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(認定)特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会 シェアは、保健医療を中心として国際協力活動を行っている民間団体(NGO)です。

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NGOトップ対談 茂田真澄氏(アーユス理事長)×本田徹(シェア代表理事) ― NGOと歩む生き方 ―

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人生の半分近くをNGOと共に歩んだ二人。シェア創設より関わった本田と、シェアをきっかけにNGOを支援するNGOを立ち上げた茂田氏に、NGOに関わり続けてきたことの価値についてお聞きしました。

NGO=草の根の力との出会い

―どのような経緯でNGOに関わり始めたのでしょうか?

本田:シェアは途上国の医療に関心や経験のある若者たちが集って生まれましたが、当初はシェアという名前もありませんでした。1983年7月頃から勉強会が始まっていて、私はJVC(日本国際ボランティアセンター)の事務所を訪ねるようになったんです。若者たちが集まって、市民活動で日本の社会を変えたいという気持ちがすごく熱く感じられたところです。カンボジアの難民救援が日本の中でも大きな社会的テーマになっている時期にたまたまNGOを知ったんです。

茂田:NGOに関わりにはじめた86、87年頃は、まだシェアのことは知りませんでした。仏教界の先輩たちに連れられてカンボジア難民キャンプなどに行っていました。最初は主に国連関係に募金を渡していましたが、現地でNGOに出会ったんです。NGOという言葉もまだ知らなかったけれど、活動している人達に出会って、「これだ」と思いました。それでJVCを訪ねに行きました。

本田:NGO的な価値観が大切だと教えてくれた室靖さんにすごくインスパイアされました。いわゆる草の根という考え方で、直接に途上国の人たちと繋がって、政府レベルの援助とは違う関係性を作って、世の中を少しでも良くしていくという価値観は、当時新鮮でした。さっき、茂田さんが「これだと思った」とおっしゃっていましたが、私たちもNGO的な価値観を教えてもらったのは室さんが最初でした。

NGOと向き合うなかでの気付き

―シェアは医療支援NGOとしてエチオピア緊急医療救援を行うのですが、その後医療支援とは違う方向に向かうようになったかと思います。

本田:2つの面があると思います。緊急時における医療者が果たせる仕事というのは、命を救うという意味での達成感を抱けるかと思います。でもそれは振り返るとすごく小さなもので、地域自体を健康面で底上げできた、あるいは病気にかからない地域作りに貢献できたということではほとんど何もなくて、もともとの貧困、栄養失調の問題にはなんら根本的な原因は変えることなく去って行く。
もう一つ、医療者だけではどうしようもない。つまり良いコーディネーターがいなければ、医療プロジェクトとはいえ全然まわっていかない。そういうロジやマネジメントができる人の存在の大切さと、プライマリ・ヘルス・ケアというところに落ち着いていきました。

―茂田さんも僧侶としてNGOに関わっていくなかで変わっていったものなどありますか。

茂田:難民キャンプに行ってみて、苦しんでいる現地の人たちに対して情熱を持って活動している人たちが、自分の知らない世界で一生懸命やっていることが、すごく新鮮でした。物事は簡単に解決できるわけではないことも学んだし、NGOとしての草の根の考え方についても学びました。そのうちにお寺や仏教は、歴史の中で知識を持って新しい農業や橋の整備などを指揮していたことを知ると、お寺がそもそもNGOだったのだと思うようになったんです。仏教が変わったわけではないのに、それをきちんと実行できていない今の寺がある。それを反省しないとダメだと気付かされたんです。
自分たち僧侶は最終的にお寺に戻ってこないといけないと思うと、お寺を変えることが自分の役割だと思いましたね。ファイトが生まれました。

