HOME > 数字で見る国際保健 > 東ティモールの保健医療は改善したのか?
東ティモールは独立闘争により、医師や看護師ら多くの医療従事者が国外に退去し、公共施設は破壊され、保健医療サービスは壊滅的な状態となりました。そうした厳しい環境にありながらも、2002年の独立から10年で5歳未満児死亡率と乳児死亡率は半減し、すでに東ティモールで定めたMDGsの2015年までの目標を達成しています(表1)。 この変化の背景には、独立後国際社会からの支援を得て、インフラや保健システムの整備などが少しずつ進んできたことがあります。シェアも、1999年に緊急支援から開始し、その後エルメラ県とアイレウ県で、保健教育の人材育成など長期的な視点での保健医療活動を行い、この変化をもたらす一端を担ってきました。
一方で、乳児死亡率などは他のアジア諸国と比べても依然として悪い状況が続いています。妊産婦死亡率は2015年までの目標は10万人当たり252人と、達成はかなり厳しい状況です(表1、2、3)。 5歳未満児の低体重の割合に至っては、10年前の独立時からほとんど改善が見られていません。ところが、国家予算をみると、2012年度の場合、16億7300万ドルのうち、保健省への配分はわずか2.9%の4800万ドルにすぎません。教育省の予算も5.7%(9500万ドル)です。 今後の改善のためにも、保健医療分野への予算の配分が大きな課題となっています。
医療従事者や病院などが圧倒的に不足している東ティモールにおいて、疾病を予防するための知識を身につけることが、命を守ることになります。シェアは保健知識を伝えるための保健教育に取り組み、特に保健教育教材の開発で東ティモールに貢献してきました。
シェアが東ティモールで支援を開始した当初は、現地語であるテトゥン語の保健教育教材は1つもありませんでした。識字率が36%の東ティモールにおいては、誰もが理解できる保健教育には工夫が必要です。シェアは、参加型で、誰もが楽しみながら学べる教材開発を始めました。保健教育のトピックは、マラリアや下痢、手洗い、妊娠など東ティモールに多い13種類を選びました。こうして2003年に、東ティモール初のテトゥン語による保健教育教材「フリップチャート」ができあがり、その後、保健省が制作する保健教育教材の原型となりました。
他にも、11種類の保健の歌や10種類の劇、3種類のゲームやパネルシアター等、数多くの教材があります。最近は下痢と脱水の関係について学ぶ、やしの実ベイビー人形や、布と糸で作る巨大な成長曲線グラフなど、身の回りにあるものを使った新しい教材作りも進んでいます。これらの多くの教材は、保健省の承認を得て3)、学校や保健センター、村の健診の場など様々な場で活用されています。
写真:フリップチャート教材を使う保健スタッフシェアは東ティモールに保健教育を普及させるために、保健に関わる人材育成に取り組んできました。13年間の支援活動により、村の住民から保健省、保健センタースタッフ、教育省の役人まで様々なレベルの人々に人材育成研修を行ってきました(図1)。 研修を開催するだけでなく、その後のフォローアップなど、能力向上と行動変容を促すために継続的な支援も行ってきました。その結果、保健教育を担う多くの人材が活躍し、最終受益者である学校の子どもたちや母子、地域住民が保健教育を受けられるようになっています。
シェアの活動開始から13年を経て、東ティモール人自身の手による保健システムモデルが見え始めました。このモデルを、東ティモール全土(117.6万人、ほぼ山形県規模の人口)に広げることで、東ティモールのMDGsの指標達成に近づくことが期待されます。シェアは、東ティモールの国づくりと二人三脚で、保健医療の課題解決に取り組んでいきます。
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