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vol.4ガーナ

旅する世界の保健室

私の見た典型的なアフリカ農村の実際 ガーナより

シャギィ、シャギィ。
そう私を呼ぶエマニュエルは、いつも愉快そうに踊ったりふざけたりしていた。彼は私のカウンターパート(プロジェクト共同実施者)であるアプラクの4人の子どもの末っ子で、幼稚園に通う5歳の腕白坊主。彼の屈託のない笑顔を今でも懐かしく思う。

私は、西アフリカ ガーナに今年の5月まで青年海外協力隊のエイズ対策隊員として地方の郡役所に派遣されていた。任地は、ガーナ南部のアシャンテ州にあるアチュイマ・ンワビアジャ郡。人口がおよそ15万人。産業としては農業が半数強を占め、他の生産業や役所関係などの仕事を圧倒しており、いわゆる典型的な農村だ。(ちなみにガーナでは、仕事とは関係なく、ほとんどの人は何かしら農地を持っており、週末にはその畑の世話をする人も多い。)東には西アフリカ最大の市場とも言われるクマシというガーナ第二の都市が隣接する。

ガーナ全体の感染率は1.9%(2007年)。実際、隊員がイベントや活動などを通して、移動式検査(病院ではない場所で行う検査)を開催すると、約100人の任意参加者に対し、2、3人のHIV陽性者(以下陽性者)が出てくるというような結果がほとんどだったので、実感としては感染率よりも少し高い感じがした。私達の郡におけるHIV感染率も約3.0%であり、郡の感染率は国の平均よりも高かったが、私たちの郡には郡病院が一つしかなく、そこすら治療に必要な設備も薬もなかった。治療するには隣のクマシまで行く必要があった。クマシには州で一番大きな病院を含め、治療できる病院がいくつかあった。陽性者の支援団体も多く存在し、差別・偏見を恐れてクマシの陽性者団体に所属する人もいた。隣が大きい都市であったため、我が郡の陽性者へのケア・サポート体制は発展途上で、それに伴い予防を含めた全体的な対策も遅れ、関係者のエイズに対する問題意識を下げているように見えた。そんな私達の郡病院に、2008年の9月に治療設備を投入するという話を州の関係者に聞いたが、私の帰国までにそれを見ることはなかった。期待したが、やはりここはガーナだった。

ガーナやアフリカ諸国では、人々の興味・関心はモノやお金にいきがちだ。それが貰えないならば、自分たちの将来を脅かす可能性のある脅威や問題に対しても大半の人が自発的には動かない。しかし、非常に希少であるが、お金やモノとは関係なく動ける人もいた。そういう人々がきちんと評価され、皆のいいモデルとなるように社会が変わっていく必要があると思った。

エイズワークショップの様子。左がアプラク。私のカウンターパートのアプラクはお金やモノに囚われず熱心に仕事をし、理解力もある貴重な人だった。彼とは一緒に郡内のあちこちでワークショップの開催をしてきた。その中でも、地元の養鶏会社で昼休みに開催したエイズ予防ワークショップが特に印象に残っている。彼と共に地元の民間会社数社にワークショップ開催を打診して回ったが、快諾してくれたのはこの一社のみ。学校でもエイズ教育が行われるようになったが、全員が学校に通える訳ではない。金銭的な理由で仕方なく中退して働き出した人も沢山いる。その層に対してもエイズに関する情報を得る機会が必要である。クマシで行った独自調査(回答者数151人)によると、陽性者の学歴は低く、特に女性の最終学歴は121人中53人が小卒で中卒を含めると8割近かった。その時の参加者の識字率も低く(自分の名前を書けない人が結構いた)、スライドや動画を使って現地語でエイズ情報を伝えられたのはよかったと思う。社長も大変感激してくれ、参加者も勉強になったようだった。
写真:エイズワークショップの様子。左がアプラク。

エマニュエルも彼の父であるアプラクを見習い、周りの模範となる素敵な大人に育って欲しいものだ。

エイズボランティアチームHAATAS 稲葉滋子
機関誌「Bon Partage」No.145(2009年10月)掲載
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