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[Dr.本田徹の世界保健紀行vol.3]パレスチナの地で思ったこと

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パレスチナの地で思ったこと、人間を絶望の淵に追い込まないことは強者の義務ではないのか

パレスチナにおける「医療と人権」
「人権としての医療」は、シェアの発足以来、プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)の根底にある考え方、価値観として私たちが大切にしてきたもので、在日外国人やホームレス者への医療・保健・福祉において、いつもこのことの尊重が原則にありました。その意味で、1990年、湾岸戦争を機に私たちがささやかな関わりを始めたパレスチナは、国や民族間の、歴史的なきびしい対立の中で、普通の人々の暮らしや医療を守ることの難しさと必要性を教え、絶えず問いかけてくる場所でした。パレスチナにおける医療面での人権侵害は、①患者・住民の受療権―医療アクセスの否定、②薬品や医療器材の払底・占領者(イスラエル側)による供給拒否、③医療者(医師・看護師ら)の往診・訪問活動への妨害、④直接的な医療施設・救急車への武力攻撃、⑤軍による収監中の囚人・患者への拷問・医療アクセスの拒否、などさまざまな形をとってきました。

医療へのアクセス権を奪われたガザ市民の苦しみ
2007年6月、ハマスがガザを武力で制圧して以来、イスラエル軍は約150万人のガザ住民全体に対する集団懲罰的な封鎖(それ自体、ジュネーブ条約などの国際法に違反する行為ですが)を一層強め、患者さんの医療へのアクセスは極端に悪化しています。今回の訪問時(07年10月)に私は、パレスチナ報道で優れた仕事を重ねてきたジャーナリストの土井敏邦さんに同行して、東エルサレム最大の総合病院「アル・マカサード病院」を訪ね、ガザから専門治療を求め逃れてきている数名の患者さんと会うことができました。ある14歳の少年は、頭痛、視力障害、眼瞼下垂(がんけんかすい)などの症状を起こし、脳腫瘍を強く疑われていましたが、苦労して東エルサレムへ出てきても、放射線治療などを受けられる可能性がなく、西エルサレムにあるイスラエル側の病院に転院させてもらえるよう交渉・待機中でした。この少年はまだ、幸運な方と言えるのかもしれません。何度も何度も国境を封鎖するイスラエル軍と掛け合った末、通過を拒まれ、ガザでそのまま亡くなる難病や癌、外傷患者がかなりいると聞きます。また、仮に移動の許可がおりたとしても、ガザ住民の追い込まれている経済的窮境から、医療サービスを受けること自体を断念して、死を待つしかなくなっている患者さんも多いのです。

分離壁のもたらす社会分断化と絶望を越える視点
拡大するエルサレム圏の入植地と接することもあり、聖地ベツレヘムも今では高い分離壁で町を囲まれてしまい、住民の移動は困難を極めています。結果として、教会での礼拝を含む信仰の自由を奪われ、キリスト教系住民の流出が続いています。カーター元大統領の良心の書とも言える「パレスチナ―アパルトヘイトでなく平和を」(2006年刊)によると、パレスチナ人の土地に大きく食い込んだ分離壁の総延長は、国際的に承認されたイスラエル国境線の3.5倍に上る長さとなる見通しで、壁は既に西岸の37.5万人のパレスチナ人をイスラエル側に強引に取り込んでしまい、彼らの生活基盤を分断し、奪っています。

去年観た、「パラダイス・ナウ」という映画は、自爆攻撃者(Suicide bomber)の「超日常的な日常」を内面的に描いた映画として、驚くべき迫真性を帯びていました。これに匹敵するリアリティをもっているのは、ロープシンの「蒼ざめた馬」くらいでしょうか。絶望的な状況の中で人がどんな行動に及ぶかを考えるとき、私は強者の論理がどこまでもまかり通る中東の状況は、結局イスラエルの長期的な平和と安全にとって不幸な結果しか生まないと思います。現代のエレミヤとも呼ぶべき思想家ユリ・アヴネリの警世の言葉に、イスラエルの人たちが謙虚に耳を傾けてくれる日の来ることを祈らずにはいられません。

(今回のパレスチナ訪問では、「パレスチナ子どものキャンペーン」の現地駐在・石原聡美さんの全面的な協力をいただいたことを記し、感謝いたします)

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写真(左):エルサレムで脳腫瘍のため入院中のガザの少年
写真(右):ベツレヘムの検問所周囲の分離壁 

2008年4月

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