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(認定)特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会 シェアは、保健医療を中心として国際協力活動を行っている民間団体(NGO)です。

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vol.5インドネシア

旅する世界の保健室

同僚の横顔 ―インドネシアでワーク ライフ バランスを思う

「リョウコ、インドネシアはサンタイ(のんびり、ゆったり)だからね。」赴任した県保健所で、若い同僚から最初に言われたコトバでした。私は、青年海外協力隊の保健師隊員としてインドネシアの南スラウェシ州パンケップ県保健所に派遣されています。現在、赴任して3ヶ月半を過ぎたところです。

任地は赤道付近の熱帯雨林気候、年中常夏です。まったりとした暑さの中で、前述のコトバ通り、人々はゆったりしています。出勤時間1時間の遅刻や早退は当たり前。室内が暑ければ外に出て涼み、おしゃべりに花が咲く。また、職場に子連れ出勤も当たり前。母親も父親も学童期前の子どもを連れてやってきます。厳つい人事課長の男性は、手をつないで娘を連れてくる日、表情がとっても穏やかで、嬉しそうです。同僚たちや保健所への訪問者、売店のスタッフが子どもの相手をする姿は日常の風景となっています。

同僚達の行動はのんびり自由に映ります。時間に几帳面な日本人から見ると、遅刻や早退の自然さに驚きますが、彼らの行動をよく見ているとその理由が見えてきます。私の職務上の同僚(カウンターパート)Jは、同僚を乗せて出張に行くために使う自家用車を洗車したり、夜中に近所の急病人を病院に送り届けたために眠れなかったり、孫の面倒を見る妻の具合が悪く変わりに面倒を見たり、娘を州都の塾に片道2時間近くかけて送りに行ったり。仕事の業務にはカウントされませんが、Jは仕事のために、家族や地域の人のためにその役割を果たしています。その分、終わらなかった仕事は家に持ち帰り、夜まで黙々と保健センターからの月間報告データを処理しています。

保健所は、業務分担制で自分の仕事をこなせばよいので、サンタイな職場はスーパーフレックス制とも言えるでしょう。

家庭訪問に行く道のりJのお宅にホームステイをしている私は、Jの地域や家庭での様子がよく見えます。Jは几帳面で綺麗好きで、朝から晩まで家の掃除や修理をしています。50歳半ばのイスラム教の男性が台所仕事をすることは希のようですが、Jは率先して洗い物もこなします。また、一緒に住む孫をこよなく愛し、孫のご飯はJ担当。州都で学生中の長女に変わって面倒を見ています。さらに、自宅でキオス(売店)を営むJは、仕事帰りにこまめに商品を買い足し、値札付け、商品管理もしています。急いでいる時もお客がくれば必ず対応し、お金がなければツケでもOK。その真面目さ、誠実さと、家庭を第一にし、しっかりと治めている姿は、模範的な一家の主です。お陰で夫婦は仲良しで(年上女房で尻に敷かれ気味ですが・・・)、子どもも素直に育っています。
写真:市の保健センターの保健師と家庭訪問に行く道のり(子連れで)

国際協力をする際に、活動上のキーパーソンとなるカウンターパート。職場だけの顔しか知らなければ、Jはプロフェッショナル意識の欠けた遅刻魔・早退魔。あるいは、おしゃべりやお祈りで仕事が中断しおまけにコンピューターを扱えない、やる気のない仕事効率の悪いカウンターパートと思ったかもしれません。

しかし、生活の側面、一人のJとしてカウンターパートを捉える時に、仕事をこなしながら家庭を治め、バランスの取れた生活を送っている豊かな人に思えます。

暖かい気候と豊かな自然の恵みに預かり、ゆったりとした時間の流れの中でインドネシア人は明るく大らかです。大切なものを大切にできる幸せがここにある、とJの背中を見つめながら教えられています。

シェア会員 山口綾子
機関誌「Bon Partage」No.146(2010年1月)掲載
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