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(認定)特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会 シェアは、保健医療を中心として国際協力活動を行っている民間団体(NGO)です。

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スタッフ日記 現場の声を毎日配信

今、NGOが果たす市民社会への役割 vol.3

伊藤道雄氏インタビュー


vol1.現代の日本社会におけるNGOの役割 

アジア・コミュニティ・センター21のミッション

小林:最後に伊藤さん自身のこれからのアジア・コミュニティー・センター21の構想や夢をお聞かせいただければ。

伊藤:私は、30年近くもアジアのNGO等への支援活動に関わり、アジア各地に信頼する友人・知人が出来ました。彼らや彼女たちは、貧困や人権剥奪の状態に置かれた同胞のために立ち上がって活動する私の仲間です。こうした仲間たちと連携して、公正で、公平な、そして生き生きとした社会をアジアに作れないかと考えたのです。そのためには、いろいろな『流れ』を促進することが大事ではないかと考えたのです。ちょうど、人間の身体が健康であるためには、血液の循環、すなわち『流れ』が大事なように。『流れ』が停滞すると、身体の各器官の機能が阻害され、いろいろな病気を引き起こし健康を損ねてしまう。 それで、社会の『流れ』を見ると、まず第一に資金の流れがあります。現在、アジアのみならず、世界の貧富の格差は大きく、資金は偏在しています。このまま放っておくと、社会という"身体"の貧困部分には、栄養が行き渡らず、病気を引き起こし―すでに起きていますが―その病気は、健康を蝕み始めます。社会不安の増大がそのひとつです。一方、資金が集まっている部分では、これでもかこれでもかと多資源多消費の生産活動、生活が行われ、環境破壊、環境汚染が進んでいます。悪いことに、こうした"肥満症"の病気は、貧困者の生活領域を含め、地球全体の機能を低下させています。こうした状況を見て、資金の『流れ』を作る活動をします。そのための事業として、公益信託アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)の事務局を担い、持てる人から資金を集め、持てないアジアの人々に回し、自立を促すための資金援助活動を行っています。 二つ目の『流れ』は、人の流れです。人にはお金も情報もついてきますが、人の流れが澱んでいると、考え方が固定化され、動脈硬化を起こしかねません。高齢者と若者の交流、セクターを超えた交流、国境や国籍を超えた交流、多様な思想や経験を持つ人たちの交流を進めていきます。2年ほど前、ロータリークラブの人たち、その多くは高齢者の人たちですが、カンボジアにご案内しました。そしでそこで、ACC21が仲介役になって、彼らの資金で応援している農村のコミュニティ幼稚園に案内しました。みなさん感動されるのです。「こんな輝いた目を持った子どもを見るのは久しぶりだ」、と。それで、みなさんは今後も応援したいという気持ちになり、同時に村の人々が置かれた状況を理解し始めます。 NGO間の『流れ』について言えば、フィリピンのNGO関係者と、フィリピンに関わる日本のNGO関係者の「人」の流れを作っています。2006年からスタートして、日比両国のNGO関係者が一堂に集う「日比NGOシンポジウム」を隔年に相互の国で開いています。毎回、150~200人の関係者が集まり、数日間、意見交換を行い、共同による行動計画を立て、連携関係を進めて行きます。人が出会うことから、新しいアイデアが生まれ、新しい関係が出来てきます。 三番目は情報の『流れ』です。「デジタル・デバイド」という言葉があるように、コンピュータが普及し始めてから、そのネットワークにアクセスできる人たちと、そうでない人たち、とくに貧しくてコンピュータを買えない人たちや農村地域の人たちの間には情報格差が広がっています。経済格差の拡大イコール情報格差の拡大と言ってもよいのでは。そこで、ITを使って、アジアの貧しい人たちのために、情報普及や研修・教育の機会の提供を考えました。それは、日本でいう公民館のようなところで、IT機器を備えて、農民の研修や教育活動を行おうというものです。残念ながら、この構想は実現していません。そこで、現在行っている活動は、伝統的手法ですが、現地で研修を行うと同時に、印刷物にしたもので知識・情報の普及を図っています。例えば、環境を破壊せず、なおかつ収量の上がる自然農業をの実践法をインドやインドネシアの貧農の人たちに、彼らの使う言語に翻訳して、普及しています。 第四の『流れ』として政策・制度の変革を進める活動を行っています。すでに多くの団体は、こうした活動を推し進めていますが、私たちも、この『流れ』を作り、共に推し進めていきたい。なぜ、政策・制度の変革が必要かというと、現代の経済政策や社会政策そして公共政策そしてそれらを支える制度は、それぞれの国の都合や、国際的エリート層の人たちによって作られているもので、社会の貧困層や弱者の人たちの考えは、必ずしも反映していません。そうした人たちが、社会の中枢に参加できるように、政策・制度の変更が必要と考えています。例えば、国際的な新しい税制度の導入。アシストという団体が推進している「国際連帯税」の創設や「金融取引税」の導入運動に参加していますし、一方、「日比NGOネットワーク」の仲間たちと共に、日本のODAが日本と途上国のNGOの共同管理で使えるように新制度の導入を政府に働きかけています。 最後に、これら四つの『流れ』を作り、広げていくための人材育成に取り組んでいます。それが、小林さんも参加された「アジアNGOリーダー塾」です。アジアを中心とした国際協力NGOの起業家塾です。非政府・非営利の立場から、アジアにもうひとつのビジョンを描き、社会デザインをし、アジア各地のNGOリーダーたちと対話し、協働し、新しい社会づくりをリードする人材を育てたいと願っています。詳細については、ACC21のウェブを見てください。

