新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について(9)
1.世界の感染状況
*統計データは、WHO Situation Reportを使用。(グラフを作成)
*域は、WHOの分類による。西太平洋地域には、日本、中国、韓国、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ラオス、カンボジアなど、東南アジア地域には、タイ、マレーシア、インドネシア、ミャンマーなど、東地中海地域には、イラン、サウジアラビア、パキスタン、地中海沿岸のアフリカの国々などが含まれる。
▶アジアの国々
- 世界的な新規陽性者数は、全体的に減少傾向が継続するも、中南米及び東地中海地域の増加傾向がある。
- アジアの国々(西太平洋地域、東南アジア地域)の新規陽性者の増加率減少している。(絶対数として、ヨーロッパやアメリカの1/10程度であり、シンガポール、インド以外では感染爆発は見られていない。)
- ラオス、カンボジアは10日間、ベトナムでは6日間、新規陽性者は出ていない。
- 東南アジアでは、シンガポールが多く、新規陽性者は軽度の減少傾向がみられる。
- タイは、漸減している。
- インドネシアは、新規陽性者の増加率は同程度である。
2.日本、東京都国内感染状況
▶日本全体:2020年4月23日現在
▶東京都:2020年4月23日現在
(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)
- 全国規模では、毎日の新規陽性者数の増加はないものの、東京、大阪を中心とした都会において、継続して増加中。また、死亡者も増加している。
- 東京都の新規陽性者数は、継続して7日間100例を数える。ただし、先週の増加率より、減少しており、緊急事態宣言による外出自粛の効果は出ていると考えられる。
- 東京都の区別の新規陽性者数は、世田谷区(314)、港区(224)、品川区(141)、新宿区(114)、目黒(102)、大田区(100)が100例を超える。(4/22)
- 都営地下鉄4路線のラッシュアワー時(7時半から10時半)の自動改札出場数の率は、4/13-17は、1/20-24 に比較して、約65%の減少。
3.水際対策について
- 新型コロナウイルスのような新興感染症の対策には、予防、診断、隔離、治療があるが、予防の中の一つとして、水際対策がある。国外からの入国者に対してサーモグラフなどによる発熱の確認、インタビュー及び検査等を行い、感染者を確認し、国内への侵入を阻止しようというものである。
- 新型コロナ感染症の中国での流行が明らかになった時点では、日本での水際対策は、厳重なものではなく、ある程度入ってくることは許容し、感染者の中の重症者を治療し、死亡率を下げるというものであった。新型コロナウイルス肺炎は、潜伏期間が長く、多くが軽症で、無症状の感染者もいることから、水際での封じ込めは困難だという認識があったと思われる。韓国、ヨーロッパ、アメリカも、渡航制限をかけることによる経済的損失をさけるために同様な水際対策を取ったと思われる。
- 2009年の新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の時にも、当初は厳重な水際対策(関西の修学旅行からの帰国者のホテル隔離)を行ったものの、症状が軽いものが多かったり、発熱のない例も多く、不十分であるとの指摘もあった。結果的に新型インフルエンザは、大きな問題となることもなく、水際対策は必要ないとの認識となった。この時の新型インフルエンザの死亡率は、0.2%であり、早期に広範囲な学校閉鎖を行うなどして、初期の流行を一旦封じ込めたことが奏功したと言われている。
- ヨーロッパおよびアメリカでの感染爆発により、世界中の国々は、迅速かつ厳重な水際対策への取り組みをすることとなった。特に途上国は、自国の医療体制に不安が多いところが多く、この動きに拍車をかけたと考えられる。
- 中国、韓国、台湾では、入国者への全員の隔離もしくは、PCR検査による確認を行い、14日間の隔離を行うことにより、感染者数の減少に成功し、ベトナムも当初から、厳重な入国制限により、感染の封じ込めに成功している。
- 現在日本で取られている水際対策は、中国、韓国、ヨーロッパ諸国、米国、エジプト、インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、イスラエル、カタール、コンゴ民主共和国、バーレーンからの渡航者に対して、検疫法での隔離・停留が必要な場合のほか、検疫所長が指定する場所(自宅等)において14日間の待機をすることとなっている。現在では、これらの渡航者に対して全員にPCR検査行い、陽性者に対しては近隣のホテルなどでの14日間の隔離・観察を行っている。
- 慶応大学病院が実施した、入院や手術前の患者へのPCR検査の結果、約6%の人が陽性だったことが判明し、市中の感染を反映していると報告された。東京の住民の6%というのは妥当な数ともいえる。今後行われると考えられる地域住民の抗体検査により、実際の日本の感染率が明らかになると思われる。
- 各国の水際対策により、大幅に航空機の運航は少なくなり、入国者が激減し、入国者へのチェック、検査も可能となっている。
- 日本の多くの地域においては、すでに新型コロナ感染は蔓延していて、無症状者、軽症者からの感染が中心となりつつあると考えられるので、すべての人がソーシャルディスタンスに取り組むことにより、感染の拡大の速度を軽減することが可能となる。
- 外からの新たな新型コロナ感染者を入れないという水際対策と国内の感染者から他への人に感染させないというソーシャルディスタンス対策が現在の予防対策の大きな戦略となっている。
参照:「国内感染は始まっている。死亡者数の最小化を最大の目標に」~新型ウイルス対策で元WHO幹部が提言 2020/2/13
https://news.yahoo.co.jp/byline/egawashoko/20200213-00162972/
2020.04.24
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師