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(認定)特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会 シェアは、保健医療を中心として国際協力活動を行っている民間団体(NGO)です。

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在日外国人の健康(4)

在日外国人の母子保健制度適用ガイドライン
すべての女性はリプロダクティブ・ヘルス/ライツの理念のもと、安全に妊娠・出産することができ、健康に子どもを育てることができるための適切なヘルスケア・サービスを受ける権利を有している。しかし、はたしてその「人権」は、在日外国人母子にも保障されているであろうか。在日外国人の人権保障、法的保護は甚だ遅れている。ましてやオーバーステイ状態にある人々は、人として無権利状態に置かれていると言っても過言ではない。特に、母子保健上の問題は妊娠、出産、育児のそれぞれの過程で深刻であり、無視できない状況となっている。オーバーステイの母親から生まれた子どもたちの成育権は、「入国管理法違反」であるという理由から、法の外に放置されている。母親は発覚することを恐れ、公的な場所にはほとんど訪れない。一方、現場では保健医療担当者の無知や偏見による「独断」がまかり通り、まるで「在留資格の有無」によってすべての「母子保健」が決まるようである。母親は、妊婦健診を受けられず、ハイリスク状態で分娩に臨むことになる。出生証明書はどこにも提出されず、子どもは無国籍状態になり、予防接種も受けられず、病気や怪我をしても病院に行くこともできずにいる。子どもが成長するにつれ、その人権侵害は深刻化し、その生活・教育環境が蝕まれていく、そして次世代連鎖をも起こしている。この悲惨な母子の状態を我々はどのように改善していくべきなのか、何ができるのか、最低限保健医療従事者が知っておくべき母子保健ガイドラインを作成した。

母子健康手帳について
  • 母子健康手帳取得にあたって、まず必要なのは妊婦の氏名、現住所である。住所が実在するかどうかは、郵便物等で確認することができる。外国人登録証がないことを理由に、一律に母子健康手帳の交付を拒むことは適切ではない。
  • 母子健康手帳を給付するにあたり、妊産婦の妊娠週数が進んでおり、かつ医療機関にかかっていない場合は、自己申告による妊娠届であっても受理する。母子保健サービスを一刻も早く受けられるように、配慮することが最優先である。
  • 母子健康手帳の妊婦健診無料券あるいは補助券、乳児健診券、予防接種券などは例え別冊であろうと、本冊と一体となっているものである。母子保健法は、国籍や在留資格に関係なく、現在日本で妊娠しているすべての女性に適用されるものである。対象妊産婦の在留資格状態によって、母子健康手帳の一部を除去、破棄してはならない。

助産施設
  • 保健医療関係者、医療ソーシャルワーカー等は、自治体との連携を密にし、当該外国人妊産婦が安心して助産施設での出産ができるよう配慮する。
  • 公立の助産施設でありながら、出産予定日が迫っていると受け入れを拒む事象が起きているが、本来は道義上、緊急事態にある妊産婦であれば、率先して引き受けるべきである。福祉事務所の照会がない等の制度上の問題はまず、人道上の対応を行った後に、適切な措置を講じる。

入院助産
  • 入院助産申請は、妊産婦の国籍や在留資格に関わらず入院助産申請が可能である。
  • 収入証明のための課税証明書、あるいは非課税証明書が取れない場合は、本人の収入申告書で代用するなど柔軟な対応をする必要がある。

養育医療・育成医療
  • 該当する医療機関の医療ソーシャルワーカー、および保健所の担当者は、該当する外国籍の子どもにとどこおりなく養育医療・育成医療制度が適用されるよう配慮する。

出生届
  • 外国人の父母が、日本で出生届をおこなう際には、母子健康手帳などの記載をもとに、出生届の記載にミスがないよう配慮する。
  • 出生届は、その後の子どもの在留資格、国籍取得等、人生に多大な影響を与えることを自覚し慎重に対応する。
  • いかなる場合にも、出産に立ち会った医師・助産師が子どもの出生証明発行を拒否することはゆるされない。

予防接種
  • 在留資格がない子どもであっても、予防接種を受けることができる。居住地管轄内で、サービスが受けられるよう、保健所等では関係者に対し周知徹底をはかる。


文責:長崎県立大学大学院人間健康科学研究科 教授 李節子
機関誌「Bon Partage」No.143(2009年3月)掲載
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