HOME > シェアの活動 > 過去のプロジェクト > 南アフリカ エイズプロジェクト(2005年〜2011年)
悪名高きアパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃後、1994年の初の民主化選挙から早や十年以上が経った南アフリカ。確かに政治的には「平等」が叫ばれるようになりましたが、黒人貧困層のおかれている状況は改善されてはいません。HIV感染拡大の現状も決してこの貧しさと無関係ではないのです。
成人人口の5人に一人がHIVに感染している南アフリカでは、HIV/AIDSが特に貧困層や地域社会に深刻な影響を及ぼしています。貧困州のひとつであるリンポポ州では政府の対策も遅れており、特に、情報や支援が少ない農村部では、偏見や差別が強く、HIV陽性者が孤立しがちな状況を生み出しています。
このような中、農村部において、HIV陽性者が健康を維持していくためのサポート体制を向上させ、HIV感染拡大予防活動を効果的なものとしていく活動が必要です。特に、人々がHIV/AIDSに対する正しい知識と情報を持ち、地域にHIV陽性者を受け入れる環境がつくられることが必要とされ、知識普及型の予防活動だけでなく、 HIV陽性者を含む地域の人々が主体となる予防・啓発活動が求められています。
このプロジェクトは、シェアと日本国際ボランティアセンター(JVC)が共同で実施ました。
HIV陽性者のなかには、自分が感染していると公表できず、精神的に追いつめられると同時に、必要な情報にアクセスすることができずに症状を悪化させ死にいたる人が多くいます。また交通費・治療代などの問題で病院にアクセスできない人もいます。こうした状況に対応するため、トレーニングを受けた地域のボランティアが村内の家庭を定期的に訪問し、ケア、家族へのサポート、カウンセリング、治療などについての適切なアドバイスを提供していくことが重要です。エイズ遺児についても、各家庭を訪問し、日々の状況を確認するなどしています。このように、HIV陽性者やエイズ遺児を支えていくには、地域の在宅介護ボランティアの存在が欠かせず、その活動を強化することが急務とされています。
シェアは、地域のボランティアを対象とした治療や栄養に関する研修やボランティア同士の情報・経験共有の勉強会、他のNGOとの経験交流の機会などを提供することで、ボランティア個々の能力とネットワークを強化し、ボランティアによる介護内容と地域におけるHIV陽性者のサポート体制の向上を目指します。
写真:村内の結核患者を訪問して話を聞くボランティア。
エイズは性感染症であり、感染拡大予防を考える際、青少年の行動変容は欠かせません。
シェアでは地域の青少年らに対し、HIV/AIDS、治療、予防、行動変容を含めた研修を行い、彼らが「ピア・エデュケーター(予防啓発を担う人)」として予防啓発に関わっていくことを目指します。研修は、キャンプのような場で自由な雰囲気で青年たちが意見を出し合いながら学んでいくことができるようにしていきます。
予防啓発活動が活発になることで、最終的には地域におけるエイズに対する正しい知識や態度が培われ、地域にHIV陽性者を受け入れる土壌ができることを目指していきます。
写真:啓発劇。嫁が病気になって、伝統療法士に相談に行っている場面。
地域で陽性者に対する適切なケアを提供することにより、陽性者の健康が保たれ、陽性者自身も地域での予防やケアの活動に関わることが可能となります。そして、陽性者自身が活動に参加することは、地域でのエイズに対する恐怖心や偏見を軽減させ、HIV検査を受ける人が増えることで予防効果の向上も期待されることから、陽性者の活動を支えていくことは重要です。
シェアは、地域のHIV陽性者グループを対象に、病気・治療について知識を得るための研修や、他地域で活動する陽性者を招いての懇談会、他地域の陽性者グループとの交流を実施し、陽性者グループが十分な知識や情報を持ち、前向きに生きていくために支援していきます。
写真:治療に関するトレーニングを受けるHIV陽性者たち。
HIV陽性者が増えるなか、親を亡くす、介護を強いられる、などエイズの影響を受ける子どもが増加しています。中には子どもだけで生活する家庭もあります。シェアの活動地にも、200人弱のエイズの影響を受ける子どもがいます。これらの子どもは、世話をする大人がいない場合は、地域のボランティアがなっているのが現状です。
シェアとしては、子どもが子どもらしい時間を持てるように、そして同じ状況にいる子どもと経験を共有する場としてのキャンプを開催します。また、ドロップ・イン・センター(略してDIC。地域の給食センター。親のいない子どもたちに一日2回食事を提供する。地域のNGOおよびボランティアが運営)で子どもたちが食事をするだけでなく、学校終了時から夕方までの時間を充実して過ごせるよう本や絵具、遊具を提供します。同時にDICボランティアを対象にした栄養トレーニングを実施し、子どもたちに栄養に富んだ食事を提供できるようにしていきます。
写真:ドロップ・イン・センターに来るケアの必要な子どもたち。
HIV陽性者が健康を維持していくためにバランスのとれた栄養状態を保つことは不可欠です。また、エイズ治療薬は強い薬であり副作用もあるため、治療を始める前に栄養状態も含めできるだけ体調を整えておく必要があります。しかし、十分な食料を購入する資金がなく、食べることすらままならない人も多くいます。
シェアは、陽性者やその家族が家庭菜園に取り組むための活動を実施します。トレーニングの対象者は、在宅介護ボランティア、ドロップインセンターボランティア、陽性者、青年リーダーなどです。この活動にはシェア南アフリカの他地域における農業プロジェクトの経験を活かし、お金をかけずに、地域にある資源を活用してできる農業を実践し、栄養価の高い野菜を栽培します。また、ドロップインセンター(DIC)の敷地内にモデル菜園をつくり、センターに来る子どもも家庭菜園に取り組むと同時に、DICで栄養価の高い安全な野菜を使った食事を提供できるようにしていきます。
写真(左):エイズ遺児デンゼルの畑では大きなかぼちゃが収穫できた。
写真(右):家庭菜園づくりをやりとげることにより、自信と笑顔を取り戻したデンゼル。
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