医療通訳者の必要性を実感~新規医療通訳者研修&選考会に参加して~
はじめまして。今年9月よりシェアの在日外国人支援事業でプロジェクト運営業務を担当している村田です。今回は、初めて参加した新規医療通訳者研修&選考会(10月開催)の報告をします。
シェアでは現在、保健医療福祉従事者が言葉の壁に遮られることなく外国人母子にも納得のいく支援を行えるよう、外国人母子が必要な情報を得て、母子保健サービスにアクセスできるよう、母子保健分野の医療通訳の活用促進に取り組んでいます。その現場で、保健医療福祉従事者と外国人妊産婦や家族をつなぎ、支えて(くれて/くださって)いるのが、シェアの医療通訳者の方々です。
今回は、昨年10月と今年6月に続き、依頼が増加している英語とミャンマー語の医療通訳者を募集するため、新規医療通訳者研修&選考会を開催しました。
英語とミャンマー語の医療通訳者を募集
プログラムは、「シェアが行う母子保健分野での医療通訳の概要・特徴・派遣の流れ」、「母子保健サービス(自治体編・医療機関編)」、「医療通訳の技術と役割」の3講義と通訳演習(ロールプレイ)、と終日充実の内容でした。
母子保健サービスについて説明しているスタッフの山本
英語の参加者はほぼ日本人で、すでに医療通訳を経験されている方も多く参加してくださいました。英語は、昨年より通訳依頼をいただく区/自治体が増えたことにより、アジア・アフリカ出身の妊産婦や母子と英語で話す際の通訳依頼が増えてきています。英語といっても、英語以外が母国語の場合、分かりやすい英語で通訳したり、保健医療従事者に内容に関してわかりやすく説明してもらうことも必要になります。以前、在日外国人の支援に携わった際に、相手の国の習慣や文化等背景の違いを踏まえた上で行政サービス等の情報を提供しなければ、相手は日本のシステムを理解することができないのではないか、と感じたことを思い出しました。
ミャンマー語は参加者も現役通訳者もミャンマーの方でした。日本におけるミャンマー人はここ数年で急激に増加しています。私はミャンマー語のロールプレイに参加しましたが、参加者の医療専門用語を勉強されている様子、現役通訳者に度々質問する医療通訳に対する姿勢から、母子保健の現場で活躍する彼女の姿をすぐイメージすることができました。現役通訳者をお姉さんのように慕いたい、という参加者に、現役通訳者は「厳しくやりますよ」とピシッと言っていました。
ミャンマー語のロールプレイの様子
講義で気づいた医療通訳の特徴
講義の中では、“なるほど~確かに!”と思う話がいくつかありました。
一つ目に、自分のペースで正確にメモを取ることの重要性が伝えられました。医療通訳の現場は、一つの訳の漏れが、患者の命にかかわることもあるのだ、と実感しました。ミャンマー語の現役通訳者の厳しさがここからきていることを理解するとともに、現役通訳者のプロ意識を感じた瞬間でした。
二つ目に、通訳者が気を付けることの中に、通訳者は自らの判断で「言葉を引かない、足さない」という話がありました。例えば、腹痛で盲腸を疑い病院に行ったとします。兆候はあるもののその段階では盲腸の診断がつかず、医師が「盲腸ではないがしばらく様子を見ましょう」と言った場合、単純に「盲腸ではない」という部分のみを伝えるだけではいけません。逆に私が通訳者だったら、患者さんに寄り添いたい、との強い想いから、個人的補足を付け加えて伝えてしまうかもしれません。妊産婦や患者、保健医療福祉従事者の、それぞれの立場や考え、思いに寄り添い、正確かつ円滑に話が進むように通訳をすることが大切なのだと感じました。
「医療通訳の技術と役割」の講義の質問を受ける副代表の沢田
貴重な医療通訳者
このような医療通訳に従事する方々は本当に貴重な存在です。日本の経済発展に向けてますます外国人が増える中、並行して在日外国人が安心して住むことができるようにサポートしていくことは必須です。母子保健分野における通訳の依頼が増えているのも事実です。
困っている在日外国人と日々支援に奮闘する保健医療従事者の歯車を埋める医療通訳者の必要性を改めて実感しました。現在、通訳者の方々との直接的かかわりはありませんが、円滑な通訳事業に向けて陰ながらサポートしてまいります。
東京事務所 在日外国人支援事業担当
村田浩子
シェアは、いのちを守る人を育てる活動として、保健医療支援活動を現在
東ティモール・カンボジア・日本の3カ国で展開しています。