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(認定)特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会 シェアは、保健医療を中心として国際協力活動を行っている民間団体(NGO)です。

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DVと在日外国人

DVとは

DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律H13制定、H19改正(*1))において、DVとはパートナーからの暴力は犯罪であり人権侵害であると定められた。対象は現在法的婚姻関係にあるパートナーだけではなく離婚後や事実婚にも適用され、暴力の形態も身体、精神、性的なものと広範囲である。残念ながら日本には男女間の社会的、経済的格差が存在し、双方の力関係がDVを生む温床になりうるというのが大切な視点である。



国際結婚とDV

在日外国人のDVは、婚姻などで日本へ定住する外国人女性が、夫の母国において言葉を含め文化的、経済的、社会的な力関係でも弱い立場におかれ、法律的に夫に付随する「在留資格(いわゆるビザ)」において日本人女性よりもさらに弱者となる傾向が見られる。それが外国人女性へのDVの特徴である。華やかな国際化の影には、結婚紹介(アジア、ロシア、東欧、中国の日本人孤児関係者)や、母国(アジア、中南米)からブローカーに騙され日本で働かされていたいわゆる「人身売買(取引)」の元被害者が日本人男性と国内で出会って婚姻したケースなどの、国家間の歴史、経済格差、家族関係など来日の背景に複雑な事情も潜んでいる。



外国人と在留資格(ビザ)

外国人が日本に合法滞在するには、法的婚姻とは別に日本で生活するための「日本人配偶者」という在留資格が必要であり、在留期限は最初1年間を2回更新、安定した夫婦には更に3年間、その後5年目になってやっと「永住者」の在留資格を取得できる。永住者になれば離婚しても日本に住み続けられる。もしそれ以前に離婚し「日本国籍の子の親権者」なら「定住者」に在留資格変更をする。しかし「日本国籍の子」がいない、または親権者でない場合には在留資格を喪失する。そこで、外国人女性は在留資格更新には夫の協力が不可欠、子どもと引き離されるという恐怖から、DVを耐え忍ぶという悲劇も生まれる。



配偶者暴力相談支援センター、女性(婦人)相談所、シェルター

DV法により各自治体でDV相談窓口=配偶者暴力相談支援センターが定められ、国籍や在留資格に関係なく相談をうけ、必要に応じて公立、民間のシェルターで緊急一時保護を行う。頼る家族や友人がなく福祉の情報の入りにくい外国人にとって相談窓口を知ることは、身体に危険が及ぶか否かによらず、被害を防止または最小限にとどめる点で重要である。もしDVの疑いや家族関係について悩む様子に気づいたら、被害者本人に「DVは自分が悪いのではない、暴力は犯罪であり、相談する場所がある」ことを知らせる必要がある。夫やその関係者が同行する場合、彼らが同席していない場面を見つけ、被害者の母国語のDVに関するパンフレットや相談電話番号(内閣府や各自治体作成(*2))を渡すことは支援の糸口になる。「帰宅すると危険がある」「居所がない」場合には、医療機関が本人とともに緊急一時保護の相談をすることもできる。相談窓口には守秘義務があり安全が確保される。その他保護命令や自立への生活保護、母子支援(母国の福祉が乏しい場合特に説明を要する)、離婚や在留許可などの法律相談と必要な段階に応じて継続して支援の手がさしのべられる。



DV法と超過滞在者の対応

DV法に関連し、警察庁H20 年1月11日付通達(*3)や入国管理局への法務省H20年7月10日付通達(*4)では、被害に関する相談や被害者の在留資格には事情を配慮するように記されている。在留資格に問題(超過滞在や在留資格更新時期など)を有する被害者は、まず自治体DV相談窓口の相談員が被害者のDVに関する真の事情を聴取し、DV証明書(内閣府H20年5月9日通知(*5))などを使い段階を経て総合的に問題解決することを勧める(残念ながら警察や入国管理局はDV法の専門家ではない。)DV法の目指すものは、被害者に在留資格を問わない福祉、医療制度(日本国籍の子への支援制度等も含め)を利用し被害からの回復と人生の再出発を支援することである。


*1 内閣府男女共同参画局 http://www.gender.go.jp/e-vaw/law/dvhou.pdf
*2 自治体の例:神奈川県 http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/jinkendanjo/dvsien/、内閣府 http://www.gender.go.jp/e-vaw/book/02.html
*3,4,5 内閣府 http://www.gender.go.jp/e-vaw/kanrentsuchi/index.html


文責:特定非営利活動法人 女性の家サーラー理事 新倉久乃

機関誌「Bon Partage」No.146(2010年1月号)掲載

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