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新型コロナウイルス感染症 (COVID-19 )について(1)

1.一般的な新型コロナウイルス感染の経過

診療所・病院のプライマリ・ケア初期診療の⼿引き等:(プライマリーケア連合学会)

1) 感染から約 5 ⽇間(1〜14 ⽇間)の潜伏期を経て,
2) 感冒様症状(発熱,咳,喀痰,咽頭痛,⿐汁等),倦怠感等が出現し,
3)⼀部の患者では嘔吐,下痢などの消化器症状を呈することもあり,
4)それら症状が⽐較的⻑く,約 7 ⽇間持続する 5)患者の80%は、軽症で自然に治癒する。
6)患者の20%は、重症の肺炎となって入院が必要となり、5%が集中治療や人工呼吸器による治療が必要となる。
7)特に,⾼齢者や基礎疾患を有する患者⼜は妊娠中の⼥性では,発症直後に肺炎に⾄ることもある。ただし、若年者も重症化する可能性もあるため、要注意。
8)重症化する場合は、急速に悪くなり、死に至る場合もあるので注意。
*インフルエンザ、風邪などとの症状と似ているため、症状だけによる診断は難しい。

2.感冒用症状があった場合の対応

1)37.5度以上の熱がある場合には、早期の受診を控え⾃宅療養する。
2)不⽤意な出勤等の外出を避ける。
3)倦怠感が強く、呼吸が苦しい、尿が出ない場合には、すぐに帰国者・接触者相談センターに相談
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikokusyasessyokusya.html
4)高齢者、基礎疾患がある人、妊産婦は、2日間症状が続いたら、帰国者・接触者相談センターに相談
5)症状が4日以上続いたら、帰国者・接触者相談センターに相談

3.検査に関して

1)PCR検査(ウイルス量を増やしてそれを検知する方法)によって診断が下される。
2)陽性だった場合には、ほぼ(99%)間違いなく、確定診断として新型コロナウイルス感染症といえるが、陰性の場合には、確実に新型コロナウイルスに感染していないとは言えない。(30-70%)症状が続く場合には、再度の検査が必要となる。

4.新型コロナウイルス感染症の流行が拡大する理由

1)感染経路は、咳などからの飛沫感染と、手指を経路しての感染。
2)潜伏期の症状のない時にも、ヒトに感染する。
3)感染はしているが無症状例が少なからず存在し(10-20%)、また、多くのウイルスを排出(まき散らしている)している可能性があること。本人は、症状もないので、自覚することができない。
4)症状が軽い(感冒症状)ため、自分は他人に感染しないと考え、ヒトに接触する場合も多い。
5)通常のマスクは、ウイルスは通り抜けてしまうので、効果は低い。

5.対策として

1)密閉された換気の悪い場所(密閉空間)を避ける。
2)多数が集まる密集場所を避ける。
3) 間近で会話や発生をする密接場面をさける。

6.感染状況

日本国内

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(FASTALERT:新型肺炎ダッシュボード)


東京都

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(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)



・東京都の症例は、3/22 3例、3/23 16例、3/24 17例、3/25 41例と急激に増加しており、オーバーシュート(爆発的流行)の可能性も出てきている。
・3月25日の、永寿総合病院(院内感染)関連11名、5名海外渡航歴、13名感染経路不明。

7.提言

・東京都における感染爆発の可能性もある。この場合には、無症状者や軽症者からの感染(公共交通機関)のリスクも高まり、勤務場所での感染拡大も予想される。
・各組織での勤務体制(在宅勤務)の検討が必要。

2020.03.27
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19 )について(2)

1.世界及び日本国内感染状況
  • 世界的には、ヨーロッパ(イタリア5217、フランス2497、スペイン6549、ドイツ4751、 イギリス2433、スイス1122、オランダ1104、ベルギー1702、トルコ1869)及び中東(イラン2901、UAE102)での感染者増加とともに、アメリカ(19332)、特にニュ ーヨーク州での爆発的増加の状況となり、課題となっている。また、途上国(タイ136、マレーシア150、フィリピン343、インドネシア130)、においても徐々に広がりつつある。
    (表記は一日感染者数:3月30日発表 WHO Coronavirus disease 2019 (COVID-19) Situation Report-70より)
  • PPE(personal protective equipment::個人用保護具)が世界的に不足している。
  • 日本での状況は、全国の新規陽性者数は、3/28より100代(3/28:112, 3/29:194, 3/30:173)を維持しているが、特に東京都(3/28:63, 3/29:68, 3/30:13)での陽性者数の増加は継続しており、オーバーシュートの可能性が継続、都知事及び首都圏4県知事が外出自粛・週末の外出自粛要請を出した。
  • 台東区永寿総合病院での院内感染による感染者数はさらに増加(100名を超える感染)、同病院に入院していた陽性患者の1名の慶應大学病院への転院のため、慶応大学でも院内感染。


東京都

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(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)
2.東京での感染爆発(オーバーシューティング)予想の理由
  • 現在、東京では、新規陽性者の日々の増加、複数の医療施設での集団発生(クラスター)が継続しており、ヨーロッパやニューヨークで起こってしまった感染爆発が懸念されている。
  • 1)3月の欧米の観光旅行(卒業旅行その他)の帰国者からの感染
  • 2)欧米の感染爆発により、留学生及び企業の出張者の帰国者からの感染
  • 3)感染源不明陽性者の増加
  • 4)公共交通機関(鉄道、バス)のシャットダウンは不可能(多分)
  • * 今後の予想としては、長期化(3ヶ月以上)、感染のピークは1ヶ月ごろが予想される。



3.症状のない人や風邪症状のある人が検査をしないほうが良い理由
  • 感染爆発の可能性の報道を聞き、軽い感冒様症状があったり、無症状での検査をしようと考える人が増加する可能性が高いが、下記の理由で検査に行くべきではない。
  • 1)現在、検査ができる施設が限られており、検査に来る人(疑いがある人)が集まり、そこで感染するリスクが高い。(韓国では、ドライブスルー方式を取っているが、人が集まって待つ環境でないため、この懸念がない。)
  • 2)現在のPCR検査は、特異度は高い(陽性の場合、99%が確か)が、感度が低い(70%程度)ため、陰性だといっても、感染していないことは確実ではない。
  • 3)多くの場合(80%)は、症状が軽いか無症状であり、自宅療養で治癒する。
  • →高齢者、基礎疾患がある場合で2日以上の症状が継続した場合、また、急性悪化した場合にはすぐに検査をすることが勧められる。 それ以外の場合でも、発症後4日以上症状が継続した場合は、帰国者・接触者相談センターへ電話相談して、検査の要否を確認する。



4.根拠による情報分類 山中伸弥(京都大学iPS細胞研究所所長、医学博士)

―証拠(エビデンス)があり、正しい可能性が高い情報

  •  
    • 感染後、症状が出るまでの潜伏期間は1から17日とばらつきがある(平均は7日程度)
    • 感染しても症状が出ない場合がある
    • 感染してもPCR検査で陰性となる場合がある
    • 発症しても多くの場合は発熱や咳などの軽症
    • 高齢者や持病を持つ患者を中心に一部の患者では肺炎等で重症化、致死率も高い
    • 感染力(基本生産数)は、まだ確定していない
    • 咳等の飛沫とドアノブ等を介しての接触で感染する
    • 集団感染(クラスター)が世界各地で報告されている
    • クラスター以外(家庭内など)でも感染する
    • 症状がなくとも、他の人に感染させる場合がある
    • 手洗いやマスクしていても感染することがある
    • ワクチンはまだ開発されていない
    • 効果の証明された治療薬はない



―証拠(エビデンス)の乏しい情報

    • 暖かくなると感染は終息する
    • 中国は対策に成功したので、感染拡大が再び起こることはない
    • 感染者の報告されていない都道府県では、感染拡大の可能性は低い
    • 屋外のイベントではクラスターの心配ない
       (着替え、食事、トイレなど、室内で人が集まればクラスターの危険あり)
    • 新型コロナウイルスは人工的に作られた



5.提言
    • 新型コロナウイルス感染が増加し、都市封鎖、地域封鎖がおこるなかで、各個人のための感染予防(公共交通機関の利用や集会等への参加自粛)を強化
    • 在宅勤務体制の強化
    • 都会の中で取り残される人々が出てくる。在日外国人が十分な情報が得られなかったり、貧しい人が必要な物資を備蓄できなくなったり、医療制度の整っていないところでは、医療も十分受けられないことも考えられる。
      NPO/NGOとしては、これらの情報を収集し、関係者に伝え、これらの人々への支援をしていく必要がある



2020.04.01
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について(3)

1.世界及び日本国内感染状況
  • 世界的には、ヨーロッパ(イタリア4782、フランス4784、スペイン7719、ドイツ6156、  イギリス4324、オランダ1109、ベルギー1189、トルコ2148)、中東・西南アジア(イラン2987、UAE150、パキスタン252、サウジアラビア151)、アメリカ大陸(アメリカ合衆国24103の爆発的増加、カナダ1310、ブラジル1138)、アジア(マレーシア142、フィリピン227、インドネシア149)においても徐々に広がりつつある。アフリカでも、漸増ではあるが、各国の陽性例が増えてきている。
    (表記は一日感染者数:4/2 WHO Coronavirus disease 2019 (COVID-19) Situation Reportより)
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(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)
  • 東京都では、発生は、毎日漸増状態。医療施設でのクラスターもいくつかの施設に拡大。感染爆発が懸念される。
2.新コロナウイルス感染症の病態(なぜ、早期に重症化して死亡するのか)
  • 新型コロナウイルス感染症の一つの課題は、多くの症例が軽症にもかかわらず、特に高齢者、基礎疾患がある例では、急速に悪化し、死亡に至る例が多いことである。コメディアンの志村けんさんの例のように、最初の症状から、4日目には急速に肺炎が悪化し、意識不明となり、人工呼吸器、人工心肺装置を使用しての高度な治療によっても助けることができなかった。
  • アメリカのシアトルの症例報告でも、集中治療をした24例中12例が早期(平均7.5日)に死亡している。
  • 特徴としては、悪化のスピードの速さである。もちろん、肺が主に攻撃され、重症肺炎が起こるのであるが、肺炎だけではなさそうである。肺炎とともに血圧もさがり、ショック状態に陥っている(シアトル)。新型コロナウイルスは単に肺を攻撃するのではなく、全身の他の臓器(腎臓や肝臓等の重要な臓器)も攻撃しているのではないかと考えられる。
  • シアトルの症例、武漢の症例では、多くの場合、リンパ球(免疫をつかさどる血球)の減少が著しく、急性の免疫不全も原因の一つとも考えられる。

【参照】
■ Covid-19 in Critically Ill Patients in the Seattle Region -- Case Series
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2004500?query=featured_coronavirus
■ Clinical characteristics of 2019 novel coronavirus infection in China
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.02.06.20020974v1


3.人工呼吸器および人工心肺装置に(ECMO)ついて
  • 新型コロナ重症肺炎の治療に人工呼吸器及び人工心肺装置(ECMO: Extracorporeal membrane oxygenation)が使われる。人体は、呼吸をすることにより、体内の二酸化ガス(CO2)を排出し、酸素(O2)を空気中から取り入れる。酸素を取り入れた血液は心臓により、体中に運ばれる。人工呼吸器は高い濃度の酸素を機械的に肺に送り込むことにより、肺をサポートして、肺の回復を待つ。人工心肺装置は、血液を酸素化するとともにこの血液を体中に送り出すポンプ機能も果たす装置である。重症化したコロナウイルス肺炎では、心臓のポンプ機能も低下し、ショック状態(循環不全)にもなり、肺と心臓の代わりを果たすための人工心肺装置が必要となる。
  • アメリカのシアトルの症例報告でも、集中治療をした24例中12例が早期(平均7.5日)に死亡している。
  • 人工呼吸器及び人工心肺装置による治療の課題は、これを正しく使える医療従事者(医師、看護師、臨床工学技士等)が必要なことである。これらの技術は簡単に身につくものではなく、長期の訓練を受ける必要がある。
  • 人工呼吸器の製造だけではなく、その人材の確保も考える必要がある。



4.世界における根拠のないデマ (WHO)

■ https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/advice-for-public/myth-busters

  • 日光浴、25度以上の暑い気候により、新コロナ感染症を防ぐことができる
  • 多くの人は新コロナ感染症から回復し、2度と感染しない
  • 咳や不快感を感じずに10秒以上息を止めることができれば、新コロナウイルス感染症ではない
  • アルコールを飲むと新コロナ感染症を防ぐことができる
  • 寒さや雪は、新コロナウイルスを殺す
  • 熱いお湯にはいることにより、新コロナ感染症を防ぐことができる
  • 新コロナウイルスは蚊から、感染する
  • ハンドドライヤーにより、新コロナウイルスを殺すことができる
  • 新コロナウイルスは、紫外線ランプで殺すことができる
  • アルコールや塩素を全身にかけることにより、新コロナウイルス感染を防ぐことができる
  • 生理食塩水で定期的に鼻をすすぐと、新コロナウイルスによる感染を防ぐことができる
  • ニンニクを食べると新コロナウイルス感染を防ぐことができる



2020.04.03
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師

新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について(4)

1.世界及び日本国内感染状況
  • ヨーロッパでは、イタリア、スイスが減少傾向に、スペイン、フランス、英国が増加傾向(イタリア4361、フランス1850、スペイン6023、ドイツ3677、イギリス5903、スイス563、オランダ1224、ベルギー1260、トルコ3135)及び中東(イラン2481、UAE294)での感染者増加とともに、アメリカ(33510)での増加傾向は相変わらずで、犠牲者も増えている。また、東南アジアでは、爆発的ではないが増加傾向であり、徐々に広がりつつある。(タイ102、マレーシア179、フィリピン152、インドネシア181)
    (表記は一日感染者数:4月6日発表 WHO Coronavirus disease 2019 (COVID-19) Situation Report-77より)
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  • 都会での感染症が増加しており、4月7日に緊急事態宣言が出される見込み(7都府県:東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、兵庫、福岡)


■東京都における新規陽性患者数

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■千葉県(ニュースダイジェストより)
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■埼玉県(ニュースダイジェストより)
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■神奈川県(ニュースダイジェストより)
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■大阪府(ニュースダイジェストより)
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■兵庫県(ニュースダイジェストより)
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■福岡県(ニュースダイジェストより)
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  • 東京都の慶応大学で集団感染 18名(研修医40名による会食を3月に実施、その1名が陽性者であり、集団感染)
  • 48大学において感染者(3月の海外旅行等)を確認
  • 緊急事態宣言で営業継続される業種(スーパー・コンビニ、病院・薬局、公共交通機関、物流など)、他の業種に関しては、自粛要請予定
2.新コロナウイルスの感染性(どのぐらい飛沫し、感染性を保つのか)
  • 飛沫感染は2m離れると感染しないとされている。オープンエアでは,2mまで到達する   前に、種々の大きさのaerosol(エアロゾル,微小な空気中で浮遊できる粒子)は乾燥する。60~100μmの大きな粒子でさえ、乾燥して飛沫核になり、インフルエンザウイルスを含む多くのウイルスは乾燥して感染性を失う。したがって,コロナウイルスはインフルエンザ同様,エアロゾルが乾燥する距離である2m離れたら感染しないと思われる。
  • 湿気のある密室では空中に浮遊するエアロゾル中のウイルスは乾燥を免れるため、秒単位から1分ではなく、数分から30分程度、感染性を保持する。
  • 部屋の加湿は気道には優しいが、呼気や咳・くしゃみにより生じたエアロゾル中のウイルスの乾燥を妨げ、感染性を保持しやすいことになるため、湿度を上げすぎないことに留意するべきである。
  • ヒト呼吸器コロナウイルスは、鼻汁の多い、ティッシュの山ができるような鼻かぜを生じる。この感染様式は、くしゃみで感染するというより、ティッシュで鼻をかむ際に鼻を触った手がウイルスで汚染され、その手でドアノブなどの物を触り、そこに付着したウイルスが物を介して別の人の手にうつり、その手を顔面にもっていくことで感染が成立する。
  • 物の上でどれぐらい感染性が保持されるかについては、従来3時間程度と言われてきたが、中国SARS対策委員会では、プラスティックなどの表面で3日程度、痰や糞便では5日、尿中で10日としている。鼻汁や気道粘膜からの分泌物など粘性のある生体成分に包まれた状態では、表面が乾燥しても内部のウイルスの乾燥は限られ、感染性は安定しているようである。
  • 有機溶媒のエタノール、ベンゼン、クロロフォルムで容易に感染性がなくなる。

