ポスト・ミレニアム開発目標の時代とシェアの目指すもの
―保健ボランティアのルネッサンスを各地で広げていきたい―
プラタナスの街路樹の深い緑のねぐらに、夕方、たくさんのスズメたちが、嬉々とした声を上げながら飛び込んでいくのを見て、いのちを創り、繋いでいくものたちの不思議な助け合いに心を打たれるこの頃です。プラタナスは晩秋には葉を落とす木です。
平素からの皆さまの温かいご支援に心より感謝申し上げます。
古い話になりますが、シェアが初めて東北タイ¥に工藤芙美子看護師を派遣したのは1990年のことでした。彼女は、村の保健ボランティアと協働する中で、対話を通して村人の下痢疾患を劇的に減らすことに成功し、東北タイでの保健ボランティア活動のモデルとなっていきます。それから四半世紀が経ちましたが、以来、シェアが一貫して共に働き、共に学ぶパートナーとして重視してきたのが、日本を含む各国の保健ボランティアでした。
その保健ボランティアが、21世紀の健康な社会づくりの担い手として、世界各地で新たな期待を生んでいることをご存知でしょうか。
オバマ大統領が、国内の大きな障害や反対を乗り越えて、曲りなりにもスタートさせたアメリカ版の皆保険制度への一里塚、Affordable Care Act(通称「オバマケア」)もその一例です。オバマケア普及のために、多数の、Community Health Workers(CHWs)と呼ばれる保健ボランティアの存在と活躍が<かなめ>(Linchpin)であると認識され、いくつもの州で、CHWの再訓練や養成のプログラムがスタートしたり、僻地への彼らの配置を促すためのさまざまな仕組みが作られています。(ニューイングランド医学雑誌 2013年9月5日号)
ポスト・ミレニアム開発目標の時代に、人類の共通達成目標となっていることの一つは、Universal Health Coverage(UHC)と呼ばれる、日本で言えば国民皆保険制度です。それを、世界のすべての人に実現することが、WHO(世界保健機構)を中心に、新しいグローバル・ヘルスの課題として据えられようとしています。21世紀にプライマリ・ヘルス・ケアがますます必要になっているというWHOの認識は、超高齢社会となった日本にとって一層当てはまることでしょう。
シェアは、いまカンボジアでも、東ティモールでも、タイの現地財団HSFや、気仙沼のNPO法人プロジェクトKや、在日タイ人の自助・互助組織タワンなどとの協力活動においても、また在日外国人健康相談活動においても、保健ボランティアを地域の中で、いかにして生き生きした、質の高い、持続性のある活動として、育て、協働していくかを重要なテーマとして取り組んでいます。
どうか、私どもの働きを引き続き見守り、応援していただければ幸いです。
2014年7月
(認定)特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会
代表