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(認定)特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会 シェアは、保健医療を中心として国際協力活動を行っている民間団体(NGO)です。

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スタッフ日記 現場の声を毎日配信

今、NGOが果たす市民社会への役割 vol.2

伊藤道雄氏インタビュー



vol1.現代の日本社会におけるNGOの役割 


なぜ、中間団体が必要なのか?

小林:シェアとかJVC、その他『老舗』のNGOというものは、途上国の現地で、医療だとか、教育、保健衛生、人材育成という実際の活動をするケースが多いわけですが、伊藤さんの場合はそうではなくて、JANICとかアジア・コミュニティー・センター21とか、いわゆる中間組織をより重要視されているように見えるのですが、、、。

伊藤:私の性格であるかもしれませんが、私は、現場で活躍する団体を応援したいという気持ちが根底にあります。私は、数多くの市民団体が、現地国のNGOを含めてですが、困った人を助けようとしている。とても尊い仕事だと思います。本来なら、企業や政府機関に勤め、もっと高い給与をもらって、安定した生活が出来るかもしれないのにですよ。そうした人たちを見て、応援したいという気持ちになるのです。そして、同時に考えるのですが、そうした団体を結び付けていくことによって、もっと大きな力を発揮するのではと。要するに、社会を動かすには、「点」を「線」に、そして「線」を「面」にという考えです。「点」を「線」にというのは、個々の市民団体の結びつき、「線」を「面」にというのは、市民団体の世界を政府や経済界と結んでいくという考えです。こうした結びつきを進めていくことによって、小さな「点」も大きな力を発揮すると考えるのです。私がJANICの設立を1980年代に呼びかけたときも、そうした考えに基づいていました。そして、その後、政府との関係においては「NGO‐外務省定期協議会」を立ち上げたり、労働組合とは「NGO・労働組合国際協働フォーラム」を立ち上げたりしました。 2005年にアジア・コミュニティ・センター21を立ち上げたときも、日本とアジアの多様なアクターを結び付け、共に貧困問題に取り組んでいきたいと考えたのです。 こうした組織を中間組織と呼ぶのでしょうが、日本社会では、その意義や役割についてよく理解されているわけではありません。むしろ、余計なことだとか、活動が抽象的だとか、八方美人風に捉えられ勝ちで、評価されないことが多いですね。したがって、資金集めは難しいですよ。それよりも現場で活動する団体のほうが評価される。具体的で説明し易いですからね。ただ、我々の市民活動をもっと効果たらしめんためには、仲間のネットを作って仲間に支えられ、さらに開かれた形で「面」にしていく作業が必要だと考えるのですが。

小林:おっしゃる通り、日本人はそういう活動が苦手なのかもしれません。例えばJANICに加盟している、ある程度組織ができているNPO・NGO、『シェア』もそういうNGOの一つだと思うのですが、ネットワークにかけるエネルギーというのは極めて小さくて、自分たちの現場の仕事、自分たちのポイント(点)からなかなか離れられない。自分たちの関わる分野、たいていはニッチなわけですが、そこにこだわって、悪く言うと自分たちの活動を『囲い込む』ような傾向にあると思います。どうすれば日本のNPO・NGOのネットワークというのは、より活性化し、より具体的な成果をあげられるような方向に進めるとお考えですか。

伊藤
:少し観念的になりますが、私は、第一に、ネットワークを構成する一人ひとりが自立した『個』そして『開かれた個』を持つことかと考えます。『開かれた個』というのは、自分が持つ知識・経験・技術というものを他者と共有しようとする『個』です。ネットワークというのは、利己的な『個』では進みません。ネットワークに入る個人や組織は、よく何がメリットなのか、得るほうを中心に考えがちですが、このような姿勢では、ネットワークは沈滞化します。ネットワークを活性化するには、自らが積極的に情報や経験を共有していこうとする姿勢を持たないと。第二に、組織間で活動上の共通の価値観そして目標を確認し合うことだと思います。この点がしっかりしていないと、ネットワーク作りがうまくいきませんし、長続きしません。第三に、日頃から、キーパーソンとなる他団体の人たちと信頼できる人間関係を作っておくことです。何かあったら、電話ですぐに相談・協議できるような関係を。第四に、リーダーシップです。何か共同で行動を起こしていきたいと考える課題が生まれたら、誰かが、一人または複数の人が行動を起こし、呼びかけ、まとめて行かなければなりません。そのリーダーシップが必要です。 しかし、現場を活動の中心とするNGOの人たちには時間がないかもしれませんので、そうした場合は、中間組織に働きかけ、その役割を果たしてもらう必要が出てきます。あるいは、中間組織がメンバーの共通課題を確認し音頭をとり、ネットワーク化していく必要があります。そういった意味でも、中間組織は、メンバー間の情報の流れを常に円滑にしておく努力をしなければなりません。

