2年以上もひとりで悩み続けたHIV陽性者。
会社員のハイメ(仮名)さん。30代。英語と片言の日本語で不安そうな声でシェアに相談してきました。数年前に近くのクリニックで、HIVの抗体検査を受けたところ、HIV陽性と判明、エイズ拠点病院を紹介されました。しかし、病院を受診すると、病院が入管に、自分がHIV陽性者であることを通報してしまうのではないか、通報により在留資格が剥奪され、今の仕事ができなくなるのではないか、という不安・恐怖心が募り、誰にも相談できず、約2年間ひとりで悩んでいました。
ノウハウをもっと共有できていれば・・・
病院などの医療機関は患者情報の守秘義務があり、入管に勝手に通報したり個人情報を流したりできません。しかも、在留資格も安定しており、社会保険にもしっかり加入できていました。そのため、日本で受診をし、HIVの治療を受けられる環境にありました。
最初のクリニックで通訳を導入し、外国人医療に関するノウハウを少しでも持った医師が対応してくれていたら、もしくはシェアのような外国人支援NGOを紹介してくれていたら、ハイメさんは2年も悩まずにすんだのに、とシェアとして更なる広報や啓発の必要性を痛感しました。
ちょっとした行き違いが「不安」の種になってしまう。
シェアはハイメさんに、日本ではHIV陽性を理由に在留を拒むような法律はないことを伝え、安心して受診できることを繰り返し説明しました。その結果、ハイメさんの通いやすいエイズ拠点病院を決め、そこに受診する方向になりました。今回、相談を受ける中で、ハイメさんが2年間も誰にも相談できないでいた気持ちを少し知ることができました。ハイメさんが最初にクリニックの医師からHIV陽性の告知を受けた時、次回来るときは「パスポートを持って来い」といわれたことが不安を募らせたのでした。通報するために提示を求めたわけではないと推測できますが、言葉の問題や説明不足でここまで不安を募らせてしまうことを実感しました。
外国人の受け入れノウハウを広めていくことで、円滑な治療体制をつくる。
シェアでは研修などの機会を通じて言葉が通じない環境でHIV陽性の告知や初回の病状説明を行うことで生じ得る問題を医療関係者に伝えています。初回は必ず通訳付きで告知がなされる環境が整えられるよう、今後も働きかけを続けていきたいと思います。
医療相談員対象の研修。