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vol.25.カンボジア

旅する世界の保健室

「今後、自分たちで修正できる」レシピ作り~カンボジアでの食・栄養支援~

1.食・栄養の応援団
私のバックグラウンドは栄養学です。赤ちゃんから高齢者までの様々な年代、糖尿病やHIV感染症などの病気の方の「食」についての悩みや困りごとの解決のために、一緒に考えたり、応援する管理栄養士です。今回は、シェアカンボジアの「子どもの栄養改善1000日アプローチプロジェクト」の短期栄養専門家として、2019年に活動した時のエピソードをご紹介します。
 
2.自分たちでレシピを修正できるように
 当初の私のミッションは、活動対象地域(カンボジア北部のプレアビヒア州)の地元食材や食文化を取り入れた「取り分け離乳食(Just One Time Cooking)」のレシピ作成のために研修を行うことでした。しかし、事前の打ち合わせの段階で、ローカルスタッフから「今後、自分たちでレシピを修正できるような研修にしたい」という要望があり、前のプロジェクトで経験があるローカルスタッフが中心となって、研修と活動を進めていくことになりました。実際に彼ら主導で進めていくと、山あり谷あり、毎日スリル満点!しかし、彼らが自分たちの思いを初対面の私に伝えてくれたこと、失敗しながらもチャレンジし続けることは、とても嬉しいことでした。
 
 
 
 
3.村での家庭訪問
 レシピを作成するにあたり、村の2歳未満の子どもと妊婦さんの生活状況を把握する必要があり、8組の家庭を訪問しました(2歳未満児の家族4組、2歳未満児のいる妊婦2組、妊婦2組)。各家庭での水と食料の入手方法、トイレの状況、台所、食事内容、妊婦健診、生活状況等について聞き取り、調理や食事の様子を見学して、レシピに反映させていきました。




 
 
 
4.いのちを支える緑の葉
村の各家庭の料理は、肉や魚は少なく、庭や近所で採れる葉や実をたくさん使っています。例えば、アマランサスの葉、アイビーの葉、ランブータンの葉、タマリンドの葉、バジル、モーニンググローリー(空心菜)、バナナの花、かぼちゃの実・葉・種、セイヨウスグリ(果実)などです。太陽の光をたくさん浴びて育った生命力あふれる濃い緑の葉は、β - カロテン(ビタミンA)、ビタミンC、葉酸、鉄、カルシウムが豊富です。この緑の葉が、カンボジア人の強い体をつくり、いのちを支えていると感じました。似たようなことを、アフリカのケニアで感じたことがあります。「スクマウィキ」と呼ばれている葉野菜のケールは、干ばつに強くどこででも育つため、村の人たちはほぼ毎日食べています。「ウィキ」は英語のweek、「スクマ」はスワヒリ語の「生き延びる」、つまり「1週間がんばって生き延びる」という意味だそうです。確かにケールは「葉野菜の女王」と呼ばれ、ビタミン・ミネラルが豊富です。厳しい環境で暮らすケニア人にとって「スクマウィキ」は、その名の通りいのちを支える野菜であり、それはカンボジアの状況と通じるものがあると感じました。
 
 
5.「料理教室」は難易度が高い手法

研修の後半では、若いローカルスタッフたちが、村のお母さんたちを対象に新レシピの「取り分け離乳食」の料理教室を実践しました。最初は慣れていないために時間配分や進め方で戸惑う場面もありましたが、回数を重ねるごとに上手になりました。料理教室は楽しく、美味しく、効果的な方法であることは間違いありません。しかし、栄養教育の手法の中で、最も難易度が高く、企画、運営、マネジメント力、統合する能力が求められるものだと思います。栄養士でも難しいと感じる料理教室をこなしているシェアのローカルスタッフたちは、立派だと思います。 レシピは約9ヶ月かけて完成し、「今後、自分たちで修正できる」状態に到達できたかな?と思います。今後も、カンボジアのみなさんの思いを大切にする活動を応援しています。

 
東北生活文化大学短期大学部/管理栄養士 木下ゆり
機関誌「Bon Partage」No.168(2020年10月)掲載

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