【参照】
■ 緊急寄稿(1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス学的特徴と感染様式の考察(白木公康) 日本医事新報社 浜松医大
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14278
■ On the origin and continuing evolution of SARS-CoV-2
https://academic.oup.com/nsr/advance-article/doi/10.1093/nsr/nwaa036/5775463


3.新コロナ感染予防、自宅で行うべきこと

都会での感染者の増加の中、在宅勤務、自宅待機者等のため、自宅での予防活動が必要となってきている。

<家庭の中での⼿洗いのタイミング> 

  • 外出から戻った後
  • 多くの⼈が触れたと思われる場所を触った時
  • 咳・くしゃみ、⿐をかんだ後
  • 症状のある⼈の看病、お世話をした後
  • 料理を作る前
  • ⾷事の前
  • 家族や動物の排泄物を取り扱った後
  • ⾃分がトイレを利⽤した後

<自宅をどのようにきれいにするのか>

  • 家をきれいにするときには使い捨ての手袋使用
  • 家族がよく触れる場所(部屋のドアノブ・照明のスイッチ・リモコン・洗⾯台・トイレ のレバー等)の消毒
  • ソファ、クッションなども消毒
  • 部屋の⼗分な換気(⽇中は1〜2時間ごとに5〜10分間窓や扉を開ける)

<症状がある家族がある時には>

  • できる限り部屋を分け、換気をよくする
  • 症状がある家族本⼈および同居の⼈は⽯鹸と流⽔でよく⼿を洗う
  • 同じ部屋などで1〜2メートル以内で接するときは、マスクをつける
  • 可能であれば、看病を⾏う⼈は1⼈に限定。看病をするときは、⼿袋やマスクをつけ、使 ⽤したマスクや⼿袋などはビニール袋にいれて袋を閉じて捨てる。看病のたびにこまめに⼿洗い
  • 感染の可能性のある⼈と⾷事をする際は、⾷器の共⽤は避ける。使⽤後の⾷器は、⾷器⽤洗剤でよく洗い、熱湯あるいは消毒液に10分以上浸した後、通常の洗浄を⾏えば、その後の他の⼈の使⽤は可能
  • ⾐類・布団や枕カバーは、下痢、嘔吐などの体液がついているので、可能性がある場合は、 80℃・10分以上の熱湯消毒をしてから、通常の洗濯を⾏う。気になる場合は、他の⼈の分とは分けて洗濯、薄めた次亜塩素酸ナトリウム⽔溶液(0.1%で使⽤す る)も有効(色落ちしないもの)



【参照】
■ 新型コロナウイルス感染症 市民向け感染予防ハンドブック第2版 東北大
http://www.tohoku-icnet.ac/Control/activity/images/guide/post_200316.pdf
■ What to Do if You Are Sick CDC アメリカ疾病予防管理センター
https://bit.ly/3e54BMO

2020.04.07
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師



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■役立つ情報
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1.「新型コロナウイルス感染症 市民向け感染予防ハンドブック第2版」 【日本語】 
http://www.tohoku-icnet.ac/Control/activity/images/guide/post_200316.pdf

2. Novel Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Infection Prevention Handbook for the General Public Ver.2 【英語】【English】
This handbook was written with the goal of providing everyone with a correct understanding of infectious disease prevention so that you can go about your lives with peace of mind. I hope that this will help prevent respiratory infections, including COVID-19, at home.東北大学
http://www.tohoku-icnet.ac/Control/activity/images/guide/english.pdf

3. 新型冠状病毒感染症 市民预防手册 第2版 【中国語簡体】【简体中文】
编写此手册的目的是为了能够让大家在正确认识新型冠状肺炎的基础上,做好有效预防,并能安心生活。希望能帮助各家庭预防包含新型冠状病毒在内的呼吸系统感染疾病。
http://www.tohoku-icnet.ac/Control/activity/images/guide/simplifiedchinese.pdf

4. 新型冠狀病毒感染症 市民預防手冊 第2版 【中国語繁体】【繁體中文】
編寫此手冊的目的是爲了能够讓大家在正確認識新型冠狀肺炎的基礎上,做好有效預防,並能安心生活。希望能幫助各家庭預防包含新型冠狀病毒在內的呼吸系統感染疾病。
http://www.tohoku-icnet.ac/Control/activity/images/guide/traditionalchinese.pdf

5. 신종 코로나바이러스 감염증 시민들을 위한 감염예방 핸드북 제2판 【韓国語】【한국】
감염증 예방에 대한 정확한 이해를 통해 여러분이 안심하고 생활하실 수 있도록 본 가이드북을 작성하였습니다. 가정 내 신종 코로나바이러스 감염증을 포함한 호흡기 감염증 예방에 도움이 되길 바랍니다.
http://www.tohoku-icnet.ac/Control/activity/images/guide/korea.pdf

6. Bệnh truyền nhiễm do chủng mới virus Corona Sổ tay phng chống ly nhiễm dnh cho người dn Phin bản 2 【ベトナム語】【Tiếng việt】
Cuốn sổ tay ny được viết với mục tiu cung cấp thng tin cho mọi người hiểu đúng về phng chống bệnh truyền nhiễm để bạn c thể yn tm sống. Ti hy vọng rằng điều ny sẽ giúp ngăn ngừa nhiễm trùng đường h hấp, bao gồm COVID-19 tại nh.
http://www.tohoku-icnet.ac/Control/activity/images/guide/vietnam.pdf

7. Энэ удаа 「"ШИНЭ КОРОНО ВИРУС ХАЛДВАРТ ӨВЧИН (COVID-19)"
Олон нийтэд зориулсан. Та бүгдийн амьдрах орчин болон гэр бүлийн хүрээнд COVID-19-нхалдвар авахгүй байх, амьсгалын замаар халдахаас урьдчилан сэргийлэхэд тань тус нэмэр болно гэж найдаж байна. 「"ШИНЭ КОРОНӨ ВИРУС ХАЛДВАРТ ӨВЧИН (COVID-19)"
Олон нийтэд зориулсан халдвараасурьдчилан сэргийлэх гарын авлага ХУВИЛБАР 2
【モンゴル語】【Монгол хэл】
http://www.tohoku-icnet.ac/Control/activity/images/guide/mongolia.pdf

新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について(5)

1.世界及び日本国内感染状況

▶ヨーロッパとアメリカ地域

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▶その他の地域

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  • 世界的には、ヨーロッパ、アメリカ(主にアメリカ合衆国)とも毎日の陽性者数の数がピークに達しているようであり、今後の日々の陽性者数の減少が見込まれる。
  • 東南アジア(特にインド、インドネシア、タイ)が増加傾向であり、心配である。このため、各国では、外国人の入国制限が強化されつつある。



2.日本、東京都国内感染状況

▶日本全体

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(NEWS DIGEST)



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(NEWS DIGEST)
  • 新規感染者も4/9は 578例と増加、都会(東京、大阪、神奈川)での増加率が高い。
  • 岩手県及び鳥取県の感染者は、ゼロ。



▶東京都

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(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)
  • 東京の感染者数は、増加中で感染爆発に向かっている。4月9日からの緊急事態宣言後の外出自粛規制、これを受けた職種の休業要請による効果が得られなければ、感染爆発は避けられない模様。



3.日本がとっている新コロナウイルス感染症対策(厚生労働省)
  • 新規陽性者が発生した場合、濃厚接触者(➀距離の近さと➁時間の長さに関係するが、必要な感染予防策をせずに手で触れること、または対面で互いに手を伸ばしたら届く距離(目安として2メートル)で一定時間以上接触があった場合)を確認して、隔離、観察すること。
  • クラスター対策として、ある程度集団的に発生した場合には、特に濃厚接触者の確認を徹底的に行い、これを隔離・観察する。
  • 国民の健康意識の高さ、手洗い等の感染予防に信頼を置き、公的機関やメディアを通しての感染予防に関して啓発をおこなうこと。
  • 治療に関しては、症状が悪化した場合の入院治療、重症化した場合の集中治療(人工呼吸器や人工心肺装置の使用も含む)を行う。
  • 緊急事態宣言後は、感染爆発も想定して、陽性者でも軽症者の場合には、病院から他の施設(ホテル等)に移る観察するという方法を取っている。



4.重症患者のトリアージュ
  • 感染爆発が起きることにより、大きな問題が起きる。患者のトリアージュという方法を取る可能性がある。トリアージュは、救急医療や災害医療の中でよく用いられる言葉で、大規模な地震などの災害時なに一度に多くの治療患者が出た時、それに対応する医療従事者が十分確保できないときに使われる言葉である。患者の重症度に基づいて、治療の優先度を決定して選別を行うことである。
  • 感染爆発がおこると現在の医療施設数、医療従事者だけではこれに対応できなくなる。ヨーロッパ(イタリア、スペインなど)やアメリカ合衆国でおこっているように、重症者でもこの患者を診られなくなる状況となる。
  • 重症者には、人工呼吸器や人工心肺が必要になることがあり、その対応数は限られる。また、これらの機材を使うためには多くの医療人材(医師、看護師、医療工学士)が必要となる。その場合、重症者の中での優先度をつける必要がある。具体的に例えて言うと、志村けんさんのような意識がなくなった患者さんには優先度は与えられず、意識があり、助かる見込みのある人に人工呼吸器、人工心肺を使うことになる。日本の医療の中では、医療従事者や家族にとって、習慣的、感覚的に困難なことではあるが、それをせざるを得ない状況も考えられる。



5.正しい可能性があるが、さらなる証拠(エビデンス)が必要な情報

山中伸弥 (京都大学iPS細胞研究所所長、医学博士)

(病態)

  • 年齢に関わらず、感染者の約半数では症状が出ない。
  • 子供では感染して発症しても軽症が多い。ただし重症化することもある。
  • 食欲不振や下痢が主な症状の場合もある。
  • インフルエンザと同時に感染することがある。
  • 心臓の筋肉にも感染し、心不全を起こす。
  • 嗅覚や味覚異常が主な症状の時もある。


(感染)

  • 感染力は季節性インフルエンザより高い。
  • 微小粒子で数時間生存し、感染の原因となる。
  • 帝王切開でも母子感染する可能性がある。


(対策)

  • 手洗い、消毒は感染予防にある程度は効果ある。
  • 感染している人がマスクをすることにより、他の人への感染を減らすことが出来る。
  • 1~2年でワクチンが開発される。
  • 抗HIV薬、抗インフルエンザ薬、抗ぜんそく薬など他の病気の薬が効果ある。
2020.04.10
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師

新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について(6)

1.世界及び日本国内感染状況
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  • 世界的には、新規陽性者数と死亡者数は、減少傾向、アメリカ(特にアメリカ合衆国は漸増)は、相変わらず増加しているが、ヨーロッパ全体においては、減少傾向。
  • 途上国では、西太平洋地域、東南アジアにおいても減少傾向であるが、アフリカ地域では漸増傾向。



2.日本、東京都国内感染状況

▶日本全体

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(NEWS DIGEST)



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(NEWS DIGEST)



東京都 2020年4月13日現在

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(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)
  • 4/13の新規陽性者は、91例と減少しているようにみえるが、週末の検査体制のためとも考えられ、必ずしも実数として減少しているとは言えない。
  • 緊急事態宣言、それに伴う東京都の緊急事態措置により、公共交通機関の利用率が半減(都営地下鉄4路線のラッシュアワー時に自動改札出場数が、約50%)等の効果がでている。



3.第1回「新型コロナ対策のための全国調査」より)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10798.html

  • 本調査は、厚生労働省がLINE株式会社に協力を頼み「新型コロナウイルス感染症のクラ  スター対策に資する情報提供に関する協定」を締結し、この協定に基づく情報提供に資するため、LINE株式会社の公式アカウントにおいて、サービス登録者に対して第1回「新型コロナ対策のための全国調査」を3月31日~4月1日に行った結果である。
  • 本調査は、全国のLINEユーザー約2400万(日本の人口の約20%)からの回答を得たもので、短期間にコストをかけずに多数のデータを収集することができ、画期的なものである。ただし、対象がLINEユーザーであることから、重症者は回答しづらいこと、感染症予防の意識が高い人ほど回答する傾向にあることなどの可能性が考えられる。特に、平時における職業・職種別の発熱傾向(発熱のしやすさ)や回答傾向は不明であり、本結果は必ずしも、新型コロナウイルス感染拡大の特異な状況下における職業・職種別の発熱状況を捉えているとは限らない。
  • 質問項目は、体調(普段通り、37.5度以上発熱、のどの痛み強いだるさ、せきがある、それ以外の不調あり)年齢、住所(郵便番号)、性別等である。
  • 回答者2400万人を、①現状の業務体制では3密回避や社会的距離の確保が難しいと思われる職業・職種 (例:比較的長時間の接客を伴う飲食店を含む対人サービス業、外回りをする営業職など)、②業務の中で3密が発生し、社会的距離の確保も困難だが、個人として感染症対策についての専門的知識を有する対人援助職 (例:医療職、介護職)、③3密回避や社会的距離対策の一定の導入が進んでいる職業・職種(例:内勤営業(オフィスワーク中心)、流通・物流業システム(卸・小売り、運送業等)など)、④通常3密、社会的距離の確保が難しい環境下だが、休校措置などで一定期間対策はなされている (例:教職員、学生・生徒)、⑤自粛条件下で、個人での3密回避や社会的距離対策が比較的容易 (例:専業主ふなど)、⑥その他 の6つのグループに分け、分析したものである。


(結果1)

  • 3密回避や社会的距離の確保が難しいと思われる職業・職種(飲食店を含む対人サービ  ス業、外回りをする営業職など)において、他グループと比較し、発熱者(37.5度以上の発熱が4日間以上)の回答者における割合(発熱率)が比較的に高い傾向(0.23 %)が全国的に認められた。
    グループ1(0.23%)、グループ2(0.09%)、グループ3(0.10%)、グループ4(0.12%)、 グループ5(0.05%)、グループ6(0.12%)


(結果2)

  • 現在最も新型コロナウイルス感染症者数の多い東京都において、最も発熱者数の多かっ た地区(上位20郵便番号区を抽出)のみの分析でも、結果1と同様の傾向が認められた。

    緊急事態宣言が出された都府県 グループ1の割合(率)
    東京都(0.38%)、千葉県(0.21%)、埼玉県(0.20%)、神奈川県(0.22%)、大阪府(0.24%)、兵庫県(0.18%)、福岡県(0.19%)

    その他の都道府県
    北海道(0.31%)、岩手県(0.24%)、石川県(0.13%)、長野県(0.14%)、三重県(0.15%)、鳥取県(0.32%)、高知県(0.18%)、鹿児島県(0.17%)、沖縄県(0.29%)


(緊急事態宣言に伴い求められる対応)

  • グループ(5)(専業主ふなど)は、他のグループと比較して、全国的に低い発熱率だった。個人での3密回避や社会的距離対策が比較的に容易と考えられるこのグループの熱発率が一律に低いことは、「不要不急の外出を避けること」が、新型コロナウイルスの感染リスクを避ける上でも、他者に感染を拡げないためにも有効である可能性を示唆している。
  • グループ(1)(長時間の接客を伴う飲食店を含む対人サービス業、外回りをする営業職など)は、地域レベルで新型コロナウイルスの感染リスクが上がったときに、最も脆弱になりうる可能性がある。3密を避け、社会的距離を管理できる働き方に調整することが直ちに必要である。例えば、定期的な検温等による体調管理と発熱時の休暇取得の徹底、社会的距離を確保する働き方の導入(テイクアウト等の考慮、職場のレイアウトや座席の配置の調整、対面による協議や交渉を自粛、遠距離出張を控え遠隔会議で代替など)。また、経済的影響を受ける関係職業・職種の方々には、公的資金からの補償も含めて直ちに制度的なサポートを提供できるよう検討を進める必要がある。
  • グループ(2)(医療職、介護職)および(3)(内勤営業(オフィスワーク中心)、流通・物流業システム(卸・小売り、運送業等)など)では、地域の感染リスクと連動して発熱率が上昇する可能性がある。3密を避けた就業環境の整備、社会的距離の確保は引き続き重要である。特に重大な局面に至っても働かざるを得ない職業・職種(医療・介護職種や食品・生活必需品関連の小売り業種、運送業など)には、感染リスクを管理するための対応が必要である。例えばマスクや防具服などの優先的な供給、体調不良時に休みやすい環境整備、労働衛生教育や作業環境の管理、公的資金からの特別手当なども考慮されるべき事項である。
  • グループ(4)(例:教職員、学生・生徒)については、休校措置がとられているため、現状はある程度社会的距離が管理された状況である。今後、休校措置が限定的に解除される状況を想定して、新型コロナウイルスの感染対策を踏まえた授業を行うことが重要であり、3密を回避した対面授業の工夫、ICTを活用した遠隔教育、検温などの体調管理を通じたリスク管理の導入を準備する必要がある。




2020.04.14
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師

新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について(7)

1.世界の感染状況
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▶アジアの国々

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  • 世界的には、新規陽性者数と死亡者数は、減少傾向かと思われたが、また、増加に向かう兆候あり。アメリカ合衆国は全体的に減少傾向に向かっているが、アメリカ大陸のカナダ、ブラジルが、毎日1000例を超える新規陽性者が報告されるようになった。また、メキシコ、エクアドル、チリといった中南米での増加があり、アメリカ大陸全体としては増加している。
  • アジア全体では、著名な増加はみられない。東南アジアで、ラオス、カンボジア、東ティモールでは増加していない。最初に中国、韓国に続き流行が始まったベトナムは、ほぼ封じ込めを成功しているようである。
  • 小国であるシンガポールでの増加が、目立つ。
  • 東南アジアの中心に位置するタイでは、一時増加傾向であったが、減少傾向と転じている。
  • 人口の多いインドネシアの増加が目立ち、東ティモールの影響が心配される。
  • アフリカ地域では、現状では、目立った増加がみられない。コンゴ民主共和国の増加が目立つ。



2.日本、東京都国内感染状況

▶日本全体:2020年4月16日現在

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▶東京都:2020年4月16日現在

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(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)
  • 緊急事態宣言後、新規陽性者数は、毎日のように増加してはいないが、依然として100例以上の増加がみられる。
  • 政府・与党は4月16日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国民1人あたり10万円を給付することを決めた。所得制限は設けない。
  • 政府は4月16日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、緊急事態宣言の対象を全国に広げる方針を固めた。7日に東京など7都府県に宣言を出したが、地方への人の移動などで感染が全国に広がる懸念があるためだ。



3.新型コロナウイルス感染症流行は予想されていた???

