保健師が行う外国人支援とは?難しいけどおもしろい!?~インターン企画~
こんにちは。2022年度のインターン牧です。
シェアでは毎年インターン期間に、活動の集大成として「インターン企画」というミニプロジェクトを行っています。
私はインターン活動を通して、保健医療従事者の方々が、日本人とは異なる外国人の支援に日々試行錯誤しながら取り組んでいらっしゃるということを知りました。そこで、今回は杉並区の保健師であり外国人妊産婦の支援に精力的に取り組まれている保健師の次郎丸さんにインタビューを行い、外国人への支援の難しさやおもしろさ、支援の実際などについて伺いました。
新人当初感じた外国人支援の難しさと現在
現在保健師4年目の次郎丸さん。新人の頃は、外国人妊産婦を支援する中で言語や文化の壁にあたったそうです。
「言語については、伝えたいことがあってもなかなか伝わらないし、相手も伝えたいことがあるんだろうけど、こちらも汲み取ってあげられないということがありました。
文化については、お国柄やご家族のことなど背景が見えづらい中で、どうやって支援を行っていけば良いんだろうと感じていました。」
そして、言語や文化の“壁”の存在により外国人への支援に苦手意識を感じていたと言います。ですが、外国人への支援の経験を積み重ねたことや、以前杉並区とシェアが協働で行ったネパール人向け母親学級に携わり、ネパール人妊婦さんに食生活や歯の衛生、妊娠・出産への考え等についてインタビューを行い、それを活かして母親学級を行った経験などにより気持ちに変化が見られたそうです。
「今は、難しいケースを扱う時は気持ちが重くなることもあるんですけど、それと同時にワクワク感も感じていて、気持ち的に新人の時と比べると変わってきていると思います。」と、現在は、支援を行う上でのおもしろさをも感じていることを話してくださいました。
言語の壁、文化の壁への取り組み
言葉の壁や文化の壁に対して、どのような取り組みをされているのかを次郎丸さんに伺いました。
「まず言語に関する取り組みについて、ご本人やパートナーが日本語で少しでも会話ができる場合は、できるだけ、やさしい日本語を使って話したり、何度も繰り返し伝えたりすることを意識しています。あとは、電話ではなく対面の方が伝わり易いことが多いので、対面で会えるようにコンタクトをとることもあります。日本語で会話をすることが難しい場合や、話を詳しく聞いたり伝えたりする必要がある場合には、保健センター内にある通訳タブレットを使ったり、シェアさんに通訳の方の派遣をお願いして関わってもらったりすることが多いです。」
とご自身の工夫やツール・人材の活用等により言語の違いに対応している次郎丸さん。
文化の違いに対しては、
「例えば杉並区に多く住まれているネパールの人達は赤ちゃんにオイルマッサージをする等の慣習があります。このような相手の文化は否定せずに、私たちが寄っていくというやり方で、日本ではこういう方法もあるよというところを伝えています。」
と、相手の文化を受け入れ日本式を押し付けないようにしていると話してくださいました。
複合的な課題を抱えるケースにどのように取り組むか
保健師が担当するケースの中には、言語や文化の壁だけでなく、保健医療ニーズがあったり、在留資格等の外国人特有の手続きに支援を必要としたりするなど、課題が複合的に重なっている事例があるそうです。今までに担当した中で支援が難航したケースとそれにどのように対応したかをお聞きしたところ、あるご家族のケースについてお話ししてくださいました。
そのご家族はお子さんが早産で生まれ、医療的ケアが必要になる可能性があったと言います。また、在留資格の更新時期が迫っていたものの、当時母親と父親に仕事がなく、在留資格の更新が困難だったそうです。そのため、病院のソーシャルワーカーさんに相談して、在留資格が延長できるよう医師に意見書を書いてもらったり、医療的ケアが必要となる場合を想定して家の環境を整えたり、杉並区交流協会に相談して就労のための相談窓口につなげたりなど、他職種・他機関と連携を図りながら支援を行ったと教えてくださいました。
インタビューを終えて
言語や文化の壁に加え、時に課題が幾重にも重なっているケースに対して、保健師は対応方法の工夫や、ツール・人材の活用、他職種・他機関との連携などを組み合わせながら支援を行っていることが分かりました。
そして、「言葉が通じないから」、「文化がわからないから」と諦めるのではなく、意思疎通が図れない場合は訪問に行ったり通訳を活用する、文化的な違いがある場合は、まずそれを受け入れたり理解しようとするなど、積極的かつ相手を尊重したアプローチをされていることが印象的でした。
また、支援が難航したケースへの対応について聞かせていただく中で「保健師はこんなにもいろいろな職種の人々や機関と連携を図りながら支援をしているのか!」と驚くと同時に、連携が生む力の大きさを感じました。
医療従事者の方々の中には、冒頭にお話しいただいたような外国人支援への苦手意識を抱える方が少なくないかもしれません。ですが、今回のインタビューを通して、いろいろな人と連携を行い、その知恵やノウハウを活かすことで、苦手意識が少し緩和されるのではないかと考えました。
シェアでも保健医療福祉従事者の方々と情報交換会を行っており、今回のインタビュー内でも「情報交換会には、今まで知らなかった支援の方法を知ることができたり、他にも外国人の支援に苦労している人がいることが分かって支援者として気持ちが楽になったりするという側面があると思います。」とお話しいただきました。
例えばこのような機会を通して、関係者や関係機関との連携が促進され、情報交換が活発化することで、医療従事者の方々にとって、より外国人対象者を支援しやすい仕組みが整っていけば良いなと感じました。
何よりも、目の前の対象者に何ができるかを考えながら真摯に取り組み、また積極的に連携を図る姿勢を、今後私も社会人として働く上で大切にしたいと思いました。
インタビューにご協力してくださった次郎丸さん、本当にありがとうございました!
文責:在日外国人支援事業 インターン
牧 愛海
シェアは、いのちを守る人を育てる活動として、保健医療支援活動を現在
東ティモール・カンボジア・日本の3カ国で展開しています。