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(認定)特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会 シェアは、保健医療を中心として国際協力活動を行っている民間団体(NGO)です。

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vol.16.ケニア

旅する世界の保健室

ケニアでのエイズ対策活動

1.青年海外協力隊への参加のきっかけ
父親は昔から困っている人を見つけると助けられずにはいられない性格で、実家のある長野で見知らぬイラン人を突然家に連れてきて、「寝泊りするところが無いから可愛そうじゃないか」との理由で3ヶ月間も家に滞在させてしまうような人です。その時に初めて日本人以外の人と話し、日本と違う習慣・文化等に触れ小学生の自分には衝撃的な出来事でした。その後、兄が高校卒業と同時にカナダへ留学をしたのがきっかけで漠然と外国人、外国に興味や憧れを抱いていました。そんな父親の背中を見て育ち、外国への憧れを抱き、私もいつか発展途上国で困っている人たちの為に何か出来る事がないだろうかと思いが芽生え、青年海外協力隊の扉を叩くことになりました。

2.ケニア共和国へ
青年海外協力隊エイズ対策の職種で、ケニアへ赴任をすることになりました。配属先は、ケニアエイズNGO協会(Kenya Aids NGOs Consortium)というエイズと結核に特化した現地のNGOでした。ケニア人以外の外国人も所属する多国籍な配属先で、当時エイズ対策で派遣される隊員の多くは地域の医療センターへ配属されるのでエイズ対策隊員の中では稀な配属先でした。任地である「ムロロンゴ」という町に住み、その町を中心とした周りの学校や町で主にエイズや感染症に重きを置き活動を行いました。「ムロロンゴ」は、モンバサという港町から首都のナイロビへ物資を運ぶトラックドライバーの休憩地となっており、セックスワークを生業としている女性が多く暮らす町でもありました。

3.主な活動の三つ
●ピア・エデュケーション(若者・学生への教育)
学校で生徒達にエイズや性感染症の情報を共有し、正しい知識を身につけてもらう為の活動です。アフリカの学校の先生は尊敬され威厳のある存在で、先生と生徒が意見を取り交わすということは、実際はあまり行われていません。ピア・エデュケーションは学生と同世代の若者が司会進行になり、活発な意見の取り交わしを行います。誤った知識や学生の実体験を出してもらい、司会進行役が正しい知識へと導いていきます。
●コミュニティアウトリーチ(町の住民へ向けた活動)
ユースメンバー(町の若者ボランティア)が主体となって歌や踊りで住民の注目を集め、エイズに関連した劇を行い、劇が終わった後、司会進行役が参集者たちと意見や感想を取り交わし、エイズを含めた性感染症の正しい知識を共有する啓発活動です。同僚として働いていたケニア人のユースメンバーは、アフリカ特有のダンスや劇が得意でした。彼らの特技に着目し彼らの特性を活かした活動を行いました。
●モバイルVCT(エイズ検査・カウンセリング)
VCTセンターへエイズ検査に来る人を待っているだけではなく、積極的に町へ出て行きVCTの存在を住民に広報し、移動式の簡易テントを張り、その中でエイズ検査が出来る活動を考え実施しました。受検者数を上げる目的はもちろんですが、HIV陽性者を早く治療に繋げることを目的としています。

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写真:活動先の学校にて

4.二年間の活動を通して
実際に赴任をすると思っていたよりも、学生や住民のエイズに対する知識は高く、エイズは身近な問題だという認識は日本よりも高いと感じました。しかし、「性交渉をしたことがない女性と性交渉をするとエイズが治る」といったような誤った知識等も蔓延していることも事実あり、危機感も同時に感じました。私は正しい知識を現地の人たちに身につけて貰いたいと活動に奮励しました。それと同時に私は医者でもなく、医療従事者でもなく、目の前でエイズやその他の病気で苦しんでいる人や、亡くなる人を目の当たりにし何も出来ない自身に無力さや悔しい思いをする事も多々ありました。エイズには宗教、国の習慣など色々な要素や問題が絡み合っており、活動をするにあたってその問題が弊害となることが多く、自身が思っているような活動を自由に行えないこともあり、異国で活動を行う難しさも痛感しました。
四六時中ケニア人と共にし、ケニア人が嫌いになり、ケニア人が好きになり、ケニア人から困らせられ、ケニア人に助けてもらい、人生で一番人間味のある時間でした。2年間という短期間でしたがケニアについて活動を通し色々知れたことは私の財産ですし、ケニアは間違い無く私の第二の故郷になりました。


ェア広報 比田井 純也 
機関誌「Bon Partage」No.159(2017年4月)掲載

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