援助は誰とどのように歩むのか

茂田:ある国際的な支援組織を介して、募金集めをしてブータンに簡易保健所をつくる支援をしました。ある時、シェアの関係者で国際保健を専門とする方から、贈った簡易保健所は使われていない時の方が圧倒的に多いだろうと言われたんですね。それで支援のあり方に疑問を抱くようになったんです。
やはり信頼できる人は、弱者側にいる人ではないかと思うようになりました。NGOにしても社会の中の弱い立場に立って繋がっている人たちです。何かあった時は権力側に訴えることも大切だろうけど、何か決断する時は弱者の意見を聞かないと間違えることになるだろうと思いました。

―本田さんはいつも「From Weakness Strength(弱さから力が生まれる)」と書かれたバッジを身に着けてますが、繋がるところがあるのではないでしょうか。

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本田:障害を持っている人は弱者だし、いろいろなことができないという偏見を持たれがちです。実際にデビッド・ワーナーさんがメキシコの村で、事故等で下半身マヒになったという人が訓練を受けて保健ワーカーなどになっていくと、非常に傾聴能力が高いとか、弱さと一般的に思われていたことが、保健ワーカーとして働く上で役に立つ能力に変わることに、彼は気付いたのです。だからそれは弱さが強さに変わることです。そういう意味では弱い人と信じられている人が強さを獲得するエンパワーメントになっている。それは茂田さんがおっしゃっている、弱者の立場の視点を持っていないと援助が間違った方向に行ってしまうというのは繋がっているし、どういう風に相手の立場に立って一緒に歩んでいくかという援助方法論にも繋がっています。どっちも大切だと思います。

茂田:お寺にはいろいろな相談が持ち込まれます。自死希念の若者や精神疾患を抱えた人など様々です。その中で、とにかく話を聞く。とことんつきあいます。それに関わるようになったのはNGOの人と同じで、現場がお寺になっただけです。これからどうしていいのかわからない人と話をし、思っていることに耳を傾け、もしできることがあればこちらも話をしていく。精神疾患の人の場合は、病院に一緒に行く。医者を紹介する。横の繋がりを生かすことで活動の幅を広げることも、NGOから学んだことです。

共感を持って向き合うことが大事

―それぞれの想いを持ってNGOをはじめて、これまでの達成感ややりきれない思いなどはいかがでしょうか。

茂田:次々と生まれる問題を解決できなくても、それによって立ち向かうエネルギーを得ていると思います。自分一人では何もできないけれど仲間やNGOがいます。現場に行って問題を解決するような達成感とは違うけれども、私は支えていることで達成感を得ることができるんですね。パレスチナの障害者の方が日本にいらして日本の障害者の方と会った時、二つのグループがすぐに分かち合えているのを見て、ものすごく感動しました。私が何をしたわけでもないのですけれど。
私は元々応援団なんですけど、応援する人がいると、人間て変わる力を得ることができるんですよ。

本田:シェアの30年を振り返ると、そんなに甘いものではなかったと、すごく感じます。政治のことも含めて、そんなに簡単に変わっていくものではなかったです。NGOを取り巻く環境も、財源を含めて厳しいものになっています。最初の頃、松明のように掲げたものが、今でも自分たちの中に灯っているかというと、内心忸怩というところが正直あります。
だけど、私たちと繋がって元気に途上国で活動している人たちを思うと、私たちも頑張っていかないといけないと思いますね。モチベーションです。そこからなんらかの未来に対する明るい兆候を見出したいし、小さいことでも活動を続けることで良い方向に変わっていることはあるので、それをさらに良くしていきたいと思います。
また、日本社会自体が高齢化し、貧困の問題が深刻になり、ある意味で途上国と日本が地続きになったことも感じるんですね。シングルマザーの貧困状態は、OECDの国の中でもトップクラス。途上国とは違う意味で追い込まれた人たちを座視していていいのかというのをすごく感じます。それと途上国に対してシンパシーを持って取り組んでいることは、状況は違うけど、そこに向き合っていく人間の気持ちは同じじゃないかと。そこで繋がっていると思います。そういう意味でグローバルという言葉を使ってもいいと思います。お金儲けのグローバルじゃなくて。苦しんでいる人に共感を持って向き合う、一緒に解決の道を歩む、考えて行こうというのは一緒じゃないかと思います。

