【東ティモールスタッフの赤裸々告白】悩み多き保健ボランティア活動~在日外国人支援事業担当 山本裕子さんからの学び~
日本の皆さんこんにちは!私の名前はオクタビオです。オクトと呼んでください。バスケットボール日本代表、パリ五輪出場おめでとうございます!!私はもう37歳になりスポーツはあまりしなくなりました。でもスポーツの観戦は今も好きです。次のオリンピックでは日本バスケットボールチームを応援しようと思います!
そしてまたもや台風が接近中とのこと、被害が最小限であることを祈っています。
保健ボランティアの存在について、皆さんご存知ですか?東ティモールの各村にいる保健ボランティアは、住民に一番近い存在で、保健施設への訪問をサポートしたり、医療者と共に移動診療に行き、診療の手伝いをしたりします。また、私たちが研修を通して保健に関する知識を提供し、取得した知識を保健ボランティアが住民に伝えています。彼らの健康促進活動はシェアの事業目標達成のカギにもなりますので、研修を提供した後は、シェアスタッフからのフォローアップを行うことが欠かせません。
フォローアップ活動
【健康促進活動を実施するにあたり課題は何か、どうすれば解決できるかを聞き出す】
7月、シェア東京事務所から山本裕子さんが2週間滞在されました。裕子さんはシェアで在日外国人支援事業の職員として、在日外国人が医療を受けやすくするため通訳ボランティアを派遣したり、外国語での母親学級を開催するなどの活動を行っています。彼女は海外で長く保健ボランティアと関わってこられた経歴もあり、その専門性を活かして、今回の渡航では、シェア東ティモールが支援している保健ボランティア活動の実際を把握してもらったうえで、保健ボランティア研修に向けた教材作成を手伝っていただきました。また、裕子さんからシェアの在日外国人支援事業や保健ボランティアとの関わりもレクチャーしてもらい、私たちスタッフが今後保健ボランティアとどう関わっていくかについて考えることができる機会でした。
私は裕子さんと一緒に保健ボランティアを訪問し、インタビューを行いました。地域にどんな病気が流行っているか、健康促進活動を実施する上での課題、住民との関り、シェアに期待すること、保健センターに期待することなどを尋ねました。
裕子さんによる保健ボランティアインタビュー【詳細に質問されていました】
とある保健ボランティアは、「情報を提供したい気持ちはあるけれど、住民にも生活があって、予定を伝えても忙しいと言われてしまい健康促進活動ができない」と言っていました。彼らのいう事も正しいと思い、フォローアップ活動の中でこのような回答をされた際、私は「1人でも数人でも良いから、たくさんの人を集めず、家庭を訪問して情報を提供すれば良い」や、「3日前くらいに予定を伝えれば住民たちも情報を取得する準備ができるはずだ」などと提案をしていました。
でも、ボランティアからの答えを受けた裕子さんは、さらに「地域で流行っている病気は何か?」「どんなトピック選んで健康促進活動をしているのか? 」「何日前に予定を伝えているの?」や、「場所やトピックについて予定を伝えるときに話している?」など、さらに詳細を尋ねていました。
裕子さんと保健ボランティアとの関わりを見ながら、相手の気づきを促す話し方ってこういうことか!と気づきました。以前の私の関わりでは、私からの提案を聞いても、保健ボランティアは黙ったり、「そんなこと言われてもわかっている」などと言われてしまい、どうすれば良いのかわからないことがありました。相手の状況を詳しく質問し、掘り下げていくことで何が課題なのかが具体的になり、それは私たちだけでなく、インタビューされていた保健ボランティアも話しながら課題に気づいたようでした。裕子さんからのインタビューを受けたボランティアの中には、その後、行動を変えた方もいました(数日前に予定とトピック、場所、開始時間を住民に伝え、健康促進活動が実現した)。私たちからのフォローアップを通して、彼ら自身が気づくことが行動変容に繋がるのに、私はいつも私目線の提案ばかりをしていたことに気づきました。今後は気づきを与えるような質問をしていきたいと思っています。
インタビュー後の裕子さんと保健ボランティアたち
私は保健ボランティアの活動を担当するようになってから、ずっと、どうすれば継続性のある活動になるだろう?と考えてきました。
私たちシェアは、保健ボランティアに対し、インセンティブをお金で渡していません。ですが、NGOによってインセンティブは違います。お金を払う団体がほとんどですが、シェアは知識を提供し、地域にいる村長や集落長・そして村の医療者など影響力のある人と繋がりをつくり、保健ボランティアたちが自信を持って活動を続けられるようにするという「お金以外の価値」をインセンティブとしています。
保健ボランティア研修の様子【研修で得た知識を提供するするために、演習も真剣です】
保健ボランティア研修の様子
【研修で得た知識を提供するするために、演習も真剣です】
他のNGOのようにインセンティブをお金で与えられたら楽だろうと思うときもあります。インセンティブをお金で支払うことで、健康促進活動を行うモチベーションが上がり、実際にボランティアが活発になっていることは事実だからです。保健ボランティアから「シェアはお金をくれない。私たちの生活を助けてくれないのか」と言われることもあります。他にも、仕事を見つけ、保健ボランティアとしての活動をしなくなってしまう人もいます。生活のために仕方のないことですが、保健ボランティアの先にいる母子や住民のことを思うと、残念な気持ちになります。
お金をあげちゃえば楽だよなぁという気持ちと、いやいや、継続性を考えないと…という気持ちが私の中で交錯しています。彼らの生活を助けるためにお金をあげた方がいいのか…、それとも去る者は追わず、新しい保健ボランティアを探した方がいいのか…。日々悩みながら活動を行っています。
保健ボランティアによる実際の健康促進活動はこんな様子です
みんな興味津々に聞いていますね
シェアは私たちスタッフが直接情報を母子に伝えることはしていません。それはサスティナビリティがないからです。私たちNGOがずっと同じ場所で活動を継続することはできません。そのため、村で引き続き情報を提供し続けられる彼らが大切な存在です。
研修休憩中に談笑するオクトと保健ボランティアたち
少し暗いブログになってしまいました、すみません(笑)。現在、新たな知識の提供のため、裕子さんと作成した研修教材を使い、保健ボランティア研修を実施している真最中です。村で健康促進活動実施をするために研修で練習をする彼らを見ると、自分も頑張ろうと思えてきます。今後もやはり継続性を考え、日々悩みながらでも活動していきたいと思います!
シェア東ティモールに引き続き応援をお願いします。そして裕子さん、気づきをありがとうございました。
オクタビオ・コルテ‐レアル(Octo)
フィールドオフィサー
シェアは、いのちを守る人を育てる活動として、保健医療支援活動を現在
東ティモール・カンボジア・日本の3カ国で展開しています。