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【カンボジア事業配信】ジェンダーに基づく栄養改善の取り組み

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【カンボジア事業配信】ジェンダーに基づく栄養改善の取り組み

こんにちは。東京事務所の有満です。シェアの活動地であるプレアビヒア州では最近は日中でも20度を超えない日もあり、ナショナルスタッフは「寒い、寒い」と口にしていてほっこりしています。

カンボジア事業ではJICA草の根事業を母体として子どもの栄養改善事業を実施していますが、2024年4月より新たに味の素ファウンデーションさんの「食と栄養」国際支援助成をいただいて、ジェンダーと栄養をテーマにした事業を行っています。本事業では地方公務員である『女性子ども委員』がジェンダーと栄養の問題を理解して力をつけ、栄養価の高いおやつを普及することで、慢性的な予算不足に悩む保健セクターを超えて栄養改善を左右する社会的要因の改善に取り組んでいくものです。

村で離乳食の作り方を教える女性子ども委員(お母さんたちが熱心に耳を傾けています)

ジェンダーと栄養の関係性

世界中でジェンダー平等の取り組みが進んでいますが、その取り組みは道半ばです。ジェンダー平等を推進する際に、よく『ジェンダー規範』という言葉が使われます。ジェンダー規範とは、女性と男性がどのようにあるべきか、どのように行動するべきかについての考え方で(注)、日本でも「男性だから~すべき」「女性なのに・・・」といった会話が日常的に交わされているのではないでしょうか。ジェンダー規範は「女性らしさ」「男性らしさ」といった漠然としたものから、個人の機会を制限してしまうような「女性は家庭にいて子どもの世話をすべき」、「男性は外に出てお金を稼ぐべき」というものがあります。特に途上国ではこういった考え方から、女性が意思決定の場所に参加できなかったり、十分な教育を受けられなかったり、低賃金であるといった格差を生み出しています。また、社会的に優位な立場にある男性にとっても「らしさ」から外れてしまうと生きづらさを感じることも事実です。
(注)女性や男性に属さない多様なセクシャリティへの固定観念も含まれます。

栄養に関して見てみると、世界中の多くの地域で女性が養育者として期待され、家族の食事を用意し子どもの世話を担っています。一方で、経済的に力のある男性が家計を管理し、女性が食料の購入に関する意思決定ができない場合、栄養価の高い食品を購入することができず、女性や子どもの栄養状態が悪くなることがあります。また、食料の分配はジェンダーに基づく力関係の影響を受けることがあります。例えば男性が優先的に栄養価の高い食事を摂ることができる一方、女性や子どもは栄養価の低い食料を摂っている地域もあります。

シェアが活動しているカンボジアの農村地域では、「女性は両親や夫に従うべき」といった社会通念が根強く残っており、お母さんたちが、家庭内で子どもの栄養改善に係る決定権がないという状況も確認されています。例えば、私たちが耳にしたのは、出産したばかりの若いお母さんに対して、年長の女性たちが本来栄養がたっぷりつまった黄色味の強い初乳を「白くないから捨てた方がよい」と言ったり、たんぱく質豊富な魚の身の大部分は家長であるお父さんが食べてしまい、お母さんや子どもたちには十分な量が回ってこないこともあります。

女性は妊娠と出産を経験することで、栄養ニーズが大幅に増加します。妊娠初期から、そして産褥期に十分な栄養を摂取することは母体の健康と胎児の発育にとって重要です。ところが、多くの地域では、社会的・文化的な要因で女性が十分な栄養を摂取できていない場合があります。シェアが昨年の8月~9月に「女性子ども委員」を対象に聞き取り調査を行ったところ、特に年配のメンバーからは「産後直後のしばらくの間は不純なものを摂らない方が回復が早い」「白がゆだけを食べた方がいい」という声も聞かれました。

「女性子ども委員」のエンパワメント!

シェアでは2017年よりプレアビヒア州での活動を実施する中で、活動対象地域の「女性子ども委員」が各コミューンの社会予算を獲得し、離乳食教室を実施できるよう支援してきました。前事業では、お母さんのお腹に子どもが宿ってからから2歳の誕生日を迎えるまでの1000日間がとりわけその後の子どもの成長にとっても重要であることを、女性子ども委員や保健ボランティアが理解し、各村で取り分け離乳食教室を実施することで、これまで離乳食になじみがなかった養育者にも大きな反響を与えることができました。

本事業では、地域のジェンダー課題や子どもの健康・福祉の問題解決を図る女性子ども委員の「栄養」というトピックの知識向上を図り、彼女たちが栄養価の高いおやつの開発と普及に関わっていくことで長期的に女性の社会的役割の拡大と地域の栄養問題の改善をめざしていくものです。また、村での活動として、女性子ども委員と保健ボランティアが協力して、村で定期的に実施している乳幼児健診と離乳食教室に普段は参加しないお父さんや高齢者の参加を呼びかけることで、正しい知識を身に着けた養育者が家庭内で意思決定を行い、自分たちや子どもたちの健康改善のために日々実践していけるようになることも期待しています。

離乳食教室で子どもに離乳食を与えるお父さん(一家の大黒柱として農作業に出なければいけないお父さんの参加はまだまだ珍しい光景です)

次回のブログでは食事調査から見えてきた現地でとられているおやつの状況と栄養価の高いおやつの開発についてご紹介できればと思います。是非また覗きに来てください!

東京事務局 カンボジア事業担当
有満 麻理

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東ティモール・カンボジア・日本の3カ国で展開しています。