か自宅での療養を徹底する。これまでも症状がない人は、原則、宿泊施設などで療養することになっていたが、地域によっては入院を求められるケースも多いと見られていた。今回の見直しによって、入院する人の数を抑えることで、限られた医療資源を重症者の治療に重点的に投入し、入院に対応する保健所の負担も減らそうというねらいがある。
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雇用を守るための対策として始められた「雇用調整助成金」の期限を9月末から12月末まで延長する。厚生労働省は今年2月以降、新型コロナウイルスの影響を受けた企業を対象に、特例措置を行っている。1人1日当たり8,330円の助成金の上限額を15,000円に、従業員に支払った休業手当などの助成率は、大企業は75%に、中小企業は100%に引き上げている。
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感染症分類の現在の「2類相当」からグレード・ダウンさせる。感染症は1~5類に分類され、現在、新型コロナは「2類相当」である。重症者の入院はもちろん、「無症状者への入院勧告」などの措置が取られている。陽性者を隔離するためだ。新方針では、重症者用の病床を確保するため、無症状と軽症者への入院勧告を撤廃する方向だ。現在、軽症者らは宿泊施設での隔離が原則義務づけられているが、この措置も、この先は義務ではなくなる。また、全額公費ではなくなり、ホテルなどの宿泊施設に入る場合、自己負担が発生することになりそうだ。
・政府の新型コロナ対策 新たな方針で何が変わる?
・コロナ対策のルール 見直しは慎重さが必要だ
・首相辞意ドサクサにコロナ"2類外し"の新方針 高齢者感染拡大の懸念
2020.10.05
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師
■「新型コロナウイルス(COVID-19)影響下におけるシェアの活動」
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