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(認定)特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会 シェアは、保健医療を中心として国際協力活動を行っている民間団体(NGO)です。

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vol.24.日本

旅する世界の保健室

在日外国人の両親学級の試み~中国語とタガログ語~

1.在日外国人の両親学級開催までの道のり
5年間シェアの在日外国人支援事業部で勤務させて頂いた後、助産師として日本に住んでいる外国人母子のために、何か出来ることはないかと模索していました。その折、助産師の先輩から東京都助産師会※として、在日外国人を対象とした活動を始めてみるのはどうかという提案を頂き、助成金獲得を目指しました。そうした所、WAM(社会福祉振興助成事業)から令和2年度の助成金を頂くことが叶い、在日外国人の両親学級の開催にたどり着くことが出来ました。
 
2.中国語とタガログ語における両親学級
都道府県別の在日外国人数は、東京が令和1年12月で59万人と全国1位(約20%)です。その中で、国籍別の在日外国人数が多く、コミュニティにアクセスしやすいと思われる中国語とタガログ語に令和2年度は焦点を当てました。開催は2つの言語を交互に月に1度のペースで行っています。外国人両親学級の内容の特徴は、出生後の大使館と出入国在留管理庁への手続きや、日本の無料での母子保健サービスに関しても詳しく解説することです。また、全ての資料や動画には翻訳を付け、両親学級当日は通訳が参加しています。
 
3.つまずきからの始まり
当初は、会場での対面式の両親学級の開催を予定していましたが、緊急事態宣言が発令され、急遽オンラインでの開催に変更となりました。さらに、両親学級の人気のコーナーは、ママ・パパが人形を使って実際に行う沐浴や、オムツ交換など体験型のものです。しかし、オンラインでは体験参加型の形式が取れないので、内容を変更しないといけませんでした。
 
4.実践して感じたこと
 最初は不安しかなかったオンラインの両親学級でしたが、回を重ねるごとに操作や対応に慣れてきました。第1回目は、妊娠出産産後における母子保健サービスの話などを、スライドを使用し授業形式のものでしたが、それだと画面上での意思疎通が一方通行で、悲しく感じました。そこで、途中からオンラインでも参加型を重視するようにし、オムツ替え・抱っこの仕方・授乳方法などの実技を積極的に取り入れ、画面上で実際に助産師がすることを、参加しているママ・パパに人形やクッションなどで行ってもらうようにしました。そうすると、オンラインの両親学級に動きが出て、私たちスタッフと参加者に一体感が生まれ、画面上でたくさんの笑顔が見られるようになりました。
 
5.参加者の声から思いをはせて
言葉の障壁がなくなることにより、在日外国人のママ・パパ達から非常に多くの質問が出ます。フィリピンのママからは「フィリピンでは、赤ちゃんのお臍にお湯(お水)につけてはいけないと言われているが、沐浴は大丈夫なのか?」、中国のママからは「コロナが落ち着いたら中国に帰ろうと思っていますが、赤ちゃんは何ヶ月から飛行機に乗れるか?」など。 また、コロナ禍で病院での立ち会い出産や家族と面会が出来ない事への不安、産後の手伝いがない事への不安が明らかになりました。「一人でいるのは、とても孤独で寂しいです。」と両親学級後のアンケートに書かれていたのを目にし、私たちスタッフの心が痛みます。そのため、今後は産後の支援に着目し、新しい事業を展開する予定です。
 
在日外国人の女性の中には日本語がわからないために、妊娠・出産・育児に関することを、自分で選択や決定ができない方がいます。母国語による両親学級が少しでも、そのような状況の解決の糸口に少しでもなれることを願って行っています。
 1年間の活動を通して来年度に向けてすべき課題も見えてきており、さらに、ニーズにあった両親学級になるように、参加者の声に耳を澄まし、仲間と共に考え歩んで行きたいと思います。

八千代助産院/ 東京都助産師会、元シェアスタッフ 横川峰子
機関誌「Bon Partage」No.167(2020年4月)掲載

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