カンボジアの結婚事情
こんにちは。東京事務所の有満です。カンボジアでは2月9日から旧正月のお祝いが始まりました。シェアの活動地であるプレアビヒアでも、爆竹の音とともに旧正月が幕を開け、家族や親せきが集まってごちそうを食べたり、音楽をかけてダンスを踊ったり、大変賑やかにこの日を祝います。
今月のカンボジアブログは昨年の東ティモール事業の記事に触発された私が、カンボジアの結婚にまつわるお話をお届けします。カンボジアでも、結婚式は二つの家族が一つになる一大イベントで、盛大に行われます。また、経済発展が目覚ましいカンボジアでは、最近の結婚事情も年を追うごとに変化しています。コロナ禍に挙式したカンボジア人の友人チュンレンを例にご紹介していきたいと思います。
カンボジアでも結婚式は一大イベントです
養育者の行動変容については、これから介入していくチェープ郡のコミューン女性子ども委員さんからも「子どもたちはスナックが好きでご飯を食べない」、「両親が農作業に忙しく栄養改善に注力できない」、「母親に食事指導しても子どもが受けつけないのであきらめてしまう」などの懸念が共有されました。また、現地では子どもの下痢症などの衛生課題もあり、シェアはこれからカウンターパートに向けて栄養教育・衛生教育についてしっかり働きかけていく予定です。
カンボジアでも両親や親せきが結婚相手を決めるいわゆる「お見合い」の仕組みがあったのですが、現在では恋愛結婚が主流になってきています。出会いの場は、学校、職場、旧正月等のイベントなど様々です。カンボジアでは、カップルが結婚前に同棲することは良しとされないなど、まだまだ保守的な部分もあります。今回結婚式の様子をご紹介するチュンレンは環境系NGOで勤務しており、現在のパートナーとは職場で出会ったそうです。ちなみに、カンボジアの初婚年齢は女性が平均21.5歳、男性が平均24.4歳(Cambodia Demographic and Health Survey, 2022)と、結婚年齢がかなり若いことが分かります。
チュンレン(右)とパートナーのブロス(左)
自然が大好きな二人はビーチによく出かけます
古来、結婚を望むカップルは、男性が女性の実家で3ヵ月間生活し、女性の家族から結婚の了解を得ていたそうです。この伝統は今では廃れていますが、家族の関わりは今でも続いています。女性の家族がお寺に行って誕生日をもとに結婚相手との相性を占ったり、男性がコミュニティや家庭の中で発言力のある年上のおじさんやおばさんに相談し、おじさんやおばさんから女性の親に結婚の許可をとりつけたりします。ここで合意が得られれば、婚約に至ります。婚約式では男性から女性の実家にお金が渡されます。この金額については最初に結婚の許可をとりつけた時点で決まります。ここで支払われるお金は、結婚式の資金に充てられることが多いそうですが、相場は首都プノンペンだと1万ドル(約150万円)から3万ドル(約400万円)と高額です。農村地域では、この金額はぐっと下がります。
女性の家族がこのように高額な結納金を希望するのも、自分の娘が経済的に苦労してほしくないと願ってのことです。チュンレンのパートナーは、しっかり働いて彼女を幸せにすることを約束し、今ではそれまでの3倍の月収を稼ぐまでになり、彼女の両親を安心させることができたそうです。
婚約が終わったらいよいよ結婚式の日取りを決めていきます。日本では結婚式は通年で行われているイメージがありますが、仏教徒が9割を占めるカンボジアでは、結婚式も仏教が重要な役割を果たします。結婚式の日取りは僧侶や占い師に慎重に決めてもらいます。挙式は雨安吾(Buddhist Lent)の時期は避ける必要があり、今年は7月25日から10月21日の間に該当します。この時期はちょうど雨季にあたりますので、結婚式が行われることはほとんどありません。結婚式が11月以降に集中していたり、週末ではなく、月曜日や火曜日が多いのも、仏教の教えや縁起を大切にするカンボジアらしいと言えます。
結婚式は新婦の実家で行われることが多く、式当日は新郎とその家族が縁起のいいお肉や果物を手に新婦の自宅まで練り歩きます。伝統的に、カンボジアの結婚式は3日かけて行われていましたが、忙しい現代では1日や1日半で行う家庭が多くなりました。チュンレンはコロナ禍ということもあり、半日の簡素化した結婚式を行いました。
結婚式会場となる新婦の実家までパレードする新郎とその家族
結婚式は8種類ほどの複雑な儀式で構成されます。ここでは印象的な儀式を一つご紹介します。カンボジアは前述したとおり仏教国ですが、伝統的な結婚式やお葬式では、ヒンドゥー教の儀式を取り入れています。カンボジアで最も有名なヒンドゥー教寺院として、アンコールワットを思い出される方もいると思います。Gaat Sahという散髪の儀式では、新郎新婦がDevada(ヒンドゥー教の女神)の祝福を受けて散髪し、心も体も清めて、新しい人生をスタートできるようにという願いが込められています。もっとも、現代の結婚式では、実際には散髪は行わず、招待客が新郎新婦の髪を切るふりをしたり、髪を数本だけカットするというスタイルになっています。すべての儀式が終わると、大音量の音楽とともに参列者が遅くまでダンスや歌を楽しんだりするのもカンボジア風です。
家族思いのチュンレンにとっては、両親が「自分たちと同じように娘を愛してくれる人と結婚してくれた」と安心してくれたことが嬉しかったそうです。彼女にとっての結婚とは、相談する相手や安心できる場所を見つけるだけではなく、相手の幸せを願って行動できるようになることだと言います。また、結婚を決めたのは、彼女がサポートすることで、彼が良い行い・良い選択ができることを確信したからだそうです。私もこの話を聴いて心が温かくなりました。
“For me, being a wife is not only seeking for personal consultation or comfort when I’m weak, but also to take care of and give someone as much as I can to make their life better.”
Chhunleng Huot
最後に、本ブログ執筆にあたって写真や情報を惜しみなく提供してくれたチュンレンとカンボジアの友人に感謝いたします。
東京事務所カンボジア事業担当
有満麻理
シェアは、いのちを守る人を育てる活動として、保健医療支援活動を現在
東ティモール・カンボジア・日本の3カ国で展開しています。