資金調達の難しさとCSR、社会起業の動向について

小林:日本のNGO界・NPO界というのは、足腰が弱いと言われていて、資金が集まらないというのは、どこの組織の場合も悩みの種になっています。一般個人からの寄付が少なく、公的資金に依存する傾向がどうしても強い。最近では公的資金に頼るのは良くないということで、今度は民間、企業のお金をあてにする傾向が非常に強くなっています。更に最近のトレンドとして、社会起業のような形で自ら事業をしてお金を稼ぐというのが正しいNGOのありかただろう、というような意見が強くなってきています。もちろん、様々な形があっていい訳ですが、NGOの資金について伊藤さんのお考えはありますか?

伊藤:そうですね。まず、私は、冒頭でも述べましたように、NGOを『自発的な市民組織または団体』として捉えていますから、その立場に立ってお話しします。資金源としては、民間助成金など他にもありますが、小林さんがおっしゃった個人の寄付、公的資金、企業からの支援、自らの社会的ビジネスを通した収入という4つの資金源について、私の考えをお話したいと思います。第一に、市民組織は市民と共に歩む姿勢を持つことが基本だと考えます。そのためには、市民へ常に働きかけ、賛助会員として参加してもらい、また寄付者の形で支えてもらう努力が大事です。NGOは、ある種の市民運動ですから。出来れば、こうした個人の賛助会費や寄付金が財源の50%以上を占めるのが望ましいでしょう。ただ、実際にはそう簡単なことではありませんが。 第二の資金調達先として、外務省をはじめとする公的資金があります。私は、こうした公的資金は、貰っていいと思います。ただ、公的資金は、条件が厳しく、往々にして使いづらく、また支援を受ける期間に限度があります。したがって、自分の組織に公的資金が要求する条件を満たすだけの組織能力があるかどうかを見極めておく必要があります。そして大事なことは、公的資金を使うことによって、自分たちの組織の価値観や目標が歪められないことです。また、公的資金を受けられる期間は限りがありますから、組織の長期的活動計画の中に、公的資金が無くなっても、活動が継続できるように位置づけておく必要があります。できれば、公的資金は、団体総収入の4分の1程度に留めておきたいものです。第三に、企業寄付ですが、受けるにあたっては微妙なものがあります。政府の資金ほど硬直性はなく使いやすいかもしれないけれど、寄付しようとする企業がどのような方針で経営をしているかです。企業の基本は、財とサービスの提供を通した利潤追求でありマーケットの拡大です。これは、当然のことですが、利潤追求とマーケット拡大の競争が行き過ぎると、生産コスト節減のため十分な対策をとらず、環境破壊や汚染を起こしたり、また途上国の労働者の賃金を不当に低く抑えたり、現地サプライヤーが児童労働を使ったりすることもあります。このことをよく理解した上で対応していく必要があります。企業にも、いろいろな企業がありますから、ひと括りに言えませんが、企業の社会的責任(CSR)の一環だとしてNGO等に積極的に寄付し、イメージアップを図る会社もありますから、その点は注意し、毅然とした態度で付き合う必要があります。時には、寄付を受けるより、その会社に社会的責任を果たすよう、アピールすることがもっと大事な場合もあります。 ここで、私が危惧していることを2点申し上げると、ひとつに、企業がCSRやCRM(コーズ・リレーティッド・マーケティング)の名の下で、急速にNGOとのパートナー関係を作ろうとしていることです。NGO側に責任ある事業実施能力が問われますが、同時に、企業側は、有名NGOと関係を持ちたがっているようです。それは、宣伝効果があるからでしょう。