2023年6月に成立した入管法の改定(改悪)を機に入管法について考える
こんにちは、代表理事の仲佐です。在日外国人支援事業には担当理事としても関わっております。今回は、残念ながら6月に成立してしまった入管法改定(改悪)をきっかけに、入管法について整理し、考えてみました。
入管法は、「出入国管理及び難民認定法」のことで、本邦に入国し、又は本邦から出国する全ての人の出入国及び本邦に在留する全ての外国人の在留の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続を整備することを目的とした法律です(出入国管理及び難民認定法より)。
戦前の日本では警察及び公安により出入国を管理していたため、日本の移民管理は警察国家型に属していたと言われています。その後、戦後に米国型を参考として制定され、民主型に変更されたと言われていますが、その実態は、「あまり、外国人は入れたくない」という考えのもと、外国人を排他的に管理していくことが基本方針となっていると考えられます。
1982年からは、ベトナムやカンボジアなどアジアの難民の増加に伴い、日本は難民条約・難民議定書に署名し、難民も受け入れることになりましたが、その後も難民認定率は2019年まで1%以下と他国に比べて極端に低い状況です(出入国在留管理庁より)。
2023年7月時点で、入管法には、29個の在留資格が存在しています。それぞれ、就労資格の有無や就労先が限定的かどうか、在留可能な期間などが異なっており、とても複雑で、これらを理解することは日本語ネイティブな日本人であっても容易ではありません。
日本で暮らす外国人は、在留資格の更新を申請しても認めてもらえなかったり、更新をし忘れたりすると、在留資格がなくなってしまい、住民登録から外れ、健康保険の更新ができず、生活に支障をきたしてしまいます。また、在留資格が切れ、オーバーステイ状態で生活していることを入管が把握すると、入管施設に収容されることもあります。
在留資格と就労
2019年の入管法の改定では、新しい在留資格「特定技能」が創設されました。日本の少子高齢化による人口減少と深刻な人手不足という問題に対し、外国人受入れの政策を見直し、拡大することで、人手不足を解消しようというものです。「特定技能」では、これまで政府が認めてこなかった“単純労働”を含む幅広い業務で就労が可能となりました。
この在留資格は、「技能実習」の在留資格で最長5年働いたあと帰国するしかなかった技能実習生に対して、条件をクリアすることで「特定技能」の在留資格に移行し、働き続けられるようにすることが最大の目的でした。この在留資格ができた当初は、移行の条件となっている試験等のハードルが高いなどの理由で、「特定技能」の在留資格を得られる人は少なく限定的だったようです。その後、条件を見直したり、コロナ禍で帰国できない技能実習生が増えるなどいろいろな変化が起きたことから、「特定技能」の在留資格で働いている人は増えています。
このように日本は、労働力を増やすために新たな在留資格を加えた一方で、2021年には、政府により、在日外国人の管理を厳しくするため、新たな入管法改定案が国会に提出されそうになりました。しかし、入管施設に収容されていたスリランカ人女性が過酷な扱いを受けて死亡した事件をきっかけに、改定案への批判が高まり、結果としてこの改定案の提出は取り下げとなりました。
それから2年、残念ながら政府の入管法改定(改悪)の意思は固く、2023年6月には、基本的な構造はかわらない改定入管法案が国会に提出され、成立してしまいました。改定入管法は、次のように、難民を虐げ、在留資格のない人の命を危うくするものであり、改悪といえるものです。
入管法改定案の問題点 https://migrants.jp/news/voice/20230307.html
移民の受け入れに積極的なドイツの場合は、国や州が責任を持って、移民や難民に最低限の衣食住や言語、職探しのサポートを提供し、ドイツの生活に馴染めるように支援を行っています。他方、日本では、労働力は欲しいが「移民」は受け入れていないという姿勢が続いており、国としての支援体制が充実していません。来日した移民や難民申請者は自らの力で日本社会に慣れることを強いられるため、孤立し、困難な状況に追い込まれていってしまいます。
この改定入管法により、新たな問題が出てくる可能性は大いにあると考えられます。在日外国人の人権が無視され、非人道的なことが起こらないことを心から願っています。
代表理事 仲佐 保
シェアは、いのちを守る人を育てる活動として、保健医療支援活動を現在
東ティモール・カンボジア・日本の3カ国で展開しています。