「パスを繋いで、ゴール!!!」 そのとき・・・
ブラジルで行われているワールドカップの大歓声は中継され日本でも大勢の人をテレビの前に釘付けにしています。日本で働く外国人も出身国の選手の活躍に声援を送っています。でも多くの外国人にとって、日本での生活は病気をした時に大きく暗転します。一人寂しい部屋のテレビの前で、「ゴール」と声援を送りながら激しく咳き込んでいる若者が今日も日本のどこかにいるのではないでしょうか。
そんなことを思うのは私たちが受けた一人の相談から。
咳と痰が続いたジョン(仮名)さん。次第に寝汗やだるさがひどくなり、職場の上司に文句を言われながら何とか休みをもらって病院に行った時には1ヵ月がたっていました。何か病気があればすぐクビになってしまう不安から誰にも通訳は頼めませんでした。
知っている限りの日本語で、自分の症状について身振り手振りで伝えます。でも、医師が聞いてくることは理解できないし、医師も困ったような顔です。結局その日は風邪薬らしきものをもらって帰りましたが病状は良くなりませんでした。
ジョンさんのように人手不足の製造業を支えるために日本に来て働く外国人の数は増えています。高額な借金をして日本に来たものの、病気がわかると途中で帰国させられてしまうのではと、病院に行くことをためらうことがしばしばです。ジョンさんも長引く咳が気がかりでしたが、たびたび休みをもらうことが難しかったのです。仕送りしている家族のことを考えると今は頑張るしかない、いつか良くなるだろうと市販の咳止めを飲んで我慢をして働き続けたのですが・・・。
半年後、呼吸困難で思うように動けなくなり、ジョンさんは入院。「結核」が重症化していました。
言葉が通じない、職場での弱い立場、そのことが命を脅かすことがあるのです。
日本人と在日外国人の間には、健康格差があります。そしてそれは命の格差に繋がり、例えば女性では1.3倍日本人より死亡率が高くなっています。高度な医療技術を持ち、他国にも誇れる医療保険制度が整い、長寿国として知られる日本ですが、誰もが平等に健康でいられるわけではないのです。
誰もが平等に健康で暮らせる社会つくりたい。
ジョンさんのように困っている外国人は今も日本のどこかにいます。シェアは、在日外国人の医療アクセス支援として、医療電話相談、無料の健康相談会などを行っています。例えば結核の場合、患者を支援する保健所からの依頼を受けて、東京都・シェアを介して派遣された医療通訳(支援員)によって、母国語で説明をうけ、自分の症状を理解し、治療費が無料あるいは低額であることを知り安心して治療を受けることができます。また、職場復帰についても保健師等と相談し、治療継続しながら元の生活へと戻ることが可能となります。
通訳の研修。訓練を受けた医療通訳により、患者も病院も安心して治療を進める事が可能になります。
もし、病院で言葉が通じていたら、職場に相談できる人がいたら、近くに頼れる人がいたら、
「もし・・・」
命のパスを繋ぐのは、同じ地域(ピッチ)に共に立つ私たち。そして日本は191カ国の人々が集う多国籍チーム。
“すべての人の健康”というゴールを目指して、
私たちのワールドカップは、これからが始まりです
日本、そしてアジアの国々で行う、命を守るシェアの活動へ、あなたの参加をお待ちしています。
[天の川募金]へのご協力をお願いします。