こうなってくると、地道にいい仕事をしていても、名前が知られていない小さな団体は企業に相手にされず、資金動員力においてその格差が開いてくることです。有名なNGOはますます大きくなり、小さな団体は伸び悩みます。こうした状況の中で、JANICは、NGOと企業間の合同学習会を進めているようですが、小さな団体にもプール化した企業の資金やノウハウが回るような仕組みを作ると良いのではないかと考えます。 危惧する二つ目の点は、近年、多国籍企業がますます肥大化し、世界の市場に大きな影響力を持つ中で、途上国の貧困層のマーケット開拓を含め世界のNGOと連携しようとしていることです。確かに、貧困削減に繋がるかもしれませんが、その後に現れる世界ってどんな世界なのだろうか、という余計なことを考えてしまいます。世界の至るところで、限られた数の多国籍企業の製品がシェア―を伸ばし、同じようなペットボトルの飲料水やファーストフッド、スポーツ用品や衣料品、そして医薬品等が出回るという状況かなと想像してしまいます。地域の伝統や文化に基づく産業が、片隅に追いやられ、世界は単一化されたライフスタイルになっていくのでは、、、。そうなった世界って面白いのかな、違いが見いだせない世界になったら人間は感動して生きていくことができないのではないか、って余計な心配をしています。NGOの人たちには、小さなことや、地域の文化や価値観を大切にする人々が多いと信じていますが、活動資金をもらうために、こうしたモンスター化した多国籍企業の一環に組み込まれていっては自律した批判が出来なくなるのでは、と危惧しています。NGOは、むしろこうした傾向に対し、警告を発する役割を持っているのではないかと思うのです。 最後に、社会的企業、あるいは横文字で言うソーシャル・ビジネスを通した資金作りですが、私の考えを2点。第1点は、寄付とか助成金とか委託金に頼るNGO関係者に刺激になっていること。自分たちの資金作りのあり方が、これでいいのだろうかと考える関係者も出てきています。私自身も刺激を受けています。NGOの資金集めの基本は、市民からのサポートだと言いました。その考えは、変えるつもりはありません。ただ、日本社会の市民に訴え、活動の持続的な維持そして発展を保証するまでの十分なサポート体制を作るには長丁場を覚悟する必要があります。現在、寄付税制の改正が進められつつありますが、市民が意識を変え、その制度を積極的に利用するにはまだ時間がかかるのではないでしょうか。一方、ソーシャル・ビジネスの発想は、資金作りも、途上国の支援対象者にも「自助の精神」を育むものですから、良いと思います。自らが儲け、自立しようとする姿勢は肝要です。マイクロファイナンスが、その良い事例です。支援する側も、ビジネス化し市場から資金調達し、借り手の貧しい人たちも、小さなビジネスを始め、儲けたお金から返済していくというものですから。また、フェアトレードもひとつのソーシャル・ビジネスだと考えます。ただ、ビジネスはビジネスですから、甘えは許されないと思います。貧困者支援や環境保護などのミッションを追求しながら、ビジネスとして競争に打ち勝っていくには、相当の能力が要求されるのではないでしょうか。最近、若い人たちが、ソーシャル・ビジネスに関心を持って行動を起こしているのを見るにつけ、頼もしく感じていますよ。NGO関係者も、こうした若者たちと連携し、切磋琢磨する必要があるんじゃないですか。

これからの市民社会はどこに向かってゆくのか?

小林:今後の市民社会のお話を伺いたいんですが・・・。今、NPOやNGO、社会起業などを含めて、さまざまな市民セクターが、公益に関わるいろいろな動きがでてきていると思います。伊藤さんは、今後どのようにこれらの役割が整理されていくとお考えですか。

