新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について (19)
2020月12月01日 配信
1.世界と日本のCOVID-19感染状況(Global and Japanese Situation of COVID-19)
■世界のCOVID-19新規陽性者と新規死亡者数(WHO 2020年11月29日)
新規陽性者数、新規死亡者数、陽性者致死率2.4%
世界の毎日の新規陽性者数は約400万人、累計陽性者数は5370万人と死亡者数130万人を超え、致死率は2.4%である。(2020年11月22日、WHO)
- 世界的には、週別の新規陽性者数はヨーロッパ地域とアメリカ地域の増加が80%と占めている。アメリカ地域では増加率も高くさらに拡大しているが、ヨーロッパ地域では公衆衛生的な対策も強化され、増加率の減少がみられる。
- 東地中海地域、アフリカ地域、西太平洋地域においても、増加傾向である。
- 流行国であるインドを含む南西アジア地域は減少傾向に転じている。
- 11月9日から15日の1週間の新規陽性者数は、アメリカ地域(米国100万、ブラジル18万)、ヨーロッパ地域(イタリア24万、フランス20万)、南西アジア地域(インド30万)、地中海地域(イラン7.6万、ヨルダン3.6万、モロッコ3.6万)、アフリカ地域(南アフリカ1.3万)、西太平洋地域(フィリピン1.3)であり、米国の大流行が目立つ。
- WHOは、新型コロナ対策のために臨時のWHO総会を11月9日から11月14日に開催し、今後の取り組みが検討された。
■日本の週毎のCOVID-19新規陽性者数と死亡者数 陽性者致死率1.6%(12月1日)
■ 東京都の週毎のCOVID-19新規陽性者数と死亡者数 陽性者致死率1.4%(12月1日)
■空港検疫による陽性者数
- 新規陽性者は10月下旬より増加している。首都圏も増加しているが、特に北海道や大阪、愛知を中心に増加がみられ、全国的な感染増加につながっており、流行第三波の状況となっている。
- ・感染拡大の原因となるクラスターについては、地方都市の歓楽街に加え、会食や職場及び外国人コミュニティー、医療機関や福祉施設など多様化しており、地域への広がりがみられる。GoToTravelやGoToEatの影響や秋の行楽シーズンの観光地での流行、人々の国内での移動の増加が原因と考えられる。
- 空港検疫による外国人の陽性者の数も増えており、在日外国人クラスターの発生が入国者からの感染である可能性も否定できない。
2.有効な二つの新型コロナワクチン
米ファイザー社
- 米ファイザーは11月20日、ドイツのビオンテック(バイオ企業の名前)と共同で開発している新型コロナウイルスワクチン候補の緊急使用許可(EUA)を米食品医薬品局(FDA)に申請した。
- 両社は今週初めに臨床試験データの最終分析でワクチン接種が新型コロナ感染予防に95%の確率で有効であることが示されたと発表した。年齢層や人種を問わず有効で、約4万4000人が参加した治験でこれまでのところ重大な安全性の問題も生じていないという。
- 米ファイザーとドイツのビオンテックは、米国だけでなくオーストラリア、カナダ、ヨーロッパ、日本、英国でも緊急承認申請を行っており、2020年12月末までに「高リスク集団」でのワクチン使用を開始するための道を開く可能性があると述べている。
- 課題としては、本ワクチンはmRNA(messenger RNA)を使ったもので、マイナス70度以下で保管する必要があることだ。ジョンズ・ホプキンス大研究員アメシュ・アダルジャ氏は「コールドチェーン(低温流通システム)は、新型コロナウイルスワクチンの予防接種を行う上で最も大きな課題の1つとなるだろう」と指摘。「大都市の病院でさえ、そのような超低温での保管施設は持っていない」と話す。
米モデルナ社
- 米バイオ企業のモデルナは11月16日、新型コロナウイルス感染症ワクチン「mRNA-1273」の大勢の人を対象とした第III相試験について、データ安全性モニタリング委員会が実施した最初の中間解析で、94.5%の有効性を示したと発表した。
- ・約3万人を2群に分け、ワクチンまたは偽薬を2回投与した。これまでに95人が新型コロナウイルスに感染したが、そのうちの90名は偽薬投与群で、ワクチンを投与して感染したのは5名だけだった。この結果から、ワクチン無しでは90名が感染するところ、ワクチンにより85名が予防できたと考え94.5%の効果であったと結論づけている。また95名の感染者のうち重症は11名だったが、全員が偽薬投与群であったことから、ワクチンは重症化も防ぐことが期待されるとしている。
- また、mRNAは非常に不安定な物質であるため、mRNAワクチンの弱点として運搬や保存にマイナス80度以下の超低温冷蔵が必要なことが挙げられる。しかしモデルナ社のmRNAワクチンは、特殊な修飾がされており、冷蔵で1週間、通常の冷凍(マイナス20度)で半年間、有効であると発表している。
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https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-11-21/QK4PIPDWRGG201
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https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-11-21/QK4PIPDWRGG201(English)
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https://jp.techcrunch.com/2020/11/23/2020-11-20-pfizer-and-biontech-to-submit-request-for-emergency-use-approval-of-their-covid-19-vaccine-today
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https://answers.ten-navi.com/pharmanews/19723/
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https://investors.modernatx.com/news-releases/news-release-details/modernas-covid-19-vaccine-candidate-meets-its-primary-efficacy
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https://www.covid19-yamanaka.com/cont3/21.html
3.無症状者の新型コロナ感染
- 新型コロナ感染症では、呼吸だけで感染させてしまう無症状者のスーパースプレッダー存在が課題となっている。
- 土曜日の晩には「元気」だったので大勢の人と接したが、月曜日になって咳、熱、疲労感に襲われ、感染していたことに気がついた。米疾病対策センター(CDC)の推計によれば、そのような症状が出る前の人がウイルスをうつすケースは、感染例のおよそ半数を占める。
- さらに実態をつかみにくいのは、ウイルスに感染していても全く症状が出ない人のケースだ。CDCによれば、全米の感染例のうち、そうした無症状の感染者は4割に上るという。
- 発症前(pre-symptomatic)に他人に感染させる人や、無症状(asymptomatic)の人がなぜこんなにも多いのか。知らない間に感染が広がるのは、インフルエンザやかぜなどのウイルスも同じだ。しかし、新型コロナウイルス感染症では極端に把握が難しく、したがってコントロールも難しい。
- 問題の一つは、病状の現れ方がよくわかっていない点にある。高齢者のほか、肥満、喘息(ぜんそく)、糖尿病などの既往症を抱えている人の方が、重症になるケースが多いことは明らかになっている。しかし、感染しても重症化を免(まぬが)れる人についてはよくわかっていない。
- 医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」に米海兵隊の18歳から31歳の新兵1848人を対象とした、新型コロナの無症状感染に関する過去最大規模の研究が掲載されている。
- この2000人近くの若者を対象にした新型コロナウイルス検査の結果、コロナ感染症の症状観察でほぼ全ての感染が見落とされていたとの研究結果が発表された。感染拡大を抑制するには、症状がある人だけでなく無症状の人も対象にした幅広い定期検査の実施が必要であることが示唆(しさ)された
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https://news.yahoo.co.jp/articles/c342abf8d9387caf7e77b7eeaa13984c524c371aSARS-CoV-2 Transmission among Marine Recruits during Quarantine
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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2029717?query=TOC
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https://jp.wsj.com/articles/SB11922503875527593554104587093463746193648
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表理事・医師
■「新型コロナウイルス(COVID-19)影響下におけるシェアの活動」
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