(新興感染症:Emerging Disease)

  • 新型コロナウイルス感染症やエボラ出血熱などは、新興感染症と呼ばれる。WHOの定義では、「新しく認識された、または新しく流行した、もしくは以前発生したが新たに地域的、媒介動物、対象の人の範囲での増加がみられる事象(仮訳)」Newly recognized, newly evolved or occurred previously but have shown an increase in incidence or expansion of geographical, vector or host range であり、1990年代から、注目されていたが、特に近年、増加しており、世界的課題となっている。鳥インフルエンザ、SARS(重症急性呼吸器感染症)、MERS(中東呼吸器症候群)も新興感染症である
  • 2002―3年に中国南部、ベトナムを中心に発生したSARSコロナウイルスによる重症急性呼吸器症候群(Severe acute respiratory syndrome; SARS)により、37ヶ国で8096人が感染し、774人が死亡した(致命率9.6%)(WHO)。また、2005年の鳥インフルエンザでは、ニワトリの死亡が大きな問題ではあったが、ヒトへの感染が広がり、世界的な流行を起こした。ヒトの死亡率は、60%程度である。

(WHO緊急事態宣言)

  • これらの新興感染症の流行に対応するために、WHOは2005年に世界保健規則を改訂し、緊急事態宣言の4つのクライテリアを設けた。
    ①そのイベントの公衆衛生的インパクトが高そうか?
    ②通常でないものか想定を超えるものか?
    ③国際的に広まる可能性があるか?
    ④旅行や貿易制限が必要になるか?
    4つ中2つのクライテリアを「満たす場合には各国はWHOに報告する必要があり、これを受けて、WHOは、緊急事態宣言をするか決定する。
  • 直近の緊急事態宣言は2019年7月のコンゴ民主共和国のエボラウイルス病(約3400人の感染者と約2200人の死亡者)に対してであった
  • 2005年以後、世界では、新たな感染症への警戒が高めていた。この時に発生したのが、2009年の豚インフルエンザ(新型インフルエンザ)であった。メキシコから発生し、その流行が世界に広まったものであった。WHOは、この新型インフルエンザに対して、早期に緊急事態宣言を行った。しかしながら、この新型インフルエンザは、感染性はとても高いが、死亡率は、通常のインフルエンザと同じ程度であった。緊急事態宣言により、旅行や貿易制限のために、損害を被った業界からの批判が強かったといわれる。その後、WHOとしても、この緊急事態宣言へ消極的になったと言われる。


(グローバルヘルスセキュリティ:Global Health Security Agenda)

  • GHSAは、2011年のアメリカ合衆国のオバマ大統領が国連演説で触れたもので、2013年の西アフリカでのエボラ出血熱の流行により、その重要性が世界に認められたものである。エボラ出血熱などの生物学的脅威を防止、検出、および迅速に対応するための世界的な能力を確立するための即時行動の緊急性を強調している。グローバルヘルスセキュリティアジェンダ(GHSA)は2014年に開始され、感染症の脅威から世界を安全かつ確実に前進させ、世界中の国々を結集して新しい具体的な取り組みを行い、グローバルヘルスセキュリティを国家指導者レベルの優先事項とされた。 G7は2014年6月にGHSAを承認した。
  • 具体的な活動パッケージとしては:
    【USAID】https://www.thecompassforsbc.org/sbcc-tools/ghsa-action-packages
    ■予防1:抗菌薬耐性
    ■予防2:人獣共通感染症
    ■予防3:バイオセーフティとバイオセキュリティ
    ■予防4:予防接種
    ▶検出1:検査システム
    ▶検知2&3:リアルタイム監視(サーベイランス)
    ▶検出4:レポート
    ▶検出5:労働人材開発
    ●対応1:緊急オペレーションセンター
    ●対応2:公衆衛生と法律および多部門にわたる迅速な対応の関連付け
    ●対応3:医療対策および人員配置

(今回の新型コロナ感染症の想定外だったこと)

  • 世界的には、新コロナウイルス感染症のような新興感染症流行に対しての戦略、対策、具体的な行動計画は作られていたが、新コロナウイルスは、これらの対策を上回る能力を持っていたといえる。
  • 無症状の感染者が予想以上に多かったことが挙げられる。通常、感染症は症状が出てから、ヒトに感染するものであり、症状のある人や感染者の体液等に触れることにより、感染する。
  • これまでは、途上国での感染の流行拡大を抑える視点での対策であり、医療体制が不十分である国への支援、先進国への拡大を防ぐというのが主な戦略だったが、今回のように先に、先進国での感染爆発が拡がることは予想できなかった。




2020.04.17
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師

新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について(8)

1.世界の感染状況
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  • 世界的な新規陽性者数は、全体的に減少傾向、4/20現在、アメリカ合衆国の数が、ヨーロッパの総数を超えた。現在、アメリカ大陸では、中南米(ブラジル、チリ、ペルー)での増加傾向がみられる。
  • アメリカ合衆国の新規陽性者数の増加は、継続している。(ニューヨーク州は減少しているが、他の州ミシガン州等では増加)


▶アジアの国々

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  • ベトナム、ラオス、カンボジアは、ここ3-4日間は、新規陽性者はなし。
  • 東南アジアでは、シンガポールが多く、減少傾向はみられない。
  • タイは、漸減している。
  • インドネシアは、相変わらず増加傾向。



2.日本、東京都国内感染状況

▶日本全体:2020年4月20日現在

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▶東京都:2020年4月20日現在

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(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)
  • 全国規模では、毎日の新規陽性者数の増加はないものの、東京、大阪を中心とした都会において、継続して増加中、また、死亡者も増加している。
  • 東京都でも、毎日の新規陽性者数は、継続して7日間100例を数える。



3.検査について
  • COVID-19の検査には2種類あり、病原体のウイルス(抗原:遺伝子)の存在を直接測定する抗原検査とウイルス(抗原)に対してこれを殺すために人間が産生するもの(抗体)を測定する抗体検査がある。
  • 抗原検査の代表的なものが、現在行われているPCR検査(Polymerase Chain Reaction:ポリメラ-ゼ連鎖反応の略で、DNAの複製を人工的に繰り返すことで目的とするDNAを増やす技術)であり、新型コロナウイルスの感染が疑われるヒトの検体(気管支吸引液もしくは喀痰、鼻咽頭ぬぐい液等)から遺伝子を抽出し検査するものである。プロセスとしては、①ウイルスの遺伝子RNA抽出、②RNAをDNAに返還、③PCRによる増幅、④ウイルスの同定 というものである。リアルタイムPCRと呼ばれている。
  • 抗原の遺伝子検査法には、これとは別に核酸増幅法(LAMP法)がすでに開発、新型コロナウイルス用遺伝子検出キットとして販売(4/15)されており、この方法は遺伝子抽出をする必要がなく、短時間でできる方法である。(リアルタイムPCR法が4-6時間に対して2時間)
  • ウイルス抗体検査では感染初期(通常)に出現するIgM抗体検出、感染後期(通常は感染後1週間からの10日)に出現するためIgG抗体検出がある。イムノクロマト検査法は、遺伝子検査に較べて短時間でできるため(10分程度)、迅速簡易検査と呼ばれている。PCR法に較べて、血液を一滴たらすだけで検査でき、検査の手技としても容易であり、短期間に多くの人を検査することが可能である。また、これらの検査により、IgM抗体、IgG抗体が両方、同時に計測可能であり、便利である。
  • ただし、COVID-19の場合には、現時点では、これらのIgM抗体、IgG抗体の出現の時期が、不十分に定まっていないため、陰性であった場合でも感染の可能性は否定できない。(擬陽性の可能性:感度30-80%)



4.在日外国人は、COVID-19の診療を無料で受けられるか?
  • 新型コロナウイルス感染症は、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MARS(中東呼吸器症候群)、鳥インフルエンザが属する二類感染症と考えられ、医療に関しては、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法)」の適応をうける。
  • COVID-19と診断され、公衆衛生目的で入院になった時は、「感染症予防法」の適用を受け、入院治療費は公費負担になります(入院勧告)。
    また、PCR検査も、必要と認められて受けた場合は、無料になります。(ただし世帯の所得によって、月額2万円を限度として、一部負担があります。)
    しかし、入院に至るまでの検査費用や、入院が必要と判断されなかった場合の費用は公費負担になりません(健康保険加入者は3割負担、非加入者は10割負担)。
    この措置は、国籍、在留資格の種類や有無、健康保険加入の有無にかかわらず、適用になります。
  • 参照:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律


https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=410AC0000000114


2020.04.21
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師

新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について(9)

1.世界の感染状況

*統計データは、WHO Situation Reportを使用。(グラフを作成)
*域は、WHOの分類による。西太平洋地域には、日本、中国、韓国、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ラオス、カンボジアなど、東南アジア地域には、タイ、マレーシア、インドネシア、ミャンマーなど、東地中海地域には、イラン、サウジアラビア、パキスタン、地中海沿岸のアフリカの国々などが含まれる。

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▶アジアの国々

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  • 世界的な新規陽性者数は、全体的に減少傾向が継続するも、中南米及び東地中海地域の増加傾向がある。
  • アジアの国々(西太平洋地域、東南アジア地域)の新規陽性者の増加率減少している。(絶対数として、ヨーロッパやアメリカの1/10程度であり、シンガポール、インド以外では感染爆発は見られていない。)
  • ラオス、カンボジアは10日間、ベトナムでは6日間、新規陽性者は出ていない。
  • 東南アジアでは、シンガポールが多く、新規陽性者は軽度の減少傾向がみられる。
  • タイは、漸減している。
  • インドネシアは、新規陽性者の増加率は同程度である。



2.日本、東京都国内感染状況

▶日本全体:2020年4月23日現在

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▶東京都:2020年4月23日現在

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(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)
  • 全国規模では、毎日の新規陽性者数の増加はないものの、東京、大阪を中心とした都会において、継続して増加中。また、死亡者も増加している。
  • 東京都の新規陽性者数は、継続して7日間100例を数える。ただし、先週の増加率より、減少しており、緊急事態宣言による外出自粛の効果は出ていると考えられる。
  • 東京都の区別の新規陽性者数は、世田谷区(314)、港区(224)、品川区(141)、新宿区(114)、目黒(102)、大田区(100)が100例を超える。(4/22)
  • 都営地下鉄4路線のラッシュアワー時(7時半から10時半)の自動改札出場数の率は、4/13-17は、1/20-24 に比較して、約65%の減少。



3.水際対策について
  • 新型コロナウイルスのような新興感染症の対策には、予防、診断、隔離、治療があるが、予防の中の一つとして、水際対策がある。国外からの入国者に対してサーモグラフなどによる発熱の確認、インタビュー及び検査等を行い、感染者を確認し、国内への侵入を阻止しようというものである。
  • 新型コロナ感染症の中国での流行が明らかになった時点では、日本での水際対策は、厳重なものではなく、ある程度入ってくることは許容し、感染者の中の重症者を治療し、死亡率を下げるというものであった。新型コロナウイルス肺炎は、潜伏期間が長く、多くが軽症で、無症状の感染者もいることから、水際での封じ込めは困難だという認識があったと思われる。韓国、ヨーロッパ、アメリカも、渡航制限をかけることによる経済的損失をさけるために同様な水際対策を取ったと思われる。
  • 2009年の新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の時にも、当初は厳重な水際対策(関西の修学旅行からの帰国者のホテル隔離)を行ったものの、症状が軽いものが多かったり、発熱のない例も多く、不十分であるとの指摘もあった。結果的に新型インフルエンザは、大きな問題となることもなく、水際対策は必要ないとの認識となった。この時の新型インフルエンザの死亡率は、0.2%であり、早期に広範囲な学校閉鎖を行うなどして、初期の流行を一旦封じ込めたことが奏功したと言われている。
  • ヨーロッパおよびアメリカでの感染爆発により、世界中の国々は、迅速かつ厳重な水際対策への取り組みをすることとなった。特に途上国は、自国の医療体制に不安が多いところが多く、この動きに拍車をかけたと考えられる。
  • 中国、韓国、台湾では、入国者への全員の隔離もしくは、PCR検査による確認を行い、14日間の隔離を行うことにより、感染者数の減少に成功し、ベトナムも当初から、厳重な入国制限により、感染の封じ込めに成功している。
  • 現在日本で取られている水際対策は、中国、韓国、ヨーロッパ諸国、米国、エジプト、インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、イスラエル、カタール、コンゴ民主共和国、バーレーンからの渡航者に対して、検疫法での隔離・停留が必要な場合のほか、検疫所長が指定する場所(自宅等)において14日間の待機をすることとなっている。現在では、これらの渡航者に対して全員にPCR検査行い、陽性者に対しては近隣のホテルなどでの14日間の隔離・観察を行っている。
  • 慶応大学病院が実施した、入院や手術前の患者へのPCR検査の結果、約6%の人が陽性だったことが判明し、市中の感染を反映していると報告された。東京の住民の6%というのは妥当な数ともいえる。今後行われると考えられる地域住民の抗体検査により、実際の日本の感染率が明らかになると思われる。
  • 各国の水際対策により、大幅に航空機の運航は少なくなり、入国者が激減し、入国者へのチェック、検査も可能となっている。
  • 日本の多くの地域においては、すでに新型コロナ感染は蔓延していて、無症状者、軽症者からの感染が中心となりつつあると考えられるので、すべての人がソーシャルディスタンスに取り組むことにより、感染の拡大の速度を軽減することが可能となる。
  • 外からの新たな新型コロナ感染者を入れないという水際対策と国内の感染者から他への人に感染させないというソーシャルディスタンス対策が現在の予防対策の大きな戦略となっている。
  • 参照:「国内感染は始まっている。死亡者数の最小化を最大の目標に」~新型ウイルス対策で元WHO幹部が提言 2020/2/13


https://news.yahoo.co.jp/byline/egawashoko/20200213-00162972/


2020.04.24
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師

新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について(10)

