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(認定)特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会 シェアは、保健医療を中心として国際協力活動を行っている民間団体(NGO)です。

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[マイノリティと健康vol.5] 「マイノリティと健康」へ参加して、最近思うこと

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「マイノリティと健康」へ参加して、最近思うこと


20150423.jpg私が座長を担当させていただいたのは、「HIV/AIDSとセクシャルマイノリティ」という分科会でした。取り上げられた話題はセックスワーカーへの取り組み、MSMへの取り組み、タイでの取り組みです。いずれも人口集団としてマイノリティとしてだけではなく、スティグマの付与や差別による不平等といった問題を孕んでいます。そうしたマイノリティ・グループの問題の社会的解決の取り組みが、社会にとって持つ意味は何かということが論点の一つでした。この問いへの答えの一つは、社会的不平等な状況に置かれている人々の生活問題の解決は、全ての人が生活しやすい社会になるということだと思います。それが多様性な人々がともに暮らしうる社会づくりの道筋になるのだろうと考えます。分科会でとりあげられたテーマは、他にホームレス、難民、在日外国人、発達障害者でした。マイノリティ・グループとされる人達の問題の解決が、社会のセーフティネットや公共性の土台であることは、他の分科会のテーマでも共通していると言えるでしょう。

しかし私達は、そうした社会的包摂の実現の意義を必ずしも実感できない状況にいるように思います。総論は賛成できても、それらを現実の暮らしの中で紡いでいくことは、たやすいわけではないように思います。マイノリティ・グループとされる人達が等しく健康が守られて、営みが支えられるために、私達は日々の暮らしの中で、どのような方法を紡げるのだろうか。これが、本地方会に参加しながらの私のテーマでもありました。

これらの問題は、マイノリティ・グループに限定されることではなく、他者への想像力や他者への信頼感に基づくかかわり合いということにつながっているのだろうと思います。例えば、街を歩いていて、少し困った様子の人に出くわすことがあります。少し気になっても見ず知らずの人であると、そのまま通り過ぎてしまうことが少なくありません。とりわけ都市部ではそうです。そうしながらも声をかければよかったかなと少々気がかりが残り、それが自分の中の居心地の悪さになっていきます。「いつのまに、こんなふうに目の前の人に無関心を決め込むことを、常の習いとした暮らしぶりになったのだろうか。」という気分が心をざわつかせます。この居心地の悪さや違和感の所在を探ると、ともに生きているはずの多様な人々と分断されている状況に気がつきます。

私の暮らす街には、多様な人達がいます。私自身も多様な人達の中の一人として、同時代を生きているはずです。しかし、現実の街では、人々の多様性は見えにくく、障害をもつ人は特別な場所においやられ、野宿を余儀なくされている人はその存在を黙殺されるといった状況にあります。さらに街ではヘイトスピーチが繰り広げられています。そこで起こっていることは、社会的排除です。アルマティア・センが提唱した「人間の安全保障」は、機会とそれを活用できるための支援の保障でした。単なる情報や機会の公平は、実質的には不平等を容認していることになります。実質的な不平等を解消し、公平であるためには、その解決方法を不平等な状況におかれている当事者との「対話」が不可欠です。つまり人と人をつなぎなおすためには、まず「対話」という作業を丁寧にすることが必要なのでしょう。互いの言葉を聴き、受け止め合うことは面倒な面もあります。そうした面倒なことを、面倒だと思いながらもやっていくこと、それが他者の暮らしのリアリティを共有することになっていくように思います。

本地方会の全体会で語られたことは、この「対話」について示唆となる内容でした。「対話」は言葉に頼りがちです。それは言葉を苦手とする人にとっては、新たな困難や格差を生むことになります。「言葉」にのみ頼らない方法での「対話」が必要です。そのヒントが、「作業」でした。ともに何かをする「作業の協働」は、言葉では伝わらない多くのことを伝え合うことができるのではないかと思います。マイノリティ・グループの人々も含めて暮らしの場で、さまざまな人と出会い、「対話」をすること、そしてともに「作業」を行うこと、それらを通して「時間」を共に過ごすこと。こうした事の積み重ねが、一人ひとりにはかけがえのない物語があるということを実感させてくれるのではないかと思います。それが過剰に美化もせず卑下もせず、等身大に互いを理解しあい、同時代にこの街で生きていくための近道なのだろうと思います。

そしてそのささやかな一歩が、例えば、街で気になった場面で立ち止まって声をかけてみること、例えば、暑い夏の日ふと隣合わせ視線があった誰かに「暑いですね」と言葉をかけてみること、つまりおせっかいで、なれなれしい「おばさん」になることかなと思い至りました。 4年前の3月11日の震災では、被災地から遠くにある人も、被災地の見知らぬ人への想像力を働かせ、心を揺り動かされました。その一方で、ネット上では外国人や生活保護受給世帯などマイノリティへの偏見を助長する情報が日々みられます。そして、原発事故後の福島の人々の声も、沖縄の基地移設への市民の声も、半世紀前の成田空港建設の歴史と同様のやり方で踏みにじられ、遠くにある人には伝わりにくくなっています。このような暮らしの場で進行している分断を、常に注意ぶかく察知し、思考することは難しいことです。それでも、自分の中に引き起こされる何がしかの違和感や居心地の悪さに立ち止まり、同じ時代を生きている人々と日常の中でかかわりあうという暮らしのありようを、取り戻したいと願う最近です。

2015年4月2日

nakakuki.jpg大木 幸子
杏林大学教授、保健師 阪神淡路大震災、三宅島噴火災害等においても保健活動を行った。シェアの震災支援事業保健アドバイザー。

DVD:第29回日本国際保健医療学会 東日本地方会「マイノリティと健康 いのちの格差をどう縮めていくか」

dvd.jpg2014年5月24日に国立国際医療研究センター(東京)で行われた、第29回日本国際保健医療学会東日本地方会「マイノリティと健康 -いのちの格差をどう縮めていくか-」の記録DVDです。6枚組みでの販売です。

<1巻>
Disc.1:開会式、基調講演、全体会
Disc.2:ホームレス
<2巻>
Disc.3:難民
Disc.4:在日外国人
<3巻>
Disc.5:HIV/AIDSとセクシャルマイノリティ
Disc.6:発達障害者

価格(税込): 4,320 円

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