電話通訳への取り組み~新型コロナウイルスの感染リスクから医療通訳者を守る~
こんにちは。シェアで在日外国人支援事業を担当しています山本です。 最近は、シェアが発信している新型コロナウイルス感染症関連情報の多言語版の3言語への翻訳調整業務と日本に住む外国人に向けて健康情報を発信するために開設した英語版Facebook(https://www.facebook.com/migranthealth.share.or.jp)の管理に奔走する毎日です。
シェアは、3月25日の東京都知事の会見、そして、政府の緊急事態宣言を受け、3月30日(月)から現在まで、原則在宅勤務の体制をとっています。そのような中、シェアの医療通訳派遣に協力してくれている通訳の皆さんの健康を守るためにも、派遣体制での通訳対応は一時中止せざるを得ない、と判断しました。
東京都から委託を受けて実施している「東京都外国人結核患者治療服薬支援員(医療通訳)養成・派遣事業」は派遣での通訳が原則なのですが、緊急事態ということで、一時派遣見合わせの後、都と協議の上、現在は保健所の協力を得て電話通訳での対応を取っています。
また、現在いったん停止しているシェアの「外国人医療電話相談窓口」を再開できましたら、結核以外の医療通訳ニーズに電話通訳という形態から再開していく方向で協議を進めているところです。
電話通訳という形で再開すると決めるまでには、シェアとしてもいろいろ議論を重ねました。保健所や病院などの保健医療従事者は対面通訳を好みます。対面通訳のほうが、通訳が患者の理解状況などを患者の表情の変化や空気を読みながら進められるため、理想的な通訳形態となります。シェアとしても、対面通訳を推奨し、原則、対面通訳だけに対応してきました。電話通訳は新たな試みのため、シェアとしても新たな学びと経験を得ていく必要があります。
現在、電話通訳体制の検討を進めている中で、保健医療現場からは、
「電話ではなく、派遣してほしい。」
「これまで派遣できていたのに、なぜできないのか。」
というような声が聞かれました。
医療通訳者は、現場で保健医療従事者とともに通訳業務を行うため、保健医療従事者は、新型コロナウイルス感染のリスクがある中でも、保健医療従事者のニーズに合わせて“医療職”と同様に行動するものだ、という発想を持つ、ということを改めて認識しました。
一方で、医療通訳者の中には、医療職のように病院や通訳派遣団体に雇用されているわけでもなく、感染した際に労災適用がされない人も少なくありません。自分で身を守るしかないのです。また、保健医療機関側は、医療通訳者に高い質を求める割に、医療通訳者をいまだにボランティアで活用できることを願っている現状はあまり変わっておらず、医療通訳者は報酬の面でも十分には保証されていません。医療通訳の仕組みは、医療通訳者たちのボランティア精神に頼って成り立っているのが現状です。
シェアは、医療通訳者たちの置かれている現状を保健医療従事者に伝えていくこと、そしてほかの医療通訳関連団体と連携し医療通訳者の健康を守っていくことも重要な役割だと感じています。
現在、母子保健活動のご支援をいただいている立正佼成会一食平和基金さんがご縁をつないでくださり、4月に中国仏教協会から在日外国人支援事業の活動のためにマスクを600枚ご寄付いただきました。
その時期、マスクが手に入らず、移動中や派遣先で通訳の皆さんが感染リスクにさらされるのではないか心配していた頃でした。その直後、通訳派遣を一時中断し、電話通訳体制をとるかどうか協議をしていた時期で、マスクをいただいたままになっていたのですが、5月18日に当会の医療通訳派遣活動に協力してくださっている51名の皆さんにマスクを10枚ずつ送ることができました。
ソーシャルディスタンスに気をつけながら発送準備をしている廣野と山本
医療通訳のみなさんは、シェア以外でも様々な団体からの依頼で通訳ニーズに応えています。ほぼボランティアでの対応で、健康管理面の補償がないにもかかわらず、患者さんや対象者が困っている現状を考え、対面通訳ニーズに対応している、という方もいらっしゃいます。対面通訳によって対象者が喜ばれると、対面で対応してよかった、という声も聞かれました。
早く対面通訳が再開できる日を待ち望みつつ、この機会をチャンスととらえて、医療通訳に携わる人たちの待遇の改善にもつながっていけばよいと感じています。
シェアは、いのちを守る人を育てる活動として、保健医療支援活動を現在
東ティモール・カンボジア・日本の3カ国で展開しています。