1.世界の感染状況

*統計データは、WHO Situation Reportを使用。(グラフを作成)
*域は、WHOの分類による。

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  • 世界的には、新規陽性者数の減少はなく、累積数は増加を続けている。
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  • ヨーロッパの新規陽性者の数は、減少傾向にある。
  • アメリカ大陸の新規陽性者の数の増加は、アメリカ合衆国の増加(ニューヨーク州以外の州)と中南米の国々(メキシコ、ブラジル、ペルー、エクアドル)の増加による。
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  • 西太平洋地域には、日本、中国、韓国、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ラオス、カンボジアなど、東南アジア地域には、インド、タイ、マレーシア、インドネシア、ミャンマーなど、東地中海地域には、イラン、サウジアラビア、パキスタン、地中海沿岸のアフリカの国々などが含まれる。
  • 東地中海地域の増加は、イラン、サウジアラビア、UAE,、パキスタンの新規陽性者の増加による。
  • 東南アジアの新規陽性者の増加は、インドの増加が著しく、他の地域は減少傾向である。
  • 西太平洋地域に国々に含まれる増加率の減少がみられる。
  • アフリカ地域の新陽性者の増加は見られていない。


▶アジアの国々

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  • シンガポールの新規陽性者の増加数が減少傾向になっている。
  • タイは、漸減している。
  • インドネシアは、新規陽性者の増加率は同程度の割合で増加している。



2.日本、東京都国内感染状況

▶日本全体:2020年4月27日現在:厚生労働省データをまとめた東洋オンラインデータから、グラフ作成

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▶東京都:2020年4月27日現在

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(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)
  • 全国規模及び東京において、新規陽性者数の減少傾向となってきた。
  • 緊急事態宣言による全体の接触数の減少の効果が表れつつあるといってよいが、今後の継続が必要であるといえる。



3.新型コロナウイルス感染症 濃厚接触者の定義の変遷
  • 4月20日:「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」の感染可能期間(新型コロナウイルス感染症を疑う症状を呈した 2 日前から隔離開始までの間)に接触した者のうち、次の範囲に該当する者である。
    ①患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者。
    ②適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者。
    ③患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者。
    ④ その他: 手で触れることの出来る距離(目安として 1 メートル)で、必要な感染予防策なし(マスク等)で、「患者(確定例)」と 15 分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)。
  • 2月6日:「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」が発病した日以降に接触した者のうち、次の範囲に該当する者である。
    ①新型コロナウイルス感染症が疑われる者と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者。
    ②適切な感染防護無しに新型コロナウイルス感染症が疑われる患者を診察、看護若しくは介護していた者。
    ③新型コロナウイルス感染症が疑われる者の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者。
    ④その他: 手で触れること又は対面で会話することが可能な距離(目安として2メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と接触があった者(患者の症状やマスクの使用状況などから患者の感染性を総合的に判断する)。
  • 1月17日:「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」が発病した日以降に接触した者のうち、  次の範囲に該当するものである。
    ①世帯内接触者:「患者(確定例)」と同一住所に居住する者。
    ②医療関係者等: 個人防護具を装着しなかった又は正しく着用しないなど、必要な感 染予防策なしで、「患者(確定例)」の診察、処置、搬送等に直接係わった医療関係者や搬送担当者。
    ③汚染物質の接触者: 「患者(確定例)」由来の体液、分泌物(痰など(汗を除く))などに、必要な感染予防策なしで接触した者。
    ④その他: 手で触れること又は対面で会話することが可能な距離(目安として2メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と接触があった者等。
  • 参照:感染症研究所
  •  

https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov.html

4.新型コロナウイルス感染症 軽症者への対応の変更 (厚生労働省)
  • これまでは、COVID-19感染確認者は、症状の軽症、重症を問わず、病院での治療がされていたが、今後の感染者の増加により、重症者のベッドを確保が難しくなり、軽症者は、今後は宿泊施設や自宅での療養することとなる。
  • 軽症者の中で、
    ①高齢者
    ②基礎疾患がある者(糖尿病、心疾患又は呼吸器疾患を有する者、透析加療中の者等)
    ③免疫抑制状態である者(免疫抑制剤や抗がん剤を用いている者)
    ④妊娠している者であっても重症化のおそれが高くなく、医師が入院の必要がないと判断した場合は、宿泊施設や自宅での療養の対象者となる。
  • 宿泊療養になった場合には、都道府県が用意する宿泊先に移動し、PCR検査が2回連続で陰性になるまで(基本的には14日ぐらいであるが、陰性化まで長くなることもある)、療養する。
  • 軽症者の判断は及び宿泊所の退所は、入院中の医療機関又は帰国者・接触者外来等の検査を受けた医療機関の医師が判断する。
  • 宿泊施設に滞在する間は外出はできないが、食事は宿泊施設で用意され、経費の負担はない。ただし、個人的なタオルなどの日用品は自分で用意する必要がある。
  • 軽症者に対しては定期的な健康状況を確認する。宿泊療養の場合は宿泊施設に配置された看護師等が、自宅療養の場合には保健所(又は保健所から依頼された者)が、状況を確認し、症状に変化があった場合には、医療機関と連携し、必要な医療が受けられるようにし、症状に応じて、必要な場合には、入院させる。
  • 参照:厚生労働省
2020.04.28
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師

新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について(11)

1.世界の感染状況

*統計データは、WHO Situation Reportを使用。(グラフを作成)
*地域は、WHOの分類による。西太平洋地域には、日本、中国、韓国、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ラオス、カンボジアなど、東南アジア地域には、タイ、マレーシア、インドネシア、ミャンマーなど、東地中海地域には、イラン、サウジアラビア、パキスタン、地中海沿岸のアフリカの国々などが含まれる。

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▶アジアの国々:

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  • 世界的な新規陽性者数は、全体的に減少傾向から、増加傾向となっている。この原因はロシアにおける増加が主要因である。
  • アジアの国々(西太平洋地域、東南アジア地域)の新規陽性者の増加率は減少している。インドでの継続した増加が目立つ。
  • ラオス、カンボジア、ベトナム、東ティモールでは新規陽性者は出ていない。タイ、マレーシアでも新規陽性者は少なくなっている。
  • インドネシアは、新規陽性者の増加率は同程度である。



2.日本、東京都国内感染状況

▶日本全体:

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▶東京都:

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(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)
  • 全国規模では、毎日の新規陽性者数は減少しつつある。
  • 東京都も新規陽性者数は、減少している。
  • 緊急事態宣言による外出自粛の成果は出ている。



3.新型コロナウイルス ワクチンと治療薬
  • 新型コロナウイルス感染症対策には、予防と治療がある。予防に一番効果があり重要なのがワクチンであり、これを接種・投与することにより、発症を防ぐことができる。治療薬は、症状が出た後に投与することにより、症状の軽減や、重症化を防ぐことができ、感染症による死亡を減少させることができる。
  • ワクチンや治療薬を認可するための治験には、臨床治験第1相(フェーズ1)から第3相(フェーズ3)までのステップが必要である。フェーズ1は少人数の健康成人への投与による安全性の確認、フェーズ2は少人数の患者さんへの投与による有効性と副作用の確認、フェーズ3は多数の患者による有効性と副作用の確認である。これを倫理的に正しく実施されなければならない。



(ワクチン)

  • 4月13日現在、世界保健機関(WHO)によると、世界で開発中の新型コロナウイルスワクチンは70種類に上り、うち3つは既に臨床試験が行われており、有望とされている。
  • 第1番目が中国の康希諾生物と中国人民解放軍の軍事科学院軍事医学研究院生物工程研究所が共同開発したワクチンで、フェーズ2が実施されている(4/15)。
  • 第2番目が米国立衛生研究所(NIH)がNIHの一部門である国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)と米バイオベンチャーのモデルナが協力して開発したmRNAワクチン「mRNA-1273」であり、フェーズ1が実施されている。(3/16)。ClinicalTrials.govに登録されている情報によると、mRNA-1237のフェーズ1試験は18~55歳の健康な男女45人が対象である。
  • 第3番目が米イノビオ・ファーマシューティカルズが開発したDNAワクチン「INO-4800」で、フェーズ1が実施されている(4/6)。健康成人40人に4週間隔で2回ワクチンを投与するもので、今夏の終わりまでにデータが出る見込みである。
  • 日本企業では、アンジェスと大阪大学がDNAワクチンを共同で開発中。タカラバイオが製造面で協力し、化学大手のダイセルが有効性を高めるための新規投与デバイス技術を提供。現在は非臨床試験を実施中である。


(治療薬)

  • 新型コロナウイルスの治療薬としては、現時点では効果が科学的に確認されたものはない。しかし、他の病気の薬や、開発中の薬について、世界中で少なくとも109件の臨床試験が進行している。その中で有望なのが、レムデシビルとファビラビル(アビガン)と言われている。
  • レムデシビルはもともとエボラ出血熱の治療薬として開発されていた抗ウイルス薬。コロナウイルスを含む一本鎖RNAウイルスに対して抗ウイルス活性を示すことが明らかになっており、COVID-19の治療薬として最も有望視されている薬剤の1つだった。中国においての臨床治験が実施されており、4月29日のオンラインのランセットに第1報が報告された。
  • 結果としては以下のようであった。中国、湖北省からの報告。酸素吸入が必要な中等症の患者が対象。158人にレムデシビルを、79人に偽薬を投与。臨床症状を6段階(1は退院、6は死亡)で評価し、2段階以上の改善、もしくは退院までの期間を評価した。その結果、レムデシビルによっても、回復が早くなるという結果は得られなかった。ただ、発症して10日までにレムデシビルを投与した患者では、統計的に有意ではないが、50%程度、回復が早まる傾向はみられたので、より大規模な臨床試験が必要である。
  • 同じ、4月29日より、米国立衛生研究所(NIH)は、抗ウイルス薬・レムデシビルの投与により、新型コロナウイルスによる肺炎で入院した患者の回復までの期間がプラセボに比べ31%有意に速かったとの予備的解析の結果を発表した。1063例の患者を登録して実施された「ACTT」試験の予備的データ解析によるもの。このほか、レムデシビルの投与により、死亡率が低下する傾向も示されたとしている。
  • ファビピラビル(アビガン)は2014年に日本で承認された抗インフルエンザウイルス薬で、インフルエンザウイルスの遺伝子複製酵素であるRNAポリメラーゼを阻害することでウイルスの増殖を抑制する薬剤である。エボラ出血熱にも効果があると言われている。しかしながらレムデシビルより高濃度が必要で、催奇形性があるため妊婦には使えない。現在、日本において治験が実施されている。現在では、新型インフルエンザが発生した場合にしか使用できないため、市場には流通していないが、新型インフルエンザに備えて国が200万人分を備蓄しているとともに、富山化学での増産が開始されている。 今回の新型コロナウイルス感染者に対する臨床研究においては、240名の中等症患者を無作為に120名ずつの2群に分け、1群にはアビガンを、他の1群にはアルビドールを投与した。7日目の回復率を、解熱、呼吸の正常化、血中酸素濃度の正常化、咳の消失から判定した。その結果、アビガン投与群では71.43%が、アルビドール投与群では55.86%が回復し、アビガンの方が統計的に見て有意に高い治療効果を示した。一方、アビガン投与群では、肝機能検査異常、尿酸値上昇、消化管症状、精神症状の発生率が、アルビドール投与群より高かった。
  • 他にも多くの薬剤が研究開発されているが、まだ、決定的なものは出ていない状態である。
  • 参照:感染症研究所
  •   ・新型コロナワクチン、3種が臨床試験段階-世界で70種開発中(WHO)


https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-04-13/Q8PR5QT1UM1401

  •  
  • ・新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】(4月24日UPDATE)AnswersNews - 製薬業界で話題のニュースがよくわかる


https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17853/

  •  



  • ・A randomised, double-blind, placebo-controlled, multicentre trial.


https://marlin-prod.literatumonline.com/pb-assets/Lancet/pdfs/S0140673620310229.pdf

  •  
  • Wang et al., Remdesivir in adults with severe COVID-19: Lancet 4月29日オンライン公開



  • ・山中伸弥による新型コロナ情報発信


https://www.covid19-yamanaka.com/cont4/23.html

  •  
  • ・Favipiravir versus Arbidol for COVID-19: A Randomized Clinical



Trialhttps://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.17.20037432v2

2020.05.01
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師

新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について(12)

1.世界の感染状況

*統計データは、WHO Situation Reportを使用。(グラフを作成)
** 地域は、WHOの分類による。西太平洋地域には、日本、中国、韓国、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ラオス、カンボジアなど、南東アジア地域には、インド、タイ、マレーシア、インドネシア、ミャンマーなど、東地中海地域には、中東、イラン、サウジアラビア、パキスタン、地中海沿岸のアフリカの国々などが含まれる。

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  • 5/11のデータは、アメリカ集計数の訂正のため、数値として減少
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▶アジアの国々:

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  • 世界的な新規陽性者数は、増加傾向にはない。アメリカ合衆国の陽性者数の継続、ロシアの爆発的流行、中東諸国の増加(サウジアラビア、クウェート、UAEなど)、南米アメリカの増加(ブラジルの爆発的流行、ペルー、チリ)がみられる。また、ヨーロッパでは、イタリア、フランス、スペイン、ドイツの新規陽性者数の減少が続いている。
  • 西太平洋地域、南東アジア地域では全体的に新規陽性者は減少傾向となっているが、インド、パキスタン、バングラデシュでの増加傾向がみられている。
  • ラオス、カンボジア、ベトナム、東ティモールでは新規陽性者は出ていない。タイ、マレーシアでも新規陽性者は少なくなっている。
  • ンドネシアは、新規陽性者の増加率は同程度である。



2.日本、東京都国内感染状況

▶日本全体:

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▶東京都:

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(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)
  • 全国規模では、毎日の新規陽性者数は減少しつつある。
  • 全国規模では、東京などの大都市も含め、明らかに毎日の新規陽性者数は減少しつつある。
  • 5月11日現在、東京15、北海道10、神奈川7、千葉3、埼玉2、石川2、大阪府1、兵庫1、愛知1、兵庫1、岡山1であり、その他の府県は新規陽性者が出ていない。



3.コロナ対策「日本モデルは」は有効か?
  • 中国、欧米で取られているロックダウンによるアプローチと、日本がとったアプローチ「日本モデル」は異なっている。
  • 現時点においては、日本におけるCOVID-19の感染確認者数や死亡者数が比較的少ないいことから、「日本モデル」が機能している証拠と見なすことができる。「日本モデル」は、一定レベルの経済活動を可能にし、人々が比較的自由に動き回れるようにすることから、ロックダウンなどの負担の大きいモデルよりもCOVID-19との長期的戦いのための実行可能な戦略となると考えられる。
  • 「日本モデル」のベースは、クラスターアプローチであり、これまでもエボラ出血熱の流行等で取られている方法であり、クラスターの感染者の同定、隔離、接触者の追跡を行うものである。今回の流行時の中国疫学調査からも得られたものであり、感染者の爆発的な増加は、クラスターを形成する特定の感染者からの高い感染性の結果であるという考え方である。対策として、2020年2月の北海道でも取られたこのクラスターアプローチが全国的に採用され、現在でも実施されている。
  • 「日本モデル」のもう1つの鍵は、3Cと呼ばれるソーシャル・ディスタンス(社会的距離)を取るアプローチである。3Cとは、通風の悪い閉鎖空間、近くに多くの人がいる混雑した場所、近距離の会話などの密接な環境を指し、緊急事態宣言に基づいた「外出自粛」によって達成しようとしたものである。これにより、東京では、銀座、渋谷、新宿などの通常は混雑する場所の混雑率が70%減少し、交通機関は動いているにかかわらず、乗車率が通常の30%いかになるという成果が出された。
  • 「日本のモデル」の根底には、欧米とは違った日本の習慣がある。日本では花粉症に苦しむ人が多く、マスクを着用する習慣は広く行われていること、握手、抱き合ったりキスしたりするなどの身体的な接触は、日本の伝統的な挨拶の一部ではないこと、密集した通勤電車などでの会話はマナーが悪いと考えられることなどがある。これらはまた、人々が飛沫によってウイルスに感染する可能性を制限するのにも役立つと言える。
  • クラスターアプローチと3C戦略による対策は、中国、欧米でのロックダウンとは異なり、工場の操業および他の特定の経済活動は制限の下で許可され、海外の観点からも緩やかに見えるかもしれないが、クラスターの発生源を閉鎖し、感染経路をブロックすることにより、非常にうまく機能していると言える。
  • 日本のCOVID-19 対策の弱点として検査数の少なさが指摘されている。しかしながら、基本的には、ある程度の感染は許容し、重症者に焦点をあてて、死亡者を減らすという戦略は変わっていないため、PCR検査も重症化の可能性がある者に制限している。PCRテストの数は非常に少なく、現在でも1日に10,000未満である。PCR検査の時間が4時間かかる事、検査をする人材が十分でないことがその理由と言える。今後、現在のPCR検査に変わる、より迅速にできる検査方法が承認される見込みであり、同じ人材、時間内での検査数の増加が期待される。ただ、必ずしも検査件数を増やすことは、現在の戦略の中でも重要とは、言えない。実際、欧米では、その感染者数が多いことから、軽症者には検査は行っていない。



