本田徹の代表退任のお知らせ
会員・支援者の皆さまへ
いつもご支援ありがとうございます。シェア=国際保健協力市民の会では、4月8日の理事会において、長年代表理事の職を務めてきた本田徹が同日付で共同代表の職を退くことが決まりましたので、お知らせ致します。それに伴い、2021年4月より本田と共に共同代表理事の職を努めてきた仲佐保が単独で代表理事を務め、また、沢田貴志が引続き副代表理事を務めることになります。シェアは、本年8月2日に創設40周年を迎えますが、引続き、新体制で頑張って参りますので、今後とも、何卒、宜しくお願い致します。
尚、本田は、福島県飯舘村での在宅医療に更に力を注いでいきたいとの思いが強く、今回、シェアの代表の立場を退くことになりましたが、引続き、理事として、当会の活動を支えていくことに変わりはありません。共に“Health for All”の実現に向けて頑張っていきましょう。
以下、本田のご挨拶です。宜しくお願い致します。
シェア代表離任に際して思うこと 人の仕事には、すべて、いつか終わりの日が来ますが、私自身NGOシェアで、人生の一番充実した壮年期の半分近くの時間とエネルギーを、大切なこの団体のために傾注させていただき、多くの貴重な学びと、さまざまな人と場所での出会いをいただいたことに、心から感謝したいと思います。 今年40周年を迎えるシェアが、まがりなりにもここまで成長してこられたのは、皆さまのご厚志、一種の幸運、そして、プライマリ・ヘルス・ケアという、人の「いのち」と健康に関して、時代を越えて基本的にまっとうな原則を大切にしてきたという、三つの要素が働いたためかなと、愚考しております。幸運ということで思い当たるのは、揺籃期のころ、事務所が持てず、「宿無し」になる危険が現実にあったり、海外のプロジェクトの走り始めの時期、私どもの資金繰りの見通しの甘さで、財政的にもたなくなりそうになったり、組織の運営方針を巡って内部的な対立が起きたりなど、心を悩ませる試練が何度か訪れましたが、その都度、資金面で救いの手が差し伸べられたり、融和的な調停者が知恵を下さったりで、なんとか事態を収拾することができたのでした。それにつけても、代表としての私がいかにボーッとしていたか、忸怩たる思いが尽きません。それぞれの時代ごとの優れたスタッフや理事・監事の方々、また長くシェアに関わってくださった、ボランティアや諸団体に支えられてのシェアだったことを、改めて痛感いたします。 プライマリ・ヘルス・ケアに関しては、何と言っても、シェアにとっては、デビッド・ワーナーさんの実践的な著作や、彼を招いての日本や東ティモールやタイで開いたワークショップなどから学んだもの、そして、工藤芙美子さんが、とくにタイで確立してくださった、シェアらしい現地の人びととの学び合いや仕事の流儀が大きな財産を成してきたと思います。個人的なことですが、私自身のタイでの留学、保健ボランティアに関する村でのささやかな実地調査、質的研究なども、工藤さんをリーダーとする東北タイでのシェアの、下痢予防やHIV・エイズに関する予防啓発活動の背景の中で可能となったのでした。医師としては、それ以前に、青年海外協力隊員としてのチュニジアからの帰国後、佐久病院での若月俊一先生から受けた大きな薫陶が、国内と海外の医療・保健活動を貫く一本の太い柱となりました。 シェアにとっては、副代表の沢田貴志さんらが、江戸川区の事務所時代に始めた在日外国人の健康相談や支援活動が、市民社会組織としてのシェアの役割や信用を高めてくれたことは間違いありません。また、国内での自然災害に際会して、神戸、新潟、気仙沼、熊本などで出会い、共に働き、信頼関係を結んだ素晴らしい人びとにも、心からの感謝を捧げたいと思います。 21世紀のこの日本が直面する課題は深刻かつ複雑多岐で、国際的または地政学的な要因に影響されるところも大きく、予測不能な面が多々あります。ウクライナ戦争の暗い影は確かに日本にとって無縁ではありません。一方で、私たちは微力ではありますが、無力だとは思っていません。市民社会組織として結束して、困難な問題の解決に向けて声を上げたり、不正をただし、権利を奪われた人たち(日本人であれ、外国人であれ)のためのアドボカシー的な役割を担う必要もあるでしょう。また、海外の保健活動などでも、公的資金にだけ頼って、日本から人を派遣する、従来のやり方から脱皮して、現地ですぐれた活動実績を上げている、信頼できるパートナー団体と組んで、進めていく新たなやり方にも挑戦していく必要があるのだと思います。この辺の課題は、今後シェアの新しい中期計画を策定する過程で、皆さまにもきちんと報告、提案していきたいと存じます。 私自身は去年はじめより福島の地に移住し、臨床医としては恐らく最後となる、お務めの時間を過ごしています。原発事故被災地の現状をつぶさに見るにつけ、住民の痛みは、日本人全体の痛みでもあり、世界に通じるものだとも思うようになりました。そして、人間は一人一人、世界中、習慣や宗教や政治体制の違いを越えて、本質的に互いの痛みに共感し、分かり合い、協力し合える存在なのだと確信しています。 代表としては、シェアでの務めを終わらせていただき、長年の絆で深く結ばれ、信頼する仲佐代表や沢田副代表に委ねますが、引き続き、理事としては応分の協力を続けてまいりますので、さまざまな機会にまた皆さまのご厚誼をお願いしたいと思っています。重ねて皆さまに心からの感謝を捧げて、結びといたします。 2023年4月 |
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