小林:今、具体的に進んでいるプロジェクトはありますか?『リーダー塾』以外で。

伊藤
:いくつかの事業がありますが、まず中心的な事業として、30年前に誕生した日本最初のコミュニティ型公益信託「アジア・コミュニティ・トラスト」(ACT)の事務局活動です。法的には、信託銀行5社が受託者になっていますが、これら銀行に設定される特別基金の利息収入と各基金から取り崩した資金を基礎に、毎年3000万円ほどの助成金をアジアのNGO支援に振り向けています。ACC21は、国内で広報、募金する傍ら、アジアの支援先となるNGOの基礎調査と、支援後のモニターおよび評価活動を行っています。二つ目は、日本とフィリピンのNGO間および市民社会組織間の連携・協働関係の構築事業です。すでに、3回、両国でシンポジウムを開催し、現在は、日比NGO協働基金の構想を両国のNGO間で進めています。そして最後に、韓国で育った自然農法をインドとインドネシアの貧農間で普及する事業を進めています。インドでは、カースト制度の下位に属する貧しい農民を対象に、自然農法の研修と普及活動を行っています。実際、収穫量が増大するなどの結果が表れたので、地元の新聞「ヒンズー・タイムズ」に取り上げられ、関心を持つ人たちが増えています。

小林
:それでは、最後の最後にシェアの支援者にメッセージとかあれば、もしくは社会全体にでもかまいませんが。

伊藤:では、シェアの支援者の方にメーセッジを。ただ、シェアの実態をそれほど把握しているわけではありませんので、的はずれのメーセッジになるかもしれませんが。 第1に、シェアは、理念がしっかりしていて、理事の方々と事務局の職員の方々のコミットメントがあることで、信頼を寄せるに相応しい団体だと思います。健康の価値に国境はないとの理念のもとに、理事の方々は、毎年数百万円の寄付をされているとのこと。理事の方々がここまでコミットメントしている団体は少ないと思いますよ。創設者の本田先生の貧しい人―海外の途上国の人たちだけでなく、東京都内の山谷の日雇い労働者の人たちや在日外国人労働者―への医療支援の姿勢は、黒沢映画の"赤ひげ"を思い出させます。一方、課題はあるように見受けます。それは、多くの団体と同様、資金調達に苦労されているようで、このことが理事の方々の寄付の拠出につながっているのかもしれませんが、、、市民からの支えは比較的に弱く、政府系資金の割合が高いようにも思います。政府系資金は、いつまでも頼ることは出来ませんから、支援者の方々が周りの人たちに声をかけ、シェアの財政基盤作りにより積極的にご参加いただき、シェアの実行部隊と共に進んでいただきたいなと思います。それこそ、団体名にあるように、市民が中心となる「国際保健協力市民の会」に育て上げ、世界に活躍する"赤ひげ"軍団をつくられることを願っています。また、保健分野でのソーシャル・ビジネスを企業とタイアップして開拓するなど、良い知恵が支援者の方々から出てくるのではないでしょうか。少し、理想的過ぎるかな。でも、そうした方向を目ざさないと、シェアは活動を持続的に続けるのはむずかしくなるでしょうから。専門職である医師の方々、マネジメントを担当する事務局の方々、支援者の方々が力を合わせて、新しい国際協力の世界を切り開いていっていただくことを願っています。

伊藤道雄伊藤道雄
AIIC(the Asian Institute for Intellectual Collaboration:アイック)特任教授。アジア・コミュニティ・センター21代表 理事。21世紀社会デザイン研究学会理事。国際協力NGOセンター(JANIC) を仲間と共同で創設、常務理事を務める。現在JANIC及びシーズ顧問。
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