  • 参照:COVID-19 Strategy: The Japan Model JAPAN TIMES 4/24
  •   ・

https://www.japantimes.co.jp/opinion/2020/04/28/commentary/japan-commentary/covid-19-strategy-japan-model/#.Xrm-22j7Rhg

2020.05.12
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師

新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について(13)

1.世界の感染状況

*統計データは、WHO Situation Reportを使用。(グラフを作成)
** 地域は、WHOの分類による。西太平洋地域には、日本、中国、韓国、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ラオス、カンボジアなど、南東アジア地域には、インド、タイ、マレーシア、インドネシア、ミャンマーなど、東地中海地域には、中東、イラン、サウジアラビア、パキスタン、地中海沿岸のアフリカの国々などが含まれる。

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  • 5月10日のデータは、調整のため。
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▶アジアの国々:

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  • 世界の累積のCOVID-19陽性者数は、漸増している。また、新規陽性者数も増加傾向に転じている。主に米国の再度の増加傾向、ロシアの流行増大傾向、南米(ブラジル等)、地中海沿岸、中東の国々(サウジアラビア、クウェートなど)、また、ヨーロッパでは、イタリア、フランス、スペイン、ドイツの新規陽性者数の減少が続いているものの、夏季バカンスに向けての外出制限の撤廃の方向による再拡大が心配される。
  • 東南アジア地域では全体的に新規陽性者は減少傾向となっており、フィリピン、シンガポール、インドネシアを除き、一日の新規陽性者が100人以下となっている。
  • 南アジア地域では、インド、パキスタン、バングラデシュでの新規陽性者の増加傾向が継続している。



2.日本、東京都国内感染状況

▶日本全体:

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▶東京都:

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(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)
  • 全国規模では、東京などの大都市も含め、明らかに毎日の新規陽性者数は減少しつつある。
  • 東京、北海道、神奈川などを除き、大阪、京都、兵庫等の緊急事態宣言も解除される方向となっている。



3.日本の新型コロナ死亡者が欧米より少ない理由、高齢者施設でのケアの実態
  • ヨーロッパにおけるCOVID-19による死亡者が多い原因として、通常、医療的なケアは行われていない高齢者施設(介護関連施設)におけるクラスターが指摘されてきた。
  • 米国でも高齢者施設がクラスター化している例の報告が多く、報道(2020年4月20日)によれば、全米の死者の5分の1を占める約7000人に上るという。
  • ヨーロッパは介護関連施設(細かくはいろいろ区分があるが本稿では高齢者施設とする)が充実している。そして北欧では介護従事者の数も多い。高福祉国家の面目躍如といったところであろうか。
  • 海外に比べ、日本は病院以外の高齢者施設が少ない。世界一高齢者の比率が高い国でなぜこれが成り立っていたかというと、病院に高齢者が入院していたからである。すなわち、病院が高齢者施設の代わりをしているのは「日本の特殊性」ということになる。さらにいえば、急速な高齢化に伴い高齢者施設を増やしており、かつ日本の医療保険制度や介護保険制度を見習っている韓国でも同じように、病院が高齢者施設を代替している。ちなみに韓国も日本と同様、人口当たりの死亡者数が少ない。
  • このような背景に加え、老人の医療費自己負担額が極めて低かったこともあり、患者が望む間は、病院で面倒を見るという「社会的入院」という事象が生まれた。現在も、「医療介護連携」が叫ばれ、医療と介護の連続性が比較的保たれている。例えば、介護老人保健施設(老健)には医師が常駐しているし、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)においても契約している医師がおり、定期的に診察に訪れる。その他の高齢者対応の集合住宅も同様に定期的に訪問診療が行われるなど、医療の役割が充実している。日本の高齢者施設に新型コロナのクラスター感染が少なく、死亡者数が少ない理由は、介護施設従事者が必ずしも得意ではない感染管理に対して、医療従事者からのアドバイスがあったことが大きいのではないかと考えられる。
  • 医療崩壊を起こさずにピークアウトした韓国は、近年の急速な高齢化に伴い、高齢者対応施設を36.1%増加させているが、その中で療養病床を急速に増加させ、高齢者対応に占める病院の割合は60%以上と世界最大である。
  • 欧米では、スウェーデンなどで見られるように、日本に比べると、欧米では高齢者施設から病院への搬送が少ないことが想像される。また、海外では総じてICU(集中治療室)への入室基準が厳しく、特に北欧などでは、高齢者はICUで治療を受けることが難しい。
  • 高齢者医療施設でのケアがアジア(日本、韓国等)での死亡率の低さに貢献している可能性は高い。
  • 参照:真野俊樹:中央大学大学院戦略経営研究科教授、医師
  •   ・

https://diamond.jp/articles/-/236988?page=2

4.合唱練習による暴露後の高いCOVID-19感染率
  • 米国における感染爆発が世界的に広く報道される前の2020年3月17日、ワシントン州スカジット郡合唱団のメンバー122名の合唱団におけるクラスターに関する報告である。
  • 3月10日の合唱練習に参加した61人のうち、それ以前に症状があった1名を含め、53例に症状が出現し、33例が検査によって確認された。この53人のうち3人が入院し(5.7%)、2人が死亡した(3.7%)。
  • 2.5時間の歌唱練習では、メンバーが互いに近くに座ったり、おやつを共有したり、練習の最後に椅子を積み重ねたりするなど、飛沫と家族の伝染の機会がいくつかあった。歌うこと自体が、発声の音量に影響されるエアロゾルの放出による伝達に寄与した可能性があったと考えられる。
  • 発話中に通常より多くのウイルスを(エアゾール粒子)放出するスーパーエミッター(スーパー感染者)と呼ばれる特定の人が、これに寄与した可能性がある。他の人との直接の接触を避け、グループとして集まらず、混雑した場所を避け、少なくとも6フィート(1.8メートル)の物理的な距離を保ち、感染を減らし、マスクをするというソーシャルディスタンスをする必要がある。
  • クルーズ船、ライブハウス等でのクラスターの発生でも指摘されているように、三密によるCOVID-19 の強い感染性は明らかである。
  • 参照:
  • ・High SARS-CoV-2 Attack Rate Following Exposure at a Choir Practice -- Skagit County, Washington, March 2020 Weekly / May 15, 2020 / 69(19);606-610


https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/mm6919e6.htm?s_cid=mm6919e6_e&deliveryName=USCDC_921-DM28272

2020.05.20
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師

新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について(14)

1.世界の感染状況

*統計データは、WHO Situation Reportを使用。(グラフを作成)
*地域は、WHOの分類による。西太平洋地域には、日本、中国、韓国、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ラオス、カンボジアなど、南東アジア地域には、インド、タイ、マレーシア、インドネシア、ミャンマーなど、東地中海地域には、中東、イラン、サウジアラビア、パキスタン、地中海沿岸のアフリカの国々などが含まれる。

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  • 5月10日のデータは、調整のため。
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▶アジアの国々:

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▶現在、増加して(感染爆発)いる国々:

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  • ヨーロッパにおける流行はやや下火になりつつありあるが、世界の累積のCOVID-19陽性者数は、継続して増加している。米国の増加率は減少しているものの感染者数は増加傾向、ロシア、ブラジル、インドでの感染拡大が始まっている。パキスタン、バングラデシュを含む南アジア地域、南米での流行がはじまり、地中海沿岸、中東の国々(サウジアラビア、クウェートなど)でも増加している。中東地域の流行拡大は、外国人労働者として、劣悪な住居状況にいる人たちの間での流行である。
  • ヨーロッパや米国におけるロックアウトの解除、夏のバカンスにむけての観光地も開かれることとなり、感染の再拡大の可能性もある。
  • 東南アジア地域では減少状況が継続している。



2.日本、東京都国内感染状況

▶日本全体:

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▶東京都:

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(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)
  • 5月25日、全国で緊急事態宣言解除。増加傾向の見られた北海道、愛媛などでは、医療施設でのクラスターが原因であり、両県とも減少の傾向となっている。5月25日現在では、すべての都道府県において、新規陽性患者数は一桁台となっている。



3.軽症者の社会復帰について
  • 新型コロナに感染し、宿泊施設や自宅で療養した軽症者の職場復帰は、14日療養後に医療保健関係者の判断が必要となる。また、新型コロナに感染した方は、法律により一定期間の就業が制限されている。
  • 発熱や風邪などの症状があったものの、新型コロナと診断されなかった方の職場復帰の目安は、症状が出てから8日後であること、かつ、薬なしで症状がなくなってから3日後である。(日本産業衛生学会)
  • 職場復帰者を会社はあたたかく、迎える必要がある。
  • 復帰者の休める体制作りをする必要がある。保育所や介護施設などでは、利用者の安心・安全のために、従業員に「陰性の証明を出してほしい!」と思うこともあるかもしれないが、「誰もが感染しているかも」「誰もが気づかないうちに感染させているかも」と考えることが大切である。体調不良の従業員は、働かせず、休ませることが必要であり、それが職場での感染拡大防止につながる。
  • 「陰性の証明」の提出を従業員に求めない事が重要である。医療機関や保健所は、医師や保健師が必要と判断した患者さんの対応をする場所であり、従業員が「陰性の証明」のために相談・受診する場所ではない。
  • 自宅で受けられる検査キットの精度は不十分であることを認識する必要がある。世界各国で、簡易的な検査キットが販売され、日本でも宣伝されているが、現時点では、病院で受けるPCR検査と同じくらいの精度での結果は得られず、かかりつけ医は検査キットの質には責任をもてないので、相談をしても十分に対応することは難しい。
  • ※参照:

https://note.stopcovid19.jp/n/n74204fb1d5f1

  •  
  •    コロナ専門家有志の会 今、拡散してほしいこと8 #復帰に備えよう「軽症者が日常生活や職場に戻るとき」



4.外国人は特別定額給付金(給付金)をもらえるか
  • 令和2年4月20日、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」が閣議決定され、感染拡大防止に留意しつつ、簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行うため、特別定額給付金事業が実施されることになった。
  • この10万円給付金の給付対象者は、基準日において住民基本台帳に記録されている者であり、日本国籍を有しない外国人であっても、基準日に住民基本台帳に記録されていれば給付を受けることが可能である。
  • 住民基本台帳とは、住民の氏名、生年月日、性別、住所などが記載された住民票を編成したもので、住民の方々に関する事務処理の基礎となるものである。外国人は、新たに日本に入国する際や、市区町村へ引っ越しをする際に、「在留カード」を持っているのであれば、住まいの市区町村に転入の届出を行う義務がある。
  • 観光やビジネスのためのビザで日本に入国、滞在している短期滞在者、また、在留資格を持たずに日本に滞在している超過滞在者は、住民基本台帳に記録されていないため、給付金の対象とならない。
  • 基準日である、4月27日に、住民基本台帳に記録されている外国人であれば、給付対象となる。
  • 4月27日の基準日に住民基本台帳に登録されていない外国人のうち、帰国困難な状態に置かれている(元)技能実習生、(元)留学生、また、難民申請者の子どもについても、特別定額給付対象とするとの発表があった(5月19日)。技能実習生や留学生で「短期滞在」や「特定活動(3ヶ月)」の在留資格の人は、「特定活動(6ヶ月)」への在留資格変更許可申請を行い、住民基本台帳への登録が必要となる。
  • ※参照:

移住連

  • 市区町村から受給権者宛てに郵送された申請書に振込先口座を記入し、振込先口座の確認書類と本人確認書類の写しとともに市区町村に郵送するか、マイナンバーカード所持者がマイナポータルから振込先口座を入力した上で、振込先口座の確認書類をアップロードし、電子申請することにより、申請できる。
  • ※参照:

総務省

2020.05.27
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師

新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について(15)

1.世界の感染状況

*統計データは、WHO Situation Reportを使用。(グラフを作成)
** 地域は、WHOの分類による。西太平洋地域には、日本、中国、韓国、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ラオス、カンボジアなど、南東アジア地域には、インド、タイ、マレーシア、インドネシア、ミャンマーなど、東地中海地域には、中東、イラン、サウジアラビア、パキスタン、地中海沿岸のアフリカの国々などが含まれる。

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  • 5月10日、20日のデータは、調整のため。
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▶アジアの国々:

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  • ヨーロッパにおける流行はやや下火になりつつありあるが、世界の累積のCOVID-19陽性者数は、継続して増加している。米国の増加率は減少しているものの感染者数は増加傾向、ロシア、ブラジル、インドでの感染拡大が始まっている。パキスタン、バングラデシュを含む南アジア地域、南米での流行がはじまり、地中海沿岸、中東の国々(サウジアラビア、クウェートなど)でも増加している。中東地域の流行拡大は、外国人労働者として、劣悪な住居状況にいる人たちの間での流行である。
  • ヨーロッパや米国におけるロックアウトの解除、夏のバカンスにむけての観光地も開かれることとなり、感染の再拡大の可能性もある。
  • 東南アジア地域では減少状況が継続している。



2.日本、東京都国内感染状況

▶日本全体:

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▶東京都:

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(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)
  • 5月25日、全国で緊急事態宣言が解除されたものの、愛媛、北海道、北九州市などの医療施設でクラスターが発生している。
  • 外国からの入国者の陽性例が増加してきている。陽性者には、14日間の隔離期間を設けている。
  • 東京都の発生数も減少傾向から、多少の増加傾向にある。



3.感染者数「ゼロ」ではなく、死亡者数「ゼロ」を目指す。
  • 日本の新型コロナウイルス戦略は、基本的には、ある程度の感染は受容するが、重症化を防ぎ、死亡例を少なくすることを念頭に対策が行われてきた。しかしながら、3月末から感染者が急増したため、緊急事態宣言が発動された。医療機関の重症者の受け入れ能力を超ええることによる感染爆発が起きることを、防ぐためである。
  • 新型コロナウイルス感染症対策チームが国や自治体に提言してきた『人と人との接触の8割削減』の目標のもとに、多くの国民が外出自粛を行ったことにより、感染者数は劇的に減少し、感染爆発を防ぐことができた。
  • 緊急事態宣言による、人々の外出自粛、経済活動自粛の経済に及ぼす影響は甚大なもので、感染者数の減少等も考慮しつつ、5月25日に全国の緊急事態宣言が解除され、学校の登校が始まるとともに、経済活動が再開された。このような中、複数の医療施設等でもクラスター感染が起き、感染者数の減少傾向も停滞している。
  • しかしながら、ある程度の感染者数の増加は、やむを得ないものであり、感染爆発を起こさないかを慎重に判断し、正常化に向けてのプロセスを進める必要がある。戦略としては、「感染者ゼロを目指すのではなく、死亡者ゼロを目指す」べきである。
  • 今後は、学校においても、段階的にスポーツ活動の開始、他の接触活動も開始されていくことになる。経済的な活動も段階を経て、拡大していき、接触の機会も増大する。
  • このような中、ある程度のクラスターの発生、無症状感染者(病原体保有者)による感染等により、感染者数は増減しながら、次第に減少していくことが予想される。ある程度の割合(厚生労働省:5/8 15547人の陽性者中1143人の7.4%が無症状、海外検疫150名中115名の76.7%が無症状))での無症状感染者がいることから、どのような対策を行っても、完全に感染を防ぐことは困難である。
  • 社会的問題となる可能性があるのは、感染者に対しての「差別」「非難」である。このような「差別」「非難」が起きないようにすることを人々に伝えていく必要がある。特に学校においては、起こりやすいので気を付ける必要がある。
  • 新型コロナウイルスに関してはまだ十分わかってないことが多い。1つは、どれだけ抗体があれば感染を防ぐことができるのか。もう1つは獲得した免疫が、どれほど長持ちしてくれるのか。ということである。これらの研究も進めていく必要がある。
  • 効果的な治療薬ができることにより、死亡者をゼロにすることを目指して、治療薬の開発が行われているが、現時点では、特効薬はまだ発見されていない。
  • ワクチンの開発も行われている。効果的なワクチンが開発されれば、ワクチンをすべての人に接種することにより、行動制限等も必要なくなる。しかしながら、ワクチン開発には通常2年かかると言われている。世界中で開発競争が行われ、早くなる可能性があるものの、1年以上は必要である。
  • もう一つ言われているのが、集団免疫の考え方である。国民のある程度の割合(現在では50-60%以上ぐらいかと推定される。)が感染し、抗体を持つことにより、流行の拡大のリスクが下がると言われている。ただ、そうなるためには、3-4年の年月が必要と考えられる。
  • パンデミックを起こし、まだまだ、世界での感染者の増加傾向が続いている中、新型コロナウイルスとの共存の戦略を練っていく必要がある。
  • ※参照:

