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(認定)特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会 シェアは、保健医療を中心として国際協力活動を行っている民間団体(NGO)です。

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[沖縄平和賞連載vol.12]さかさま医療ケアの法則-「人間の安全保障」課題に-

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共助の精神協力が必要

「さかさま医療ケアの法則」(Inverse care law)という、日本人には聞きなれない言葉がある。英国の優れた臨床医、疫学者で、この国のNHSと呼ばれる国民健康保健制度の確立にも功績のあった、ジュリアン・ハート氏が、1971年に世界的な医学雑誌ランセットで提唱した考え方だ。いまではWHO(世界保健機構)や英国系の医学・公衆衛生学界では通説となっている。 「よい医療ケアの確保は、そのサービスが提供されるグループの医療ニーズが高いほど、反対に難しくなる傾向がある」と彼は喝破する。シェアの活動事例として、これまでの回で紹介してきた、カンボジアの農村僻地の母子たち、タイのHIV陽性者・エイズ患者、在日外国人労働者、東日本大震災の被災者などの例が示すように、より恵まれない、健康を損なわれやすい状況に置かれた住民こそ、逆に、適切な医療ケアへのアクセスを一層妨げられている。放っておけば、「さかさま医療ケアの法則」が貫徹されてしまう状況に抗して、どう事態の改善を図り、医療における公平性や普遍性、つまりプライマリ・ヘルス・ケアが求めるヘルス・フォ・オール(すべての人に健康を)の理想に少しでも近づき、「人間の安全保障」を担保できるかというところに、地球市民社会が直面する課題がある。

ここで私たちが重要と考えていることは、二つ。よりよい医療、保健、福祉を地域社会で実現するために、限られた人的・物的資源をいかに有効活用するかという視点から、公助、共助、自助という3つの枠組みのうち、共助の部分をより強く、豊かなものにしていくこと。これは、NPO・NGO的な存在や働きを、もっと広く世の中に根づかせること、と言い換えてもよい。つまり、市民社会組織の強化という課題だ。もう一つは、公的、民間を問わず、異なったセクター間での連携や協力、ネットワーキングをより密で有効なものにしていくこと。たとえば、気仙沼でシェアは、緊急救援フェーズの後、地元の保健・介護・福祉関係者、研究者、市民が「プロジェクトK」(Kは気仙沼の略)という草の根市民組織を立ち上げるお手伝いをしている。プロジェクトKは、行政とも連携しながら、仮設住宅の住民・障害者、孤立した集落の高齢者、子どもたちが安心して暮らしていけるコミュニティの再興を目指して、活動している。シェアは2-3年をかけて、彼らのNPOとしての自立を支えていくつもりである。昨年全国の高齢化率が23%を超え、本格的な超高齢社会に突入した日本にとって、大都市圏だけでなく、農山村においても、NPO的な活動がもっと盛んになっていくことは、この国の未来に関わる重大事であろう。

一方、2002年に独立したばかりの若い国、東ティモールでは、シェアは10年来、村や学校での保健教育に取り組んできた。半数近くの乳幼児が栄養失調状態にあるという、世界でも飛び抜けて困難な条件に置かれたこの国での、保健教育や予防活動の必要性は特に高い。母親や乳幼児、学童らが、貧血や栄養失調や感染症から免れ、健やかに暮らし、成長していくために、まだまだ外部からの支援・協力は必要だ。その場合も、教育や保健行政機関、病院、保健センター、学校、村落保健ボランティアなど、現地側があくまで主役であり、シェアのようなNGOは、黒子、橋渡し役に徹することが大切だ。

21世紀を見通して、シェアは引き続き、日本の内外で、プライマリ・ヘルス・ケアの理念を大切にしながら、地道にそして謙虚に保健活動を続けていきたい。

最後になったが、沖縄平和賞が私たちにとってどんなに大きな励ましになったかを改めて噛みしめ、沖縄県民のみなさまと本紙に心からの感謝を申し上げたい。


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写真:巡回診療隊の一員として往診する本田医師(2011年4月、宮城県気仙沼市(雑誌「病院」提供、写真撮影・船元康子))


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本田徹(シェア代表理事、医師)

沖縄平和賞連載
沖縄タイムス 2011年12月26日(日) 掲載
この記事はシェアが2010年に第5回沖縄平和賞を受賞したことをきっかけに、1年にわたり沖縄タイムスに掲載いただいたコラムです。
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