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地域とともに歩む医療の未来を考える

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地域とともに歩む医療の未来を考える

こんにちは。カンボジア事業インターン生の櫛渕です。
11月23日、SHAREの元代表理事本田徹さんの講演会に参加させていただきましたので、今回はその様子をお伝えします。

講演会は1部2部に構成され、1部は本田徹さんによるプレゼンと2部は3名の参加者とトークイベントの形式で行われました。本田さんは、国内外の困難な環境でプライマリヘルスケアを実践されてきた医師です。現在も75歳を超えて、福島の限界集落で唯一の常勤医として活動を続けています。本田さんの講演は、プライマリヘルスケアの理念に基づく活動、医師としての歩み、そして福島の抱える課題に至るまで、多岐にわたる深い内容でした。その中で印象に残った3つのテーマを共有します。

1.プライマリヘルスケアの理念を実現するために

プライマリヘルスケアには、「Inverse care law(逆ケアの法則)」という重要な課題があります。困窮している人ほど必要なケアを受けられないという現実は、人権問題にほかなりません。本田さんは、アルマアタ宣言の理念を基に、全ての人に医療を届けるために医療者が「出向く」ことの重要性を強調されました。
たとえば、農村地域では、単に医療機関を設置するだけでは解決できない問題が山積しています。本田さんは、その土地に根ざし、住民とともに生活することで、ニーズを汲み取り、現地の課題に寄り添った医療を実現されています。また、プライマリヘルスケアの最終的な目標として、現地の人々が自立して医療を提供できる仕組みを構築する重要性も指摘されました。これは、本田さんご自身が長年SHAREの活動を通じて追求してきた理念でもあります。

私は医療従事者として、このようなプライマリヘルスケアの根本理念を常に胸に刻み、自分の知識やスキルを社会的に弱い立場にある方々のために活かしたいと強く感じました。

2.医師としての歩み:人々とともにある医療

本田さんのキャリアは、プライマリヘルスケアの理念を体現したものと言えます。国内では山谷地区で生活保護を受ける高齢者の訪問診療に取り組み、震災後は福島に移住して現地医療に貢献されています。

特に印象的だったのは、「その地に暮らし、患者の家や村に出向き患者と向き合うことでしか理解できないことがある」というお言葉です。医師が患者の生活環境を深く理解し、彼らとともに歩む姿勢は、単なる医療提供を超えて信頼関係を築く鍵となります。このような実践には、知識や技術以上に、誠実さと情熱が求められます。

私自身、患者との向き合い方について日々考えさせられることがありますが、本田さんのようにその地域に根ざし、人々とともに生きる姿勢を目標としたいと思いました。



地域医療の原点を話している本田さん


3.福島が抱える複合的な課題

福島では、過疎化や高齢化が進む中で、震災と原発事故が追い打ちをかけました。住民は医療機関や保育施設の不足、放射能への不安、仕事の喪失など、多くの課題に直面しています。その結果、特に若い世代が地域を離れ、さらなる過疎化が進行しているのが現状です。

震災後の特別措置として医療費が公費負担となっている状況も、今後この対応が終了すれば住民票を移す人が増え、地域医療の基盤がさらに弱体化する懸念があります。本田さんのような献身的な医療従事者が支える限界集落の医療も、持続可能性の観点からは厳しい現実が残ります。これらの課題に対して、個人として何ができるのかを考え続ける必要があります。

若い世代へのメッセージ

本田さんは講演の最後に、「国内にも海外にも困っている人がいる。その境界線にとらわれることなく、どこにいても患者さんのためにできることをすればいい」と話されました。この言葉には、国際保健と国内医療の両方を経験された本田さんならではの視点が反映されています。医療の分野では、両者を補完し合いながら課題解決に取り組む姿勢が求められているのだと改めて感じました。



本田さんと講演会に参加してくださった3名の若い参加者が対談している様子


おわりに

今回のイベントを通じて、地域医療の現場で奮闘する医療者の姿や、そこに生きる住民の声を知る貴重な機会を得ました。本田さんの歩みは、プライマリヘルスケアの理念の実践者としての模範であり、私たち医療従事者が見習うべき姿勢そのものです。

私自身、SHAREのカンボジアオフィスで半年間インターンをさせていただきました。その中で、栄養不足により重度低栄養(消耗症)の状態にある子どもたちに出会い、強い衝撃を受けました。彼らの栄養状態を改善するためには、日本での常識や知識だけでは不十分であり、まずは現地の人々の文化や価値観を深く理解することが欠かせません。現地の方々に教えを乞い、彼らの視点に立ち、共に問題に取り組むことで初めて役に立つことができる――本田さんの話を伺いながら、この大切な姿勢を改めて痛感しました。

インターンを通じて、自分自身の無力さや未熟さを痛感した経験に対する、偉大な大先輩からのメッセージ、応援を本田さんの公演でいただきました。だからこそ、少しでも人々の役に立てるような医療者になるために、今後も努力を重ね、学び続けていきたいと思います。

医療者として、問題を正確に理解し、風化させず、情報を追い続ける。そして日々の実践に誠実さをもって臨むことが、自分にできる第一歩だと感じました。今後もSHAREの理念のもと、プライマリヘルスケアの実践に少しでも貢献できるよう邁進していきたいと思います。

シェア海外事業 インターン
櫛渕澪

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