HOME > 数字で見る国際保健 > 高まるニーズを実感、結核患者療養支援
世界人口66億のうち3分の1、22億人が結核菌の感染を既に受けていると言われています。毎年900万人が新たに感染し、200万人が結核で命を落としています。特に途上国では予防可能な成人死亡の4分の1近くは結核によるものという計算も出ています。
治療方法が確立されているはずの結核が多くの人の命を奪う原因には、医療アクセスの問題や治療継続サポートの不足があります。結核治療は、数種類の薬を最低6ヶ月間内服しなければ菌を取り除くことができません。ですが内服して1~2ヶ月経つと、咳や痰などの結核の症状がなくなるため患者は服薬を中断してしまいがちです。この中断により、多剤耐性菌という治療困難な結核菌を生み出してしまうことがあり、時として死につながるためとても危険です。また完治しないままでいることにより、周囲に感染を広げてしまう原因となります。適切な治療をすれば死に至る病気ではないため、いかに患者さんをサポートして6ヶ月間の治療を完了させるかが結核治療のポイントになります。
日本は先進国と比較して罹患率が高い結核中まん延国です。罹患率は大都市が高く、東京は大阪に続き2番目に高い地域です。シェアが行う在日外国人出張健康相談会での活動性結核罹患率は平均で321(人口10万人対)1で、日本の全体の罹患率20.6(同、2006年)の16倍という高い値です2。結核を患っている患者のほとんどが健康保険を持っておらず、このことは社会的弱者がそのまま健康上も弱者になっている可能性を意味しており、支援体制づくりが望まれます。
シェアは2006年1月より東京都が始めた外国人のための通訳派遣事業に東京都結核予防会と協力し、通訳養成研修と派遣業務を行ってきました。外国人結核患者が抱える共通の問題には、会話が困難であること、習慣の相違、結核に関する十分な知識がないこと、健康保険に未加入であることや超過滞在のケースもあり、これらのことが医療機関にアクセスしにくく、治療中断を起こしやすい要因となっています。受診の遅れによる重症化や感染拡大を防ぐことを目的に、外国人結核患者と医療側との円滑なコミュニケーションを促すべく通訳派遣を行っています。
医療通訳派遣の日、通訳さんは初めて患者さんに会います。患者さんは、初対面のまったく知らない人に自分の病気や個人的な事を話したくない、プライバシーは守られるのだろうか、信頼できる人なのか、などと緊張や不安を隠すことができません。通訳は、まず最初にそのような緊張を解きほぐすところから始まります。
HIV/AIDS在日外国人支援ネットワークで長年通訳に関わっているAさんは、その役割を次のように教えてくれました。「ただ言葉を日本語から患者さんの母国語に置き換えるのではなく、患者さんを見て、心を開くことができるような語り口調で、時にはスキンシップを交えながら話すようにしているの。母国にいた頃、治療法があることが分からなかったエイズを患った場合には落ち込み、心を閉ざしていることも。通訳で一番気をつけていることは、患者さんの心をOPENにすること」。明るいAさんの人柄もあるのでしょう、緊張でがちがちになっていた患者さんも医療通訳が終わる頃には打ち解けているそうです。
「言葉が通じない」、そのことにより誰にも相談できない状況に立たされている人がいるのです。心理的にも身体的にも不安を抱える人々の力に少しでもなることができたら・・・、同じ日本に住む私たちだからこそ、互いに助け合えるようになりたいですね。
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