伊藤:市民セクターという用語ですが、市民社会セクターとして理解していいですか。もし、そうなら、政府と企業を除いたセクターのことですね。このセクターは、最近、世界的に市民社会セクターと呼ばれるようになっています。そうだとすると、このセクターでは、政府と企業以外のさまざま性格を持つ非営利団体が活動しています。例えば、協同組合、労働組合、公益法人、NPOあるいはNGOと呼ばれる市民系の団体、教育機関や福祉機関など。社会的企業は、企業セクターと市民社会セクターにまたがっていると理解していますので、カテゴリー分けは難しいですね。 ここでは、小林さんがおっしゃっているNPO、NGOと呼ばれる市民系の団体と社会的企業に絞って考えたいと思います。 もし、このような理解で、市民系の団体の今後の役割を考えると、二つの側面があります。ひとつは、自発的に組織化された市民団体として持つ特徴を最大限活かした役割。例えば、政府が法律・制度に縛られ、政治に影響され、組織単位は大きく、活動においては公平性、中立性を要求されるところから生じる制約―例えば、時間がかかり、決まったことしかできない硬直性を抱えているのに比べ、市民系団体は、規模は小さいですが、機動的に、柔軟に、創造性を持って、そして試行錯誤的に活動できるということ。したがって、この性質を最大限に活かして社会に働きかけることが出来ること。一方、企業の性質―利潤追求から離れられない―から開放され、社会の問題解決のために損得抜きにして自発的に動けるという立場にあること。NPO、NGOは、したがって、この二つのセクターが抱える限界を超えて活動できるということです。そしてそうした活動は、社会を活性化し、潤いのあるものにすると確信しています。 もうひとつの役割は、政府と企業セクターから独立している組織体としてNPO、NGOは、政府の方針や政策そして企業の活動について問題ありと判断すれば、その変更・改善を求めて意見を述べ、行動し、必要に応じて代替案の提言を行うことです。国益や企業益にとらわれない「ひと」を中心とした自由な発想で主張し、行動を起こすことが出来ると思います。そして、この行動が、社会を前進させると思います。 さらに、社会的企業ですが、この出現は、NGO活動の在り方にも、利潤追求型の従来の企業の在り方にも、挑戦を突き付けていると思います。NGOには、貧困削減のためにはビジネス感覚が必要であること。企業にはビジネスが貧困問題解決にも役割があるのだと気付かせたこと、です。今後、市民系の団体がどのように展開していくかを見守りたいと思います。

小林:シェアも今年で27年になるのですが、そうなった時に、いわゆる伝統的なNGOの役割も、ある意味で変わってきているのかなと思います。多様なアクターが現れてくる中で、やはり自分たちの活動も一般人の視線で見直さなければならないと思うのですが、今の伝統的NGO、あるいはシェアでも構いませんが、どのように見えていらっしゃいますか?やはり変わっていないなぁと思われますか?

伊藤
:シェアについて良く理解しているわけではありませんが、シェアが掲げている「健康を世界に」「健康で平和な世界を全ての人と分かち合うために」という考えは、誰もが共鳴できるものですよね。その考えを追求し実現するためにいろいろなことをされている。世界の途上国に専門家やボランティアを派遣され、他方で東京都内の山谷地区のホームレスの人や在日外国人の健康を守るためにも支援活動されている。国籍を問わずに、「ひと」の健康を守ろうとするこの姿勢は、新しい地球社会づくりをめざすもので、政府や企業が必ずしも出来るものではないですよ。 小林:シェアの場合は、日本の国際協力NGOの中ではめずらしく、日本国内にも事業を持っています。特に外国人に対する医療支援をしています。もちろん、人権をベースにしているので国籍、在留資格等、まったく関係なしに支援しています。

伊藤:私は、国籍、在留資格等に全く関係なしに医療支援されるシェアの姿勢に深く共鳴しています。それでこそ、Non-Governmental Organization、すなわちNGOですよ。政府は法律に準じて行動しなくてはいけない。一方、NGOは「ひと」に焦点を置きます。そうした考えや活動が、日本を、そして世界のあり方を変えていくと信じています。


次回:vol3.ACC21が目指すもの、シェアの活動・組織運営方針に対するコメント
伊藤道雄伊藤道雄
AIIC(the Asian Institute for Intellectual Collaboration:アイック)特任教授。アジア・コミュニティ・センター21代表 理事。21世紀社会デザイン研究学会理事。国際協力NGOセンター(JANIC) を仲間と共同で創設、常務理事を務める。現在JANIC及びシーズ顧問。
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