https://www.nhk.or.jp/special/plus/articles/20200513/index.html

  •  
  •    新型コロナウイルス 出口戦略



4.2歳未満の子どものマスクは不要、むしろ危険!
  • 日本小児科医会は25日、2歳未満の子どもにはマスクは必要ないとする声明を発表した。呼吸がしにくくなるなど、むしろ危険な場合もあるとし、保護者らに注意を呼びかけている。 小児科医会によると、乳児は呼吸器の空気の通り道が狭いため、マスクの着用は呼吸をしにくくさせ、心臓の負担になるという。
  • マスクそのものや嘔吐(おうと)物による窒息のリスクが高まること、マスクで体内に熱がこもり熱中症のリスクが高まること、顔や唇の色、表情の変化など、体調の異変に気づくのが遅れることなどの健康影響が懸念されると指摘している。
  • 声明では、世界的に子どもの感染例は少なく、重症例もきわめて少ないと説明。学校や幼稚園、保育園でのクラスター(感染者集団)の発生はほとんどないとしている。
  • 世界の新型コロナウイルス小児感染症から、①子どもが感染することは少なく、ほとんどが同居する家族からの感染である。②子どもの重症例はきわめて少ない。③学校、幼稚園や保育所におけるクラスター(集団)発生はほとんどない。④感染した母親の妊娠・分娩でも母子ともに重症化の報告はなく、母子感染はまれである。ということも分かってきた。
  • ※参照:

https://www.asahi.com/articles/ASN5T67CWN5TULBJ008.html

5.新型コロナウイルス感染症に関連する「差別」「偏見」「非難」
  • 社会的問題となる可能性があるのは、感染者及び家族、医療従事者、自粛の中も仕事をせざるをええない人々、新型コロナ診療にアクセスできない在日外国人などの人々に対する「差別」「偏見」「非難」である。
  • 今回の流行の初期に見られた欧米におけるアジア系の人々への偏見は、世界中で報道されている。
  • 日本では、症状があったり、必要なのにもかかわらず、在日外国人ということでPCR検査が受けられないということも起こっている。
  • 医療従事者や宅配配送者やその家族が嫌がられたり、タクシーを拒否されたりすることも報道されている。
  • 学校や職場等において、新型コロナ感染症が起こる可能性は高い。無症状の感染者が多いので、新型コロナウイルスは誰もが感染し得ることと考える必要がある。感染した人々に対して、「予防意識が足りない」「予防対策をしていない」と言って、避けたり、非難すべきではない。
  • 正しい情報を得ることにより、不必要な「差別」「偏見」「非難」は避けるべきである。

※今回で、シェアからの新型コロナウイルス感染症に関する情報提供は、一時休止します。 今まで、本情報を読んでいただき、ありがとうございました。

2020.06.03
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師

1.世界の感染状況

*統計データは、WHO Situation Reportを使用。(グラフを作成)

  • COVID-19の流行の地域的変化としては、中国から発生し、周辺のアジアに拡大したが、感染爆発は見られなかった。しかしながら、ヨーロッパ、米国、イランで流行を起こし、これらは、ヨーロッパ(ロシアも含む)及び米国での感染爆発を引き起こした。
  • 特に米国での感染爆発は、収まる傾向を見せずに、アメリカ大陸に拡大、最も深刻な状況であるブラジルを含め、メキシコ、ペルー、チリでも感染爆発を起こし、その他の南米地域にも拡大している。
  • アジアにおける流行は、一時、タイ、シンガポール、マレーシアで小さな流行を起こしたものの、その後の感染拡大は見られていない。フィリピン、インドネシアでは、流行が継続し、7月に入って、日本での拡大が懸念されている。
  • アジアにおいては、インドにおいても感染爆発が起きており、今後、さらに拡大傾向であり、隣国のバングラデシュ、パキスタンでの流行も継続している。
  • 東南アジアでは、全体的に陽性者数は減少しているが、フィリピン、インドネシアが増加傾向を示している。
  • 中近東においては、最初に流行が始まったイランにおいても継続して感染者が報告されている。その他の中東国であるサウジアラビア、バーレーン、クウェート等での流行が継続している。
  • アフリカでは、6月までは、爆発的感染がおこっていなかったが、南アフリカにおける感染爆発が始まった。
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▶累積新規陽性者数 上位15か国の変移:

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▶アジアの国々:

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2.日本、東京都国内感染状況
  • 東京も含む全国の都会(札幌、仙台、大阪、京都、福岡市等)での増加が明らかであり、4月の第1波に続く、第2波の感染拡大といえる。当初は、20-30代の若者の層が増加していたが、高年齢層にも広がっており、都会では、市中感染が起きていると考えられる。
  • 空港検疫における新規陽性者数の増加傾向が持続している。
  • 全体の陽性者の致死率は、低下傾向である。

▶日本全体:

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(厚生労働省:国内の発生状況)空港検疫における陽性者数も含まれる。



▶東京都:

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(東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細より作成)



▶空港検疫:

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3.世界における抗体検査から、推察できること。

世界的に、また、日本国内でも新型コロナ感染症流行は収まる気配も見せずに、継続していると考えられる。この新型コロナ感染を封じ込めるためには、効果的なワクチンの開発と、ワクチンの接種が必要になるが、なかなか、困難な状況である。世界各国で、感染の把握のために「抗体検査」が行われている。抗原検査の一つであるPCR検査が現時点での感染を確認するのに使われるのに対し、抗体検査は、これまでに新型コロナウイルスに感染したかどうかを確認する検査である。それぞれに地域において、70%以上の人々が感染予防に必要な抗体を保有していれば、「集団免疫」が獲得されていると考えられ、流行はしないとされているため、抗体検査は重要である。

■日本を含む各国での抗体検査の結果が出ており、下記の通りである。

【世界の抗体検査】

  1. オーストリアのスキーリゾートであるイシュグルでは、3月に大規模な集団感染が発生した。インスブルック医科大学ウイルス学研究所が、2020年4月21日から27日にかけて抗体検査を実施し、住民の79%に相当する1,473人の被験者(大人1,259人、子供214人、479世帯)が参加した。その結果、42.4%(18歳未満の子供では27%)において抗体陽性であることが判明した。これは、以前のPCR検査で陽性と判定された人の数の約6倍(子供では10倍)であった。(インスブルック医科大学のプレス発表)
  1. ニューヨーク州では4月20日に3000人を対象とした抗体検査を開始したが、23日、クオモ知事が暫定的な結果を公表した。それによると州全体では13.9%の陽性率であった。地域によりばらつきが大きく、ニューヨーク市では21%、その周辺地域でも10%以上であったが、州の他の地域では4%以下であった。
    https://www.mashupreporter.com/poorest-neighborhoods-antibody-survey-coronavirus/
  1. イタリア、ベルガモ県 (人口110万)はロンバルディア州の中でも感染が蔓延した地域で、確定患者数でも10,948人、ほぼ1%となる (4/28の公衆衛生局発表)。ベルガモ県の二つの町 (Alzano, Nembro)で、感染者との接触があって自宅待機中の人・疑わしい症状があって自宅療養中の人を対象に抗体検査を実施した。自宅待機・療養中の人なのでリスクは必然高くなるが、750人のうち61%が陽性であった。
    https://note.com/atarui/n/n49d4051c7e1b
  1. イ南方医科大学南方病院は、湖北省、四川省、重慶市、広東省などの計1万7368人の血清に含まれる、新型コロナウイルス特異抗体「IgG」「IgM」の陽性率を調べた。調査期間は今年3月9日から4月10日まで。分析結果によると、武漢市の血清抗体陽性率は3.8%で、圧倒的多数の抗体陽性者に臨床症状が見られなかった。武漢市から遠い地域ほど累積感染率が低い。感染症の流行中に病院を訪問した人(外来や血液透析患者など)、もしくは院内の職員の累積血清陽性率は2.5%で、一般コミュニティ住民の0.8%を大きく上回った。
    https://www.mashupreporter.com/poorest-neighborhoods-antibody-survey-coronavirus/
  1. スウェーデン公衆衛生局は22日までに、首都ストックホルムの住民を対象に行った検   査で、抗体保有率は7.3%にとどまるとの結果が出たと明らかにした。緩やかな感染封じ込め策を取るスウェーデンだが、「集団免疫」の獲得には程遠い状況が浮き彫りになった。3%の数値は他国とほぼ同水準で、集団免疫の形成に必要な70~90%をはるかに下回る。スウェーデンは他国と異なる感染防止戦略を採用しており、日常生活の制限はごく軽微な水準にとどまっていた。
    https://www.cnn.co.jp/world/35154212.html



【日本の抗体検査】

  1. 厚生労働省は、調査への参加に同意を得た計7950人に対する抗体検査の結果、東京都では1971人中2人(0.10%)、大阪府では2970人中5人(0.17%)、宮城県では3009人中1人(0.03%)が陽性と判定された。いずれも各自治体の累積感染者数の割合と比べると高い値となっているが、現時点でも大半の人が抗体を保有していないことが明らかになった。
  1. ソフトバンクグループは5月12日~6月8日にかけて、同グループや取引先関連の計465社の社員3万8216人と、全国の医療機関539施設の医療従事者5850人に対して、簡易検査キットによる抗体定性検査を実施した。ソフトバンク・取引先ではOrient Gene社、医療機関ではINNOVITA社の簡易検査キットを使用した。計4万4066人を対象とした検査の結果、全体の0.43%に当たる191人が抗体検査陽性と判定された。このうち105人が医療従事者で、今回検査した4万4000人の中の医療従事者5850人のうち、1.79%だった。ソフトバンク・取引先の3万8216人については、陽性者は86人(0.23%)だった。



【考察】

  • 集団感染が起きている地域については、50-60%の住民の抗体が陽性となっており、3密のリスクがあるところでの感染率が高いことがわかる。
  • スウェーデンが取った政策(新型コロナに対しての特別な対策は取らずに、新型コロナに多くの人が感染し、集団免疫の獲得を目指す)は、抗体陽性率が対策をとったヨーロッパの地域とも変わらないこと、死亡率も比較して高いことから、現時点では、成功しているとは言えない。
  • 日本においては、東京都も含め、抗体値が低く(新型コロナウイルスに接すると容易に感染する)、今後も3密による、感染の拡大が予想される。
  • 中国からの報告では、感染時に抗体値が一度上がって、さがり、陰性になるということも言われており、抗体値の減少による再発の可能性も否定できない。
  • WHOの7月15日時点のまとめによると、現在、臨床試験に入っているCOVID-19ワクチン候補は23種類。このほかに140種類が前臨床の段階にあり、日本でも、4種類のワクチンの臨床治験が開始されているものの、現在のところ、大規模な患者さんに対しての最終段階の治験が終わっていないため、現在のところ、いつ、ワクチンができるかは不明である。
  • 新型コロナ感染への恐怖を持ちながらの生活から、感染の心配がなく正常生活に戻るためには、「有効なワクチンができ、これらの接種をするか」、「多くの人々(70%以上)が感染し、集団免疫を獲得する」ことが必要であるが、現時点でのその道はまだ遠く、3密を避けて、感染予防を務める必要がある。また、感染の疑いもある場合には早期検査、早期自己隔離を実践する必要がある。多くの例では重症化しないので、過剰な心配はする必要はない。



2020.07.29
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師

1.世界の感染状況

*統計データは、WHO Situation Reportを使用。(グラフを作成)

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  • 南北アメリカ大陸、インド、南アフリカの感染爆発に伴い、増加傾向にあった世界の毎日の新規陽性者数も2020年8月中旬には、ピークに達しており、減少の傾向となっている。累積陽性者数は、延べ2300万人、死亡者も80万人を超えた。地域的な陽性者数の分布は、米国、ブラジルなどのアメリカ地域(54.5%)、インドなどの南西アジア地域(15.2%)、多くの国での流行を起こしたヨーロッパ地域(17.2%)、南アフリカなどのアフリカ(8.8%)、中規模感染が継続している中東地域(4.4%)、感染増加を食い止めている西太平洋地域(2.2%)である。なお、陽性者の致死率に関して、4月における6.9%から、8月の3.5%に減少した。
  • 人口当たりの陽性者率が高い国は、中東及びアメリカ大陸の国が多く、死亡率ではヨーロッパと南米の国々が高い。また、米国は、双方とも高い。
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  • 4月から5月にかけての緊急事態宣言後、減少傾向であったが、7月より、東京をはじめとして、都会での感染の拡大が始まり、全国レベルとなり、第二波といわれる感染状況となった。この流行も7月下旬から8月初旬にはピークとなり、8月下旬には減少傾向となった。東京での陽性者数の増減の傾向と日本全体の傾向は似ている。



2.日本、東京都国内感染状況

日本では、4月の緊急事態宣言後の外出自粛政策に対しての国民の理解も深く、全国規模での外出自粛が成功し、一時的に感染のコントロールがされた。「GO TO キャンペーン」に伴う7月からの第二波の感染拡大に対しても、それぞれの自治体の個別の対策により、減少傾向となっているが、今後も流行は継続すると考えられる。その理由として次のようなことが考えられる。

  • 6月に厚生労働省により実施された7950人に対する抗体検査の結果、いまだにごく少数の住民が新型コロナウイルスに感染した(東京都0.10%、大阪府0.17%、宮城県0.03%)だけであり、新型コロナウイルスへの抵抗性はなく、ほとんどの人々が、「三密」という状態で新型コロナウイルスに暴露された場合には、感染する可能が高い。現在のように経済活動が拡大し、人々との接触が避けられない中、無症状や軽症者からの感染リスクは避けられない。また、外での接触の結果、本人も気が付かずに、家庭での感染が起こる可能性がある。
  • 国の政策としても、これ以上、経済を犠牲に感染症予防対策をとることは難しく、感染者が増えてもそれに対応する医療供給体制が整っている間は、4月に実施された緊急事態宣言は、今後発せられる可能性は低く、経済復興への政策をとる方向となる。
  • 世界の他の国々の傾向としても、これまで市中感染となって陽性者数が1日1000人以上増加した国(イラン、ヨーロッパ各国、インドネシアなど)では、4か月以上たっても流行が終わることはなく、1日500-1000人以上の陽性者数が継続しており、日本も同様に毎日500-1000人程度の陽性者数は継続していくと考えられる。
  • 新型コロナ感染を封じ込めるためには、効果的なワクチンの開発及びワクチンの人々の接種が必要であり、世界中において開発がおこなわれている。副作用もなく、効果的なワクチンが開発され、世界中の人々へ摂取可能になるまでには少なくとも2年ほどかかると考えられる。



3.COCOA登録による検査費用の免除
  • 厚生労働省が無料で配布しインストールを呼び掛けている「新型コロナウイルス接触確認アプリ」COCOA(COVID-19 Contact-Confirming Application)は、新型コロナウイルス感染症の陽性者と接触した可能性について、利用者の同意を前提に、スマートフォンの近接通信機能(ブルートゥース)を利用し、お互いに分からないようプライバシーを確保して、通知を受け取ることができる、スマートフォンのアプリである。
  • 8月21日に、厚生労働省より、新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)利用者のうち、「新型コロナウイルス感染症の陽性者と接触した可能性がある」と通知を受けた者も、行政検査の対象者となり、当該検査費用の負担を本人に求めない(公費負担となる)ことが示された。
  • 検査後2週間以内に健康状態が悪化したときは速やかに報告するよう求められ、報告があったときは、速やかに再検査を行う必要がある。
  • 当該検査は陰性を証明するものではないことに留意する必要がある。
    https://gemmed.ghc-j.com/?p=35627
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/cocoa_00138.html



