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(認定)特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会 シェアは、保健医療を中心として国際協力活動を行っている民間団体(NGO)です。

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vol.7アフガニスタン

旅する世界の保健室

One flower does not make spring(一輪の花では、春にはならない)

アーモンドの花。春になると、桜に似たアーモンドの花が咲き、芍薬の様な大輪の薔薇の花が咲き誇る。3月に正月を迎えると、カブール市の動物園の入口には入園を待つ家族連れが長蛇の列を成している。この風景は、対外的には危険だと思われているアフガニスタンの春の光景である。シルクロードの中間地点として、文化の十字路と言われ豊かな国であったアフガニスタン、そして侵略と内戦による破壊と再生を繰り返してきたこの国は、新たな再生を図ろうと模索している。未だ、政情不安定の中でも、人々はかつての豊かなアフガニスタンの生活を取り戻そうと必死で生きているように見える。

私は現在この地で、JICA(国際協力機構)結核プロジェクトで結核の啓蒙活動に携わっている。アフガニスタンの保健状況は厳しく、妊娠・出産で亡くなる女性の割合は世界で2番目に高く、5人に1人の子どもが5歳未満で亡くなっている。結核に罹る率は世界で22番目に高く、毎年約10,000人が結核で亡くなっている。他の国に比較して、15?44歳の妊娠・出産をする女性の結核に罹る割合は、他の年齢層・男性と比較しても圧倒的に高い。なぜ、アフガン女性が結核に罹る割合が高いのか?アフガン女性を取り巻く状況は、宗教・文化・歴史・民族・政治・経済などの要因がクモの巣のように複雑に絡み合っている。様々な要因が考えられているが、まだ、確固とした原因は明らかになっていない。予測されるひとつの要因として、若い年齢での初産・出産間隔の短さ・出産数が多いことによる、免疫力の低下が感染し発病し易くしているのではないかと考えられている。また、女性は、マハラムと言う身内男性の付き添いなしでは、外に出ることが制限される為、同じ空間の中で女性が一緒に過ごす事が多いことも挙げられている。

この状況分析をアフガンでも最も保守的と言われるパシュトン人が多いナンガルハル州で、村の自治会や婦人会の人達から聞き取りをし、始めている。結核に対する住民の認識は低く、誤解や偏見もある。女性の結核患者は、自分が住む村近くの保健センターで治療を受けることを避け、遠く離れた市や郡で治療を受けている傾向がある。なぜなら、結核と知られることで、離婚をされ、婚約を破棄されることを防ぐ為である。実際、村で男性や子どもの結核患者に会うことはあったが、女性結核患者には会えたことはない。

クリニックでの女性結核患者への健康教育。結核に対する認識は、宗教指導者や地方政治家でも高くはなく、誤解も持っている。地域での結核に対する知識と認識を高める為には、影響力を持つ宗教指導者や村の自治会・婦人会が変化して行くことが住民の変化への鍵となる。現在、宗教指導者に結核に対する知識と認識を高めるトレーニングを始めている。このトレーニングを担当している結核研究所のスタッフ達との啓発活動のスローガンは、アフガニスタンのことわざである「Bae yeak gul bahear namesaewaed:一輪の花では、春にならない」を使っている。人々が変化して行くには、一輪の花が咲くだけでは難しい。自然は再生をし、花が咲き誇るアフガニスタンが、いつかは一輪の花ではなく、国全体が春になる日が来ることを信じて活動を続けたい。
写真:クリニックでの女性結核患者への健康教育。


シェア会員、JICAアフガニスタン結核プロジェクト・フエーズ2職員 植木光
機関誌「Bon Partage」No.148(2010年7月)掲載
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