母子保健を学ぼう!医療通訳者フォローアップ研修を実施
こんにちは。在日外国人支援事業部の山本貴子です。シェアに入って3年半が経ち、今年から医療通訳者向けの研修業務を担当しています。
シェアには現在17言語64名の医療通訳者が登録しており、保健センターや病院などから通訳の依頼があった際に活躍しています。今年度は、新規医療通訳者研修・選考会を2回、医療通訳者フォローアップ研修を3回(第3回は1月開催予定)行っており、医療通訳者への研修が充実できてうれしく思います。今回のブログでは、11月9日(土)に実施しました第2回医療通訳者フォローアップ研修の様子をお伝えします。
医療通訳者から希望が多かった「母子保健」のテーマ
第2回医療通訳者フォローアップ研修は、「母子保健」がテーマでした。シェアが現在母子保健通訳をメインで行っていることもあり、第1回医療通訳者フォローアップ研修後のアンケートで「母子保健」について学びたいという希望が多くありました。研修事前アンケートでも、「母子保健サービスにどのようなものがあるのか、教えて欲しい」「母子保健サービス、手続きの場面で、頻出するような給付金や制度などがあれば、その名称と内容を詳しく学び、通訳準備に役立てたい」といった声がありました。
7月と10月に実施した新規医療通訳者研修で、新しくシェアの医療通訳者になる方々には、スタッフから基本的な日本の「母子保健サービス」について講義をしていたので、フォローアップ研修では、バラエティに富んだ外国人が暮らしていて、シェアの医療通訳も活用されている、江東区城東保健相談所の山本保健師を講師にお招きして行いました。
講義をする江東区城東保健相談所の山本保健師
なんとかなるけど、やっぱり誰かに聞いた方がいい
山本保健師は、研修で「母子保健サービスや手続き」などについてお話し下さいました。妊娠中のことや出産、産後のことについて、日本人でも外国人でも、「なんとかなるけど、やっぱり誰かに聞いた方がいい」もので、「何も聞かないでいると、産んでから大変になってしまう」というお話があり、第一子を出産した後にこんなに大変だとは思わなかった衝撃を思い出しました。
言葉や文化の違いもあり情報が得られにくい外国人妊産婦が、妊娠中に必要な情報を得て、準備して出産に臨めるようにするには、保健医療福祉従事者からの情報提供などを十分に理解できることが大切だと思います。その際に、母子保健について理解しているシェアの医療通訳者が通訳に入ることは、外国人にとっても、保健医療福祉従事者にとっても、助けになると思っています。
「一人の子どもも死なせない」環境づくり
母子保健は、母子保健法という昭和40年にできた法律に基づいて行われており、山本保健師からは、「一人のこどもも死なせない、生まれた子どもが安全で健全に育成する環境づくり」をみんなでやりましょうという法律であると説明がありました。また、「みんなこどもだったし、そしておとなになった。町に住む誰もが母子保健の関係者である」という言葉も伝えてくださいました。
参加者からは「社会福祉のあり方や考え方は様々ですが、同じ社会で暮らしているすべての人が前向きに健康的に生活を送れるように、その社会のみんなが協力し支え合う必要があると感じました」「自分も助けられて今があり、今は自分が人を助けるという言葉が印象に残りました」という感想が聞かれ、参加者の心にも響いたように思いました。シェアの医療通訳者やスタッフも、その地域の母子保健を推奨する一人であるという気持ちをもって、母子保健に関わっていきたいと思いました。
在日外国人の日本のお母さんのように
山本保健師によると、母子保健の対象者は「生まれる前から本当は次の世代まで」であり、綿々と続いていくことになります。妊娠したら、出産したら、どんなことがあり、どんなことを考えればいいか、どこでどんな支援を受ければいいか、が多種多様にあります。それを保健師さんが、情報提供したり、相談に乗ったりして、それぞれの人に合うように伴走して下さっていると感じました。
山本保健師の「おせっかいかもしれないけど、外国人に日本であまり嫌な思いをして欲しくない。日本も悪くないなと思って子どもを育てて欲しい」という言葉や、「通訳さんには日本のお母さんのように接して欲しい」という言葉も印象的でした。参加者からも「コミュニケーションが母子の健康・幸福・安全にとって大切だということが分かりました。知識・スキルを伸ばす一方で、人間性も高めていきたい」との感想が聴かれました。
グループワークで通訳中の困りごとなどを話し合う参加者
新規医療通訳者とベテラン医療通訳者の交流
今回の会場参加者は18名、オンライン参加者は5名でした。7月と10月に新たにシェアの医療通訳者になった方も、何年もシェアの医療通訳者として活躍されているベテランの方も参加していたので、講義のあとのグループワークでは、「母子保健における医療通訳で経験した困りごとや疑問、気になること」を話し合いました。実際に医療通訳の派遣先で経験した困りごとを共有したり、新規の通訳者からこんな時はどうするのかという質問に、ベテランの通訳者が答えたりしました。新規医療通訳者からは、現場の様子が知れる贅沢な時間だったとの感想があり、今後通訳に入る心積もりを持てる機会になったかと思います。
今後も、シェアの医療通訳者の知識やスキルが向上できるよう、医療通訳者の希望や要望を聞きながらフォローアップ研修を企画し、医療通訳者にとって必要な研修を提供できるようにしていきたいと思います。
これからもシェアの在日外国人支援事業を応援していただけると嬉しいです。
※この研修は、WAM助成(社会福祉振興助成事業)のご支援を受けて行いました。
東京事務所 在日外国人支援事業担当
山本貴子
シェアは、いのちを守る人を育てる活動として、保健医療支援活動を現在
東ティモール・カンボジア・日本の3カ国で展開しています。