4.在日外国人にも入手可能な支援

1)特別給付金

  • 基準日である4月27日に、住民基本台帳に記録されている外国人は給付対象となる。
  • 帰国困難な状態に置かれている(元)技能実習生、(元)留学生、また、難民申請者の子どもについても、特別定額給付対象とするとの発表があった(5月19日)。技能実習生や留学生で「短期滞在」や「特定活動(3ヶ月)」の在留資格の人は、「特定活動(6ヶ月)」への在留資格変更許可申請を行い、住民基本台帳への登録が必要となる。
  • 申請期限は、ほとんどの地方自治体では過ぎているが一部では、まだ、終了していない。
  • 市区町村から受給権者宛てに郵送された申請書に振込先口座を記入し、振込先口座の確認書類と本人確認書類の写しとともに市区町村に郵送するか、マイナンバーカード所持者がマイナポータルから振込先口座を入力した上で、振込先口座の確認書類をアップロードし、電子申請することにより、申請できる。
    https://migrants.jp/news/office/20200520.html(移住連)
    https://kyufukin.soumu.go.jp/ja-JP/cities/application_deadline.html(各自治体の申請期限)


2)子育て世帯への臨時特別給付金

  • 住民基本台帳に登録されているもののうち、児童手当を受給する世帯(0歳~中学生のいる世帯)に対して支払われる。対象児童1人につき1万円が支払われ、申請は必要なく、自動的に支払われる。
  • 「留学」生に帯同する家族で、「家族滞在」の在留資格を有しており、対象児童がいる場合は給付金受給の対象となる。
    https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/taiou_coronavirus.html


3)緊急小口資金(主に休業者向け)

  • 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、休業等により収入の減少があり、緊急かつ一時的な生活維持のための生活費を必要とする世帯に対して最大20万円貸付される。
    https://www.tcsw.tvac.or.jp/



2020.09.03
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師

新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について (18)

1.世界と日本のCOVID-19感染状況(Global and Japanese Situation of COVID-19)

■世界のCOVID-19新規陽性者と新規死亡者数(WHO 2020年9月28日)
新規陽性者数、新規死亡者数、陽性者致死率3.1%

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世界の累計陽性者数3263万人、死亡者数99万人を超え、致死率は3.1%である。(2020年9月28日、WHO)

  • 世界的には、週別の新規陽性者数は増加率が横ばいとなっており、最大のピークは脱している。
  • アフリカ地域、西太平洋地域では、減少傾向に転じている。ヨーロッパ地域、東地中海地域では、一時減少傾向にあったものの、9月になり再流行しており、4月を上回る数となっている。ヨーロッパ地域では、フランス、スペインで、4-5月以上の新規陽性者数(毎日5000人以上)が確認されており、第二波の感染爆発といえる。
  • アメリカ地域は、継続して、感染は拡大している。
  • 南西アジア地域では、現在の世界の最も感染者数が多いインドの感染爆発により、新規陽性者数が増加しているが、インド以外の国では、新規陽性者数は減少している。東南アジア、西太平洋地域では、タイ、ベトナム、ラオス、カンボジアに関しては、感染拡大は見られていない。


■日本における週ごとのCOVID-19新規陽性者数と死亡者数 陽性者致死率1.9%(9月29日)

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■東京都における週ごとのCOVID-19新規陽性者数  陽性者致死率1.7%(9月29日)

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  • 7月下旬から8月初旬の新規陽性者数は減少傾向となり、首都圏をはじめ、全体的には減少傾向である。感染第二波も収まっているといえる。
  • 9月28日現在では、東京で新規陽性者数は100例以下となり、北海道、茨城、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、京都、広島、沖縄において10例以上の陽性例が報告されているが、いずれも減少傾向である。
  • 東北地方、北陸地方、四国地方、九州地方においては、感染が抑えられているといえる。



2.加速するワクチン開発、残る多くの疑問点
  • 新型コロナ感染症対策の中でも、最も期待されているのが、ワクチンである。有効かつ安全なワクチン接種により、感染による重症化、死亡が避けられる可能性がある。また、国家間の移動に関しても、黄熱病のように、ワクチン接種を義務付けることにより、コロナ流行以前と同じような状態に戻ることができる。すると、人の国家間の行き来が回復し、経済回復へのきっかけもつかむことができる。
  • 欧米、中国などの製薬企業によるワクチン開発はすすんでおり、ワクチンが承認される日も近いと報道されている。
  • このワクチン過熱報道の中で、多くの疑問点が上がっているのも事実である。第一に承認の時期である。通常、ワクチン開発は時間がかかるプロセスだ。過去の最速例でも4年を要している。だが、緊急の必要性が生じたことで、開発を急いでおり、製薬各社は迅速に臨床試験を進められるよう、巨額の資金を投じ、臨床試験が始められたワクチンは6種類ある。アメリカ食品医薬品局では、いかなるワクチンも、少なくとも50%の確率で疾病予防の効果がなければならないと述べており、これは普通のインフルエンザワクチンと同等の効果だ。だがすべてのワクチン候補が成功するわけではなく、失敗に終るワクチンに資金やマンパワーが無駄遣いされるリスクもある。
  • 課題の一つとしては、「ワクチンが公正に配布されるのか」ということだ。ワクチンができた後、入手の列の先頭に並ぶのは、米国、英国などワクチン開発を支援してきた富裕国だ。公正な配布を保証するグローバルな機関は現在存在しない。
  • すべてのワクチンで副作用が生じる可能性があることと、短期間の免疫しか提供できないという可能性がある。
  • もっと心配なのは、各国政府が効きもしないワクチンを承認するよう規制当局に圧力をかけることだ。ロシアは8月11日、通常であれば薬剤の効果を証明するために行われる最終フェーズの治験すら実施しないうちに、1種類のワクチンを承認した。無効なワクチンは、投与を受けた人が警戒を緩めてしまうため、さらに大規模な感染拡大のリスクを高めてしまう。
  • ワクチンの最終目的は集団免疫の獲得にある。つまり、感染が拡大しにくくするためには十分な数の人口が免疫を獲得しなければならない。人口の70%の人にワクチン接種をするには、多くの資金が必要となり、この目標に到達できない可能性がある。
  • 日本においても新型コロナウイルスのワクチンへの期待は高まっているが、順調に開発できたとしても、現時点でワクチンにどれだけの効果があるかは分かっていない。

コラム:加速するワクチン開発、残る多くの疑問点

コロナワクチンに対して広がる不安、世界中で「接種受けない」の声

ワクチン「過度な期待は禁物」...効果は未知数、副作用に懸念も

3.政府の新型コロナ対策 新たな方針で何が変わる?
  • 新型コロナウイルスの対応をめぐって、政府の対策本部は8月28日、検査体制の見直しなど新たな方針を打ち出した。
  • 検査に関して、これまでは、保健所などに設置された「受診相談センター」に連絡し、専門外来で検査を受けるルートと、医師会などが設けた「地域外来・検査センター」で検査を受けるルートが中心だった。これに加え、地域の診療所で、インフルとコロナの検査を同時に行えるよう体制を強化する方針である。
  • 新型コロナウイルスに感染した人の「入院」の運用も見直される。具体的には、無症状や軽症の人は医療機関に入院せず、原則、宿泊施設か自宅での療養を徹底する。これまでも症状がない人は、原則、宿泊施設などで療養することになっていたが、地域によっては入院を求められるケースも多いと見られていた。今回の見直しによって、入院する人の数を抑えることで、限られた医療資源を重症者の治療に重点的に投入し、入院に対応する保健所の負担も減らそうというねらいがある。
  • 雇用を守るための対策として始められた「雇用調整助成金」の期限を9月末から12月末まで延長する。厚生労働省は今年2月以降、新型コロナウイルスの影響を受けた企業を対象に、特例措置を行っている。1人1日当たり8,330円の助成金の上限額を15,000円に、従業員に支払った休業手当などの助成率は、大企業は75%に、中小企業は100%に引き上げている。
  • 感染症分類の現在の「2類相当」からグレード・ダウンさせる。感染症は1~5類に分類され、現在、新型コロナは「2類相当」である。重症者の入院はもちろん、「無症状者への入院勧告」などの措置が取られている。陽性者を隔離するためだ。新方針では、重症者用の病床を確保するため、無症状と軽症者への入院勧告を撤廃する方向だ。現在、軽症者らは宿泊施設での隔離が原則義務づけられているが、この措置も、この先は義務ではなくなる。また、全額公費ではなくなり、ホテルなどの宿泊施設に入る場合、自己負担が発生することになりそうだ。

政府の新型コロナ対策 新たな方針で何が変わる?

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コロナ対策のルール 見直しは慎重さが必要だ

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首相辞意ドサクサにコロナ"2類外し"の新方針 高齢者感染拡大の懸念

2020.10.05
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表・医師

新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について (19)

1.世界と日本のCOVID-19感染状況(Global and Japanese Situation of COVID-19)

■世界のCOVID-19新規陽性者と新規死亡者数(WHO 2020年11月29日)
新規陽性者数、新規死亡者数、陽性者致死率2.4%

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世界の毎日の新規陽性者数は約400万人、累計陽性者数は5370万人と死亡者数130万人を超え、致死率は2.4%である。(2020年11月22日、WHO)

  • 世界的には、週別の新規陽性者数はヨーロッパ地域とアメリカ地域の増加が80%と占めている。アメリカ地域では増加率も高くさらに拡大しているが、ヨーロッパ地域では公衆衛生的な対策も強化され、増加率の減少がみられる。
  • 東地中海地域、アフリカ地域、西太平洋地域においても、増加傾向である。
  • 流行国であるインドを含む南西アジア地域は減少傾向に転じている。
  • 11月9日から15日の1週間の新規陽性者数は、アメリカ地域(米国100万、ブラジル18万)、ヨーロッパ地域(イタリア24万、フランス20万)、南西アジア地域(インド30万)、地中海地域(イラン7.6万、ヨルダン3.6万、モロッコ3.6万)、アフリカ地域(南アフリカ1.3万)、西太平洋地域(フィリピン1.3)であり、米国の大流行が目立つ。
  • WHOは、新型コロナ対策のために臨時のWHO総会を11月9日から11月14日に開催し、今後の取り組みが検討された。


■日本の週毎のCOVID-19新規陽性者数と死亡者数 陽性者致死率1.6%(12月1日)

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■ 東京都の週毎のCOVID-19新規陽性者数と死亡者数  陽性者致死率1.4%(12月1日)

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■空港検疫による陽性者数

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  • 新規陽性者は10月下旬より増加している。首都圏も増加しているが、特に北海道や大阪、愛知を中心に増加がみられ、全国的な感染増加につながっており、流行第三波の状況となっている。
  • ・感染拡大の原因となるクラスターについては、地方都市の歓楽街に加え、会食や職場及び外国人コミュニティー、医療機関や福祉施設など多様化しており、地域への広がりがみられる。GoToTravelやGoToEatの影響や秋の行楽シーズンの観光地での流行、人々の国内での移動の増加が原因と考えられる。
  • 空港検疫による外国人の陽性者の数も増えており、在日外国人クラスターの発生が入国者からの感染である可能性も否定できない。



2.有効な二つの新型コロナワクチン

米ファイザー社

  • 米ファイザーは11月20日、ドイツのビオンテック(バイオ企業の名前)と共同で開発している新型コロナウイルスワクチン候補の緊急使用許可(EUA)を米食品医薬品局(FDA)に申請した。
  • 両社は今週初めに臨床試験データの最終分析でワクチン接種が新型コロナ感染予防に95%の確率で有効であることが示されたと発表した。年齢層や人種を問わず有効で、約4万4000人が参加した治験でこれまでのところ重大な安全性の問題も生じていないという。
  • 米ファイザーとドイツのビオンテックは、米国だけでなくオーストラリア、カナダ、ヨーロッパ、日本、英国でも緊急承認申請を行っており、2020年12月末までに「高リスク集団」でのワクチン使用を開始するための道を開く可能性があると述べている。
  • 課題としては、本ワクチンはmRNA(messenger RNA)を使ったもので、マイナス70度以下で保管する必要があることだ。ジョンズ・ホプキンス大研究員アメシュ・アダルジャ氏は「コールドチェーン(低温流通システム)は、新型コロナウイルスワクチンの予防接種を行う上で最も大きな課題の1つとなるだろう」と指摘。「大都市の病院でさえ、そのような超低温での保管施設は持っていない」と話す。


米モデルナ社

  • 米バイオ企業のモデルナは11月16日、新型コロナウイルス感染症ワクチン「mRNA-1273」の大勢の人を対象とした第III相試験について、データ安全性モニタリング委員会が実施した最初の中間解析で、94.5%の有効性を示したと発表した。
  • ・約3万人を2群に分け、ワクチンまたは偽薬を2回投与した。これまでに95人が新型コロナウイルスに感染したが、そのうちの90名は偽薬投与群で、ワクチンを投与して感染したのは5名だけだった。この結果から、ワクチン無しでは90名が感染するところ、ワクチンにより85名が予防できたと考え94.5%の効果であったと結論づけている。また95名の感染者のうち重症は11名だったが、全員が偽薬投与群であったことから、ワクチンは重症化も防ぐことが期待されるとしている。
  • また、mRNAは非常に不安定な物質であるため、mRNAワクチンの弱点として運搬や保存にマイナス80度以下の超低温冷蔵が必要なことが挙げられる。しかしモデルナ社のmRNAワクチンは、特殊な修飾がされており、冷蔵で1週間、通常の冷凍(マイナス20度)で半年間、有効であると発表している。


https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-11-21/QK4PIPDWRGG201
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-11-21/QK4PIPDWRGG201(English)
https://jp.techcrunch.com/2020/11/23/2020-11-20-pfizer-and-biontech-to-submit-request-for-emergency-use-approval-of-their-covid-19-vaccine-today
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/19723/
https://investors.modernatx.com/news-releases/news-release-details/modernas-covid-19-vaccine-candidate-meets-its-primary-efficacy
https://www.covid19-yamanaka.com/cont3/21.html


3.無症状者の新型コロナ感染
  • 新型コロナ感染症では、呼吸だけで感染させてしまう無症状者のスーパースプレッダー存在が課題となっている。
  • 土曜日の晩には「元気」だったので大勢の人と接したが、月曜日になって咳、熱、疲労感に襲われ、感染していたことに気がついた。米疾病対策センター(CDC)の推計によれば、そのような症状が出る前の人がウイルスをうつすケースは、感染例のおよそ半数を占める。
  • さらに実態をつかみにくいのは、ウイルスに感染していても全く症状が出ない人のケースだ。CDCによれば、全米の感染例のうち、そうした無症状の感染者は4割に上るという。
  • 発症前(pre-symptomatic)に他人に感染させる人や、無症状(asymptomatic)の人がなぜこんなにも多いのか。知らない間に感染が広がるのは、インフルエンザやかぜなどのウイルスも同じだ。しかし、新型コロナウイルス感染症では極端に把握が難しく、したがってコントロールも難しい。
  • 問題の一つは、病状の現れ方がよくわかっていない点にある。高齢者のほか、肥満、喘息(ぜんそく)、糖尿病などの既往症を抱えている人の方が、重症になるケースが多いことは明らかになっている。しかし、感染しても重症化を免(まぬが)れる人についてはよくわかっていない。
  • 医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」に米海兵隊の18歳から31歳の新兵1848人を対象とした、新型コロナの無症状感染に関する過去最大規模の研究が掲載されている。
  • この2000人近くの若者を対象にした新型コロナウイルス検査の結果、コロナ感染症の症状観察でほぼ全ての感染が見落とされていたとの研究結果が発表された。感染拡大を抑制するには、症状がある人だけでなく無症状の人も対象にした幅広い定期検査の実施が必要であることが示唆(しさ)された


https://news.yahoo.co.jp/articles/c342abf8d9387caf7e77b7eeaa13984c524c371aSARS-CoV-2 Transmission among Marine Recruits during Quarantine
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2029717?query=TOC
https://jp.wsj.com/articles/SB11922503875527593554104587093463746193648


文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表理事・医師

新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について (20)

1.世界と日本のCOVID-19感染状況(Global and Japanese Situation of COVID-19)

■世界のCOVID-19新規陽性者(WHO 2020年12月13日)
規陽性者数、新規死亡者数、陽性者致死率2.3%

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世界の毎週の新規陽性者数は約430万人、新規死亡者数7.5万人を超えており、流行は拡大傾向である。致死率は2.3%である。累計の陽性者数は7千万人を超え、死亡者も160万人に達する(2020年12月13日、WHO)

  • この1週間で世界で最も多くの症例を報告した5か国は、アメリカ、ブラジル、トルコ、インド、ロシアであり、特にアメリカの増加率は高く、毎日20万人以上の新規陽性者が確認されている(12月13日現在)。(WHO Weekly epidemiological update - 15 December 2020
  • アフリカ地域では、再流行が来つつあり、マリ、ナンビア、ナイジェリア、セネガル、南アフリカの増加が目立っている。
  • 東地中海地域、ヨーロッパ地域では、減少傾向となっている。
  • 南西アジア地域は、最大の流行国のインドの増加率が減少したことに伴い、減少傾向となっている。
  • 西太平洋地域では、世界の中での占める割合は少ないものの、日本を中心として増加傾向である。


