新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について(7)
1.世界の感染状況
▶アジアの国々
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世界的には、新規陽性者数と死亡者数は、減少傾向かと思われたが、また、増加に向かう兆候あり。アメリカ合衆国は全体的に減少傾向に向かっているが、アメリカ大陸のカナダ、ブラジルが、毎日1000例を超える新規陽性者が報告されるようになった。また、メキシコ、エクアドル、チリといった中南米での増加があり、アメリカ大陸全体としては増加している。
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アジア全体では、著名な増加はみられない。東南アジアで、ラオス、カンボジア、東ティモールでは増加していない。最初に中国、韓国に続き流行が始まったベトナムは、ほぼ封じ込めを成功しているようである。
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小国であるシンガポールでの増加が、目立つ。
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東南アジアの中心に位置するタイでは、一時増加傾向であったが、減少傾向と転じている。
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人口の多いインドネシアの増加が目立ち、東ティモールの影響が心配される。
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アフリカ地域では、現状では、目立った増加がみられない。コンゴ民主共和国の増加が目立つ。
2.日本、東京都国内感染状況
▶日本全体:2020年4月16日現在
▶東京都:2020年4月16日現在
(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)
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緊急事態宣言後、新規陽性者数は、毎日のように増加してはいないが、依然として100例以上の増加がみられる。
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政府・与党は4月16日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国民1人あたり10万円を給付することを決めた。所得制限は設けない。
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政府は4月16日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、緊急事態宣言の対象を全国に広げる方針を固めた。7日に東京など7都府県に宣言を出したが、地方への人の移動などで感染が全国に広がる懸念があるためだ。
3.新型コロナウイルス感染症流行は予想されていた???
(新興感染症:Emerging Disease)
- 新型コロナウイルス感染症やエボラ出血熱などは、新興感染症と呼ばれる。WHOの定義では、「新しく認識された、または新しく流行した、もしくは以前発生したが新たに地域的、媒介動物、対象の人の範囲での増加がみられる事象(仮訳)」Newly recognized, newly evolved or occurred previously but have shown an increase in incidence or expansion of geographical, vector or host range であり、1990年代から、注目されていたが、特に近年、増加しており、世界的課題となっている。鳥インフルエンザ、SARS(重症急性呼吸器感染症)、MERS(中東呼吸器症候群)も新興感染症である
- 2002―3年に中国南部、ベトナムを中心に発生したSARSコロナウイルスによる重症急性呼吸器症候群(Severe acute respiratory syndrome; SARS)により、37ヶ国で8096人が感染し、774人が死亡した(致命率9.6%)(WHO)。また、2005年の鳥インフルエンザでは、ニワトリの死亡が大きな問題ではあったが、ヒトへの感染が広がり、世界的な流行を起こした。ヒトの死亡率は、60%程度である。
(WHO緊急事態宣言)
- これらの新興感染症の流行に対応するために、WHOは2005年に世界保健規則を改訂し、緊急事態宣言の4つのクライテリアを設けた。
①そのイベントの公衆衛生的インパクトが高そうか?
②通常でないものか想定を超えるものか?
③国際的に広まる可能性があるか?
④旅行や貿易制限が必要になるか?
4つ中2つのクライテリアを「満たす場合には各国はWHOに報告する必要があり、これを受けて、WHOは、緊急事態宣言をするか決定する。
- 直近の緊急事態宣言は2019年7月のコンゴ民主共和国のエボラウイルス病(約3400人の感染者と約2200人の死亡者)に対してであった
- 2005年以後、世界では、新たな感染症への警戒が高めていた。この時に発生したのが、2009年の豚インフルエンザ(新型インフルエンザ)であった。メキシコから発生し、その流行が世界に広まったものであった。WHOは、この新型インフルエンザに対して、早期に緊急事態宣言を行った。しかしながら、この新型インフルエンザは、感染性はとても高いが、死亡率は、通常のインフルエンザと同じ程度であった。緊急事態宣言により、旅行や貿易制限のために、損害を被った業界からの批判が強かったといわれる。その後、WHOとしても、この緊急事態宣言へ消極的になったと言われる。
(グローバルヘルスセキュリティ:Global Health Security Agenda)
- GHSAは、2011年のアメリカ合衆国のオバマ大統領が国連演説で触れたもので、2013年の西アフリカでのエボラ出血熱の流行により、その重要性が世界に認められたものである。エボラ出血熱などの生物学的脅威を防止、検出、および迅速に対応するための世界的な能力を確立するための即時行動の緊急性を強調している。グローバルヘルスセキュリティアジェンダ(GHSA)は2014年に開始され、感染症の脅威から世界を安全かつ確実に前進させ、世界中の国々を結集して新しい具体的な取り組みを行い、グローバルヘルスセキュリティを国家指導者レベルの優先事項とされた。 G7は2014年6月にGHSAを承認した。
(今回の新型コロナ感染症の想定外だったこと)
- 世界的には、新コロナウイルス感染症のような新興感染症流行に対しての戦略、対策、具体的な行動計画は作られていたが、新コロナウイルスは、これらの対策を上回る能力を持っていたといえる。
- 無症状の感染者が予想以上に多かったことが挙げられる。通常、感染症は症状が出てから、ヒトに感染するものであり、症状のある人や感染者の体液等に触れることにより、感染する。
- これまでは、途上国での感染の流行拡大を抑える視点での対策であり、医療体制が不十分である国への支援、先進国への拡大を防ぐというのが主な戦略だったが、今回のように先に、先進国での感染爆発が拡がることは予想できなかった。
2020.04.17
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師