HOME > シェアが賛同すること > HIV陽性者の生活圏における治療の拡充に関するお願い
現在、わが国おいてHIV陽性と診断され通院治療を行っている患者は15,000名を超えています。さらに毎年約1,500名が新たにHIV陽性と診断されています。
いっぽうHIV感染症は多剤併用療法により進行を阻止でき、エイズによる死亡例は激減し、医学的には慢性疾患といえるまでその治療は進歩を遂げました。しかしながら患者数は当面増加の一途をたどると予測されます。
一方、HIV陽性者が地域において他科を受診しようとするとき、転院、遠隔地の拠点病院への紹介といった実質的な診療拒否の事例も多数報告されています。このような実態の背景には診療体制構築時においてHIV陽性者の受療行動が多岐にわたることを想定されておらず、ブロック病院等の一部病院の全科対応で対処できるとされている事が挙げられます。つまり、現在のHIV陽性者診療体制は拠点病院、中核拠点病院、ブロック拠点病院における集中対応という、制度面の問題がみられ、また医療者の中に存在するHIV/エイズへの偏見が地域医療でのHIV陽性者の受診の障害となっています。HIV陽性者の生活圏での受療を可能にするためにはこれらを取り除くことが急務です。
日本陽性者ネットワーク・ジャンププラスはHIV陽性者の生活圏における治療の拡充を実現するために、次の三項の実現を要望します。
1、医療従事者の感染予防のための針刺し事故等による医療者のPEP(HIV暴露後感染成立予防薬処方)の労災認定
現状では針刺し事故等によるHIV暴露後感染成立予防の費用は労災認定対象となっておらず、その費用は主に病院負担となっています。また、適切に予防処置を行うためには速やかに処置する必要があり必要薬剤の備蓄体制を整えることが望ましく、HIV陽性者の生活圏における地域診療を推進するうえで労災認定は喫緊の課題です。
2、HIV感染症診療報酬加算制度が一般医療機関でも適用可能(B001特定疾患治療管理料)であることの周知徹底と歯科診療への適応。
a. 現在、HIV陽性者の受診について保険点数は特定疾患指導料、ウイルス疾患指導料1として240点の算定が認められています。しかしながらHIV陽性者診療に伴うディスポーザブル(使い捨て)機材のコストを理由に挙げる医療機関が少なからず存在します。この理由は特定疾患指導料の保険適用が可能である事実に反します。この周知徹底を行い、HIV陽性者受診拒否を無くして下さい。
b. 上記ウイルス疾患指導料は歯科診療には適用されず、HIV陽性者の中でも最も広範なニーズのある生活圏における歯科診療の障害となっております。歯科診療についても同様の制度を設けるか、同法の適用拡大をお願いします。
3、一般医療職を対象としたHIV/エイズ啓発活動の推進
拠点病院においては研修機会の提供などが進み、特定疾患治療管理料等の保険適用も認められているものの、他科の医療者、地域医療に携わる医療者のHIV/エイズへの偏見は根強く、実質的診療拒否増加の背景となっております。今後想定されるHIV感染症患者の増加と生活圏における受診拡充のために、広く一般医療者、病院経営者、医療機関就労者へのHIV/エイズおよびHIV陽性者に関する偏見削減のために急務である啓発活動を推進してください。
以上
2010年8月10日
当団体は平成22年8月10付日本陽性者ネットワーク・ジャンププラスの「HIV陽性者の生活圏における治療の拡充に関する要望」の趣旨に賛同いたします。
賛同団体(平成22年8月現在)
(団体名/代表者氏名)
エイズ&ソサエティ研究会議 代表 根岸昌功
すぺーすアライズ 代表 鈴木ふみ
東京HIVデンタルネットワーク 代表 鈴木治仁
特定非営利活動法人 ぷれいす東京 代表 池上千寿子
NPO法人 ピアフレンズ 代表 石川大我
MASH大阪 代表 鬼塚哲郎
HIV陽性者支援団体 LIFE東海 代表 真野新也
NPO法人りょうちゃんず 理事長 藤原良次
Rainbow Ring 代表 佐藤未光
ライフ・エイズ・プロジェクト(LAP) 代表 清水茂徳
特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会 代表 本田徹
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