■日本の週毎のCOVID-19新規陽性者数と死亡者数 陽性者致死率1.5%(12月8日)

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■ 東京都の週毎のCOVID-19新規陽性者数 陽性者致死率1.2%(12月15日)

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  • 東京での新規陽性者数は、毎日300-500名に達しており、流行は継続していると考えられ、また、首都圏、愛知県、大阪、京都、兵庫、福岡などの地方の大都市での増加傾向があり、全国的には流行が継続していると考えられる。



2.予防接種 免疫
  • 新型コロナウイルスに感染し症状を持った患者は、その後、少なくとも6か月は、新型コロナの免疫が続く可能性があることが報告された。このことは、ワクチン接種による効果が自然免疫と同様に続くことを示唆している。
  • 一方、イギリスの大学インペリアル・カレッジ・ロンドンは、新型コロナウイルスに感染後に回復しても、抗体が3カ月で急減するとの研究結果を発表した。国民の多くが回復して免疫を持つことで感染を収束させる「集団免疫」が、新型コロナでは獲得できない可能性がある。
  • ワクチン接種による新型コロナ対策が期待されているが、接種の安全性を確保する必要がある。副作用の率が高かったり、死亡例があった場合には、ワクチンとしては適さない。
  • 2020年12月に入り、複数のワクチン開発(12月15日現在、アメリカ、イギリス、中国、ロシアなど6種類)が同時進行しており、自分に合ったワクチンが見つかる可能性は十分にある。
  • 英国医薬品庁(MHRA)は、ファイザー製ワクチンについて、過去に医薬品や食品でアナフィラキシー(急性アレルギー反応)を起こしたことのある人は接種するべきではないと発表した。
  • 12月13日、ペルーで中国の製薬大手「中国医薬集団(シノファーム、Sinopharm)」が開発した新型コロナウイルスワクチンの被験者1人に神経症状がみられたとして、臨床試験(治験)を一時中断した。


"Immunity to COVID-19 may persist six months or more Evidence is emerging that the coronavirus sparks potentially lasting protection in some people"
「An mRNA Vaccine against SARS-CoV-2 -- Preliminary Report」
「新型コロナのワクチンは超スピード開発でウイルスよりむしろ危険?」
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/19723/
「コロナワクチン副作用、国ごとに審査を アレルギー反応でWHO ペルー、中国製ワクチンの治験中止 被験者に神経症状」


3.新型コロナ感染者の特徴

2020年、世界中で猛威をふるっている新型コロナ感染症、その症状、経過、重症化などについてのまとめである。また、初期にはわかっていなかった後遺症に関してもわかってきた。

  • 潜伏期は、1~14日と幅があり、多くの人がおよそ4~5日で発症する。症状としては、風邪やインフルエンザと似ており、咳・息切れ・呼吸苦、熱・寒気、筋肉痛・関節痛、嘔吐・下痢、嗅覚異常・味覚異常などであり、特に「息切れ」「嗅覚障害・味覚障害」は、風邪やインフルエンザでは稀(まれ)な症状なので、新型コロナの可能性を疑うきっかけになる。
  • 「嗅覚障害」「味覚障害」は、風邪や副鼻腔炎、花粉症でも生じるが、それに加え、発熱、咳などの症状がある場合には新型コロナの可能性は高くなる。
  • 流行早期の中国での4万人の感染者のデータによると、発症してから1週間程度は風邪のような軽微な症状が続き、約8割の方はそのまま治癒するが、約2割弱が重症化する。
  • 日本の6月からのデータによると新型コロナウイルス感染症で重症化しやすいのは高齢者と持病のある患者である。重症化する人の割合は 約1.6%(50歳代以下で0.3%、60歳代以上で8.5%)、死亡する人の割合は 約1.0%(50歳代以下で0.06%、60歳代以上で5.7%)となっている。女性より男性が重症化する率が高いといわれている。
  • 新型コロナには一定の割合で感染しても無症状の人がいる。これまでの報告からはおよそ3~4割の人が感染しても無症状であったと報告されている。特に若い人では感染しても無症状のことが多いのではないかと考えられている。例えばアメリカの原子力空母セオドア・ルーズベルトで起こったクラスターでは、乗組員4,779人のうち、1,271人が新型コロナに感染し、この1,271人のPCR検査陽性者のうち、45%は無症状、32%が検査時には無症状でのちに症状を発症、そして23%が検査時に症状があった。
  • 他の人に感染させてしまう可能性がある期間は、発症の2日前から発症後7~10日間程度とされており、特に、この期間のうち、発症の直前・直後で特にウイルス排出量が高くなると考えられている。
  • 持病の有る無しによっても重症度が変わってくることも分かってきている。アメリカでの入院リスクは、喘息1.5倍、高血圧3倍、肥満(BMI3以上)3倍、糖尿病3倍、慢性腎臓病4倍、重度肥満(BMI4以上)、2つの基礎疾患4.5以上、3つ以上の基礎疾患5倍である。
  • 日本では、咳、痰、だるさ、呼吸苦、嗅覚障害、味覚障害などの症状が、60日後も10-20%、120日後でも2-11%が継続していると報告されている。
  • 後遺症として、フランスでは、脱毛、記憶障害、睡眠障害、集中力低下といった急性期にはみられなかった症状も後遺症として報告されている。


「新型コロナの症状、経過、重症化のリスクと受診の目安」
厚生労働省 「新型コロナウイルス感染症の"いま"についての10の知識」

2020.12.22
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表理事・医師

新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )について (21)

1.世界と日本のCOVID-19感染状況(Global and Japanese Situation of COVID-19)

■世界のCOVID-19新規陽性者(WHO 2021年1月24日)
週別 新規陽性者数 陽性者致死率2.2%

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【注】こちらのデータは、WHO(World Health Orgbanization)のWeekly epidemiological update - 27 January 2021の資料から引用

世界の毎週の新規陽性者数は約400-500万人、新規死亡者数8.5万人を超えていたが、増加率が上限に達している傾向である。致死率は2.2%である。累計の陽性者数はほぼ1億人に達し、死亡者も210万人を超えている。(2021年1月24日、WHO)

1月第3週の増加率の状況は下記のとおりである。

  • ・世界で最も多くの症例を報告した5か国は、アメリカ、ブラジル、英国、ロシア、フランスであり、特にアメリカの増加率は相変わらず高く、毎日20万人以上の新規陽性者が確認されている。
  • アメリカ地域における新規陽性者数が多く、米国、ブラジル、コロンビアが目立つ。
  • アフリカ地域でも増加しており、1月第3週では、南アフリカ、ナイジェリア、ザンビアの増加が目立っている。
  • アジア地域では、日本、マレーシア、フィリピン、インドネシアにおける増加がみられている。インドでは、絶対数は多いものの、減少傾向である。


■日本の週毎のCOVID-19新規陽性者数 陽性者致死率1.4%(2021年1月26日)



■ 東京都の週毎のCOVID-19新規陽性者数 陽性者致死率0.9%(2021年1月26日)

  • ・全国及び東京での新規陽性者数は、クリスマスから年末年始の人々の移動や繁華街への外出の増加により、1月の1,2週の急激な陽性者数の増加をきたしたと考えられ、2021年1月8日より、東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県、1月14日より、栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県の11都府県で緊急事態宣言が発せられた。1月3週からは、東京、全国とも新規陽性者数の減少傾向を見せている。



2.新型コロナウイルス変異株
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【注】こちらのデータは、WHO(World Health Orgbanization)のWeekly epidemiological update - 19 January 2021の資料から引用

  • 現在、複数のCOVID-19変異株が世界中で流行している。
  • 英国(UK)において出現したB.1.1.7(VOC 202012/01)と呼ばれる新しい亜種は、2021年1月19日現在、世界の60か国で報告されており、他の変異株よりも簡単かつ迅速に拡散しやすいといわれているが、それがより重篤な病気や死亡リスクの増加を引き起こすという証拠はない。
  • 南アフリカでは、1.351(501Y.V2)と呼ばれる変異株が出現した。この亜種は、もともと10月初旬に検出されたもので、1月19日現在、23か国で報告されている。
  • ブラジルでは、P.1と呼ばれる亜種が出現し、ブラジルから日本への4人の旅行者で特定された。


https://www.who.int/publications/m/item/weekly-epidemiological-update---19-january-2021
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/transmission/variant.html


3.家庭内の感染

2020年、世界中で猛威をふるっている新型コロナ感染症、その症状、経過、重症化などについてのまとめである。また、初期にはわかっていなかった後遺症に関してもわかってきた。

  • 54の関連した研究の結果、77,758人のCOVID-19 の家庭内感染率は16.6%、これはSARS(7.5%)及びMERS(4.7%)の感染率より高かった。有症状の感染率は18.8%であり、無症状者の0.7 %に比べ、高かった。大人との接触によるものが28.3%であり、子どもとの接触(16.8%)よりも高かった。配偶者からの感染率(37.8%)はその他の家族からの感染率(17.8%)より高かった。同居人数が1人(41.5%)、同居人図んが3人以上(22.8%)と、同居人数が少ない方が、家庭内感染率が高い傾向を示した。
  • Household Transmission of SARS-CoV-2 A Systematic Review and Meta-analysis


https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2774102

4.新型コロナウイルス感染症の"いま"についての10の知識(2021年1月 厚生労働省)
  1. 日本では、これまでに379,516人が新型コロナウイルス感染症と診断されており、これは全人口の約0.3 %に相当する。(2021年1月29日)
  1. 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、重症化する人の割合や死亡する人の割合は年齢によって異なり、高齢者は高く、若者は低い傾向にある。
    ・重症化する人の割合は 約1.6%(50歳代以下で0.3%、60歳代以上で8.5%)
    ・死亡する人の割合は 約1.0%(50歳代以下で0.06%、60歳代以上で5.7%)である。
  1. 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、高齢者と基礎疾患(慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満)があるひとは、重症化しやすい。また、妊婦や喫煙歴などが重症化しやすいかは明らかでないものの、注意が必要とされている。
  1. 日本の人口当たりの感染者数、死者数は、全世界の平均や主要国と比べて低い水準で推移している。
  2. 新型コロナウイルスに感染した人が他の人に感染させてしまう可能性がある期間は、発症の2日前から発症後7~10日間程度とされている。また、この期間のうち、発症の直前・直後で特にウイルス排出量が高くなると考えられている。
  1. 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、他の人に感染させているのは2割以下で、多くの人は他の人に感染させていないと考えられている。このため、感染防護なしに3密(密閉・密集・密接)の環境で多くの人と接するなどによって1人の感染者が 何人もの人に感染させてしまうことがなければ、新型コロナウイルス感染症の流行を抑えることができると考えられる。
  1. 新型コロナウイルス感染症は、主に飛沫感染や接触感染によって感染するため、3密(密閉・密集・密接)の環境で感染リスクが高まる。このほか、飲酒を伴う懇親会等、大人数や長時間におよぶ飲食、マスクなしでの会話、狭い空間での共同生活、居場所の切り替わりといった場面でも感染が起きやすく、注意が必要である。
  1. 新型コロナウイルス感染症を診断するための検査には、PCR検査、抗原定量検査、抗原定性検査等があり、いずれも被検者の体内にウイルスが存在し、ウイルスに感染しているかを調べるための検査である。新たな検査手法の開発により、検査の種類や症状に応じて、鼻咽頭ぬぐい液だけでなく、唾液や鼻腔ぬぐい液を使うことも可能になっている。なお、抗体検査は、過去に新型コロナウイルス感染症にかかったことがあるかを調べるものであるため、検査を受ける時点で感染しているかを調べる目的に使うことはできない。
  1. 軽症の場合は経過観察のみで自然に軽快することが多く、必要な場合に解熱薬などの対症療法を行う。呼吸不全を伴う場合には、酸素投与やステロイド薬(炎症を抑える薬)・抗ウイルス薬の投与を行い、改善しない場合には人工呼吸器等による集中治療を行うことがある。ただ、高齢者や基礎疾患がある方は、突然、悪化することもあるので注意が必要である。
  1. 新型コロナウイルス感染症に対するワクチンは、国内・海外で多数の研究開発が精力的に行われており、一部の国においては、緊急的な使用等が認められ、接種が開始されている。日本国内でも承認申請が行われたワクチンがあり、国内外の臨床試験結果等を踏まえ、承認審査が行われ、審査が終了し承認された場合に、ワクチン接種を希望される方々が速やかに受けて頂けるように、準備に取り組んでいる。一般的に、ワクチンには感染症の発症や重症化を予防する効果があり、ファイザー社、モデルナ社、アストラゼネカ社は、第3相試験で、開発中のワクチンを投与した人の方が、投与していない人よりも、新型コロナウイルス感染症を発症した人が少なかったとの中間結果が得られたと発表している。一般的にワクチン接種には、副反応による健康被害が極めて稀ではあるものの、不可避的に発生する。新型コロナウイルス感染症のワクチンの副反応については、臨床試験等で確認されているところである。


▶厚生労働省移動

2021.02.01
文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表理事・医師

新型コロナウイルス感染症の予防接種(ワクチン)について

予防接種の効果
  • 新型コロナウイルス感染症対策には、予防と治療がある。感染予防のためには、接触感染を避けるため、環 境を消毒し、手洗いをしっかりすること、感染者からのウイルスとの接触を減らすためにマスクを着用する こと、3密(密閉・密集・密接)の環境で多くの人と接することを避けることがあげられる。根本的な予防と しては、予防接種(ワクチン)により、体内にウイルスと戦う抗体を作ることが最も有効である。予防接種に より、感染しても新型コロナウイルスが体内で増加せず、発症を予防できる。また、発症しても重症化せず、 死亡を予防することができる。
  • ・感染症は、多くの人が感染すれば、集団免疫ができ、流行が収まると考えられているが、新型コロナウイル ス感染症の場合には、感染者の体内にできた抗体が 6 か月ほどしかないことから、集団免疫が難しいと考え られている。
ワクチンの承認
  • ・2020 年 4 月以来、70 種類以上のワクチンが開発され、臨床試験が行われてきた。
  • ・2021 年 2 月 12 日厚生労働省はファイザーの新型コロナウイルスワクチンについて、臨床試験のデータで 有効性や安全性を確認し製造販売の「特例承認」を了承した。日本での承認は欧米から 2 カ月遅れとなる。 ファイザーのワクチンは 16 歳以上に 3 週間の間隔で 2 回接種する。医師らへの先行接種の後、3 月に医療従 事者約 370 万人に接種し、4 月に高齢者約 3600 万人への接種を始める計画である。コロナワクチンでは英ア ストラゼネカも 2 月 5 日に国内で製造販売の承認を申請し、政府はこのほか米モデルナからもワクチンの供 給を受けることを決めている。
ワクチンの副反応
  • 一般的にワクチン接種には、副反応による健康被害が極めて稀ではあるものの、発生が避けられない。日本 への供給を計画している海外のワクチン(ファイザー社、アストラゼネカ社、モデルナ社、ノババックス社 が開発中のワクチン)では、現在のところ、重大な安全性の懸念は認められなかったと考えられる。一方で、 ワクチン接種後に、ワクチン接種と因果関係がないものも含めて、接種部位の痛みや、頭痛・倦怠感・筋肉痛 等の有害事象がみられたことが報告されている。また海外で既に実施されている予防接種においては、まれ な頻度でアナフィラキシー(急性アレルギー反応)が発生したことが報告された。アナフィラキシーが起き たときには、接種会場や医療機関ですぐに治療を行うことになる。
ワクチンの被接種者
  • 新型コロナウイルスワクチンの接種は、各地域で住民向けの接種体制を構築することから、 住民票所在地の 市町村で接種を受けることを原則とする。一方 、やむを得ない事情があり、 自治体から接種券の発行が受 けられない者について、居住の実態が認められた場合は 居住地の市町村が接種券を発行し、接種を行うこと とすることが各自治体に通知されている。ホームレス、在日外国人で住民票を持ってない人が対象になる可 能性がある。


■参考資料:
日経ニュース首相「来週半ばに接種開始」 ファイザー製ワクチン


厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の"いま"についての 10 の知識(2021 年 1 月時点)


文責:仲佐 保
NGOシェア共同代表理事・医師

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