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外国人母子への切れ目のない支援に向けて~3年間の活動を通した気づき~

  • 医療通訳者や保健ボランティアと共に妊産婦や母子の健康をまもる
  • 在日外国人支援
  • 東京事務所 在日外国人支援事業 松尾沙織
外国人母子への切れ目のない支援に向けて~3年間の活動を通した気づき~

みなさんこんにちは。週末のネパール人対象母親学級に初の15人越えのお申込みをいただき、とても嬉しく思いながら、当日上手く行えるのか、今からそわそわし始めている松尾です。

さて、シェアでは2021年4月から2024年3月までの3年間、赤い羽根福祉基金のご支援をいただきながら、東京都内の4区を中心に、母子保健分野の医療通訳の活用促進と、外国人母子支援の課題や対応等を対象地域の保健医療福祉従事者間で共有・連携していきながら、外国人母子支援の充実につなげていくことを目指し、活動してきました。
今回は、この3年間の活動を行う中での気づきや学びについてご報告できればと思います。(事業の詳細は、過去のブログをご参照ください)

外国人母子支援における医療通訳(対面中心)のニーズ

まず、母子保健通訳に関しては、3年間活用を進めてきた中で、通訳依頼は、初年度の77件/年から、3年目は227件/年の約3倍に増加し、依頼元も都内15区と多摩地域へ広がっていきました。保健所・保健センターや医療機関、発達支援施設、ケースによっては児童相談所から通訳依頼をいただき、様々な地域や機関で、母子保健通訳のニーズがあることを実感しています。

母子保健通訳の活用場面は、妊婦健診や乳幼児健診、赤ちゃん訪問等の基本的な母子保健はもちろん、妊娠中から生まれてくる子どもの養育環境を整えていく必要がある特定妊婦の支援や、子どもの発達や医療的ケア児の支援、時にはDVケースの支援まで、妊娠期から就学前を中心に、様々な場面で医療通訳ニーズがあることがわかりました。言葉以外の課題を抱えているケースや、基本的な母子保健の中でも要(かなめ)となるような、対象妊産婦や家族とコミュニケーションをとりながら状況や気持ちを丁寧に確認し、必要な支援を検討したり情報提供を行っていくような場面での、医療通訳ニーズが高いことを実感しています。

また、通訳方法としては、コロナの流行が落ち着いた2023年度は80%以上が対面での依頼となりました。母子保健分野では、保健医療福祉従事者からの説明や情報提供が中心となる場面だけでなく、妊産婦や家族の状況や気持ちを聴いていくことが大切となる場面も多く、そういった場合は、通訳者がそばにいて、妊産婦や母親が安心できる話しやすい雰囲気を作りながら、妊産婦や母親と保健医療福祉従事者の双方に寄り添いながら関わることのできる、対面での通訳が求められているように感じています。

医療通訳を活用した保健医療福祉従事者からは、
「医療的ケアが必要な子どもの支援を、医療通訳を活用しながら行っていく中で、担当保健師だけでなく、関わる関係機関の職員の外国人家族への理解も深まり、各施設で、困難感を感じることなく受け入れが進んだのが良かったと感じている」
「発達支援の場面で医療通訳を活用したところ、保護者も子どものことを心配し、関わり方などを工夫していたことがわかった。その後、保護者と保育園とで子どもの様子や接し方、取り組み等を共有していく中で、双方の関係が深まり、子どもの成長もみられるようになった」
など、医療通訳を活用しながら関わる中で、対象の家族や保健医療福祉従事者の変化に関する感想も寄せられました。

様々な課題を抱える外国人妊産婦や母子がいる中で、必要な時に医療通訳を活用し、外国人妊産婦や家族と保健医療福祉従事者が、言葉の壁にさえぎられることなくコミュニケーションを取り、お互いに理解を深め、信頼関係を築いていくことで、切れ目のない支援につながっていくのではないかと感じています。

外国人母子支援における関係者間での連携の大切さ

活動の中では、対象地域の保健医療福祉従事者の方々と、年に2~3回情報交換の機会を設け、各区の外国人母子の状況や支援の状況、在留資格が不安定なケースや発達支援のケースなどの困難ケースについて共有し、お互いに支援のアイデアや考えを伝えながら、学びや理解を深めていきました。
参加者からは、
「他区の取り組みや、活用している多言語資料、支援時の相談先などの情報を得ることができ参考になった」
「情報交換会に参加し、支援に必要な人を見落とさないよう、妊婦面接で確認する項目を整理していこうと思った」
「マイナーケースは支援事例を積み重ねていくことが、実際のケースワークでも有効であり、今後も事例の共有等を行っていきたい」
等の感想が寄せられました。

外国人母子支援時の課題や対応等を、一つの機関で抱えるのではなく関係者間で共有していくことは、新たな情報が得られたり、考えが深まったり、視野が広がったりするきっかけとなり、お互いの学びや励みになると感じました。また、個々のケースワークへのヒントや、各区や施設での今後の取り組みへの気づきが得られる機会にもなり、支援の充実にもつながっていると感じています。


対面で行った情報交換会の様子

3年間、活動に関わって下さった保健医療福祉従事者の方からは、
「外国人の方の文化や抱えている困難を理解しようとこちらから歩み寄り、『伝える』のではなく『伝わる』ように、お互いに理解し合う気持ちを持って、信頼関係を築いていくことが大切だと考えるようになった」
「その国で育ってきた両親の考えや思いに寄り添いながら、『大丈夫』という言葉で終わらない支援していきたい」
という言葉もいただきました。

この3年間、関わってくださった保健医療福祉従事者の方々や外国人妊産婦やご家族の方からいただいた気づきや学びを大切に、今年度からは活動地域を広げながら、より多くの方々に必要な支援が届くよう、引き続き活動を続けていきたいと思います。


東京事務所 在日外国人支援事業担当

松尾沙織

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