私を成長させたNGOという生き方

茂田:シェアがアーユスを作るきっかけになったのは確かです。当時は、まだ先代が元気で時間がありましたから、かなりNGO活動に使っていました。こうやって違うことに時間をつぎ込むことで、成長できたと自分でも思います。社会問題の読み解き方、組織を運営してくことの課題、運営する資金をどうやって作るのか、NGOからの学びが自分を大きく成長させてくれたと思います。
でも設立した時は楽しかったですね。いろいろな人を訪問してアーユスに誘っていました。

本田:医者って、コミュニケーション能力の問題がすごくあるんです。患者さんが納得されるかどうか、治療法の選択、死を目前にした人との会話というのは、人間と人間としての心の底からしないといけない。医療の技術だけで考えていたら見えてこない、その人が必要としていることに気付けるかというのが、医療以外の世界でいろいろな人と接していくことで学ぶ機会があり、自分の医者としての職業において、すごく多様なものを踏まえられるようにしてくれたと思います。NGOの一員として働くことができて、医者としてもプラスになったと思います。

相手の苦しみを理解する、「想像」する力

―人と人とのご縁でNGOに関わり、そして理事長/代表となってNGO活動を率いていく立場になりました。同じようにNGO活動する人の輪を拡げていくにはどうしたらいいのでしょうか。

茂田:まずは知ることが大切なのですが、頭でっかちになってもな・・・と思います。対人間なので、感じることも大切かと思います。まず動いてから考えてもいいかもしれません。
あと想像力をもっと駆使して欲しいですね。想像力をもっと豊かに駆使できると違うと思うんですね。何かをしようというときも、答を先に求めるようになる。良い映画も絵画も、全てを語るのではなく、その向こうにあるものを想像させる力を持っているもの。NGOも、もしかするとその先を想像できる楽しみをかき立てるものを提供できるといいかもしれない。

本田:想像力というのは非常に大事だし、それがなければ共感を持って他者を理解する、模索することはできません。自分の汗を流して苦労するという場面が少なくなっているのかもしれません。人と人がぶつかって生まれてくるものは貴重です。それがないと、見えないものを想像することができなくなる。自分が住んでいる世界がとても小さくてもいいから、そこで人と具体的に接触して問題を解決するような経験を暮らしの中で増やせれば、相手の苦しみなどもよりよく理解できるようになるのではないかと思います。そこからNGOの活動にも理解が深まるでしょうし。自分の持ち場の経験を増すことは大切だと思います。

機関誌『ボン・パルタージュ』154号(2013年11月発行)掲載
協力:枝木美香(アーユス仏教国際協力ネットワーク事務局長) 文責:飯沢幸世(シェア広報担当)

honda.jpg茂田真澄
アーユス仏教国際協力ネットワーク 理事長 60才
東京都町田市 勝楽寺の住職をしながら、NGO活動に参加。寺で「こころと命の相談所」も行っている。
honda.jpg本田徹
シェア=国際保健協力市民の会 代表理事 67才
医師として病院に勤務しながらシェアや山友会などNPO活動に参加。
  1. 1983年にJVC内に「海外援助活動医療部会」として発足し勉強会を開始。1990年にJVCより独立し、1993年に団体名称を「シェア=国際保健協力市民の会」と改めた。
  2. 東和大学国際教育研究所教授(1983年当時)
  3. 1985年にJVCと共同でエチオピア飢餓被災民への緊急医療救援を実施。アジバール病院で5万人の患者を診た。
  4. 健康であることを基本的な人権として認め、全ての人が健康になること、そのために地域住民を主体とし、人々の最も重要なニーズに応え、問題を住民自らの力で総合的にかつ平等に解決していく理念・アプローチ。
  5. デビッド・ワーナー(David Werner)。途上国の地域保健、障害分野の第一人者。『医者のいないところで』著者。
  6. 経済協力開発機構。ヨーロッパ諸国を中心に日米を含め30ヶ国の国が加盟している。
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