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(認定)特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会 シェアは、保健医療を中心として国際協力活動を行っている民間団体(NGO)です。

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結核予防法の審議に関する要望書

2006年5月22日

私達は、結核医療を受けることに困難を持つさまざまな立場の人々が結核治療を完了できるように支援をしている民間団体の構成員です。現在論議されようとしている結核予防法と感染症予防法の統合に関する審議は、日本の結核対策の根幹に関わる制度が変更されようという100年に一度の重要なものです。今回の法改正は、感染症患者の人権を守るために特定の病名をつけた法を廃止し、強制措置を最小限にする方向で検討されていると聞いていますが、それによって、提供する医療保障が引き下げられてしまったり、医療を受けることが困難になれば、感染症患者の医療を受ける権利は切り捨てられ本末転倒となってしまいます。結核患者の人権を守り、日本の結核対策を後退させないためには、結核予防法の審議においては以下の点が重要であると考え関係する皆様の熟考をお願いします。

1.結核の影響を受けやすい人々に対する治療完了のための支援の強化が必要
今回の法改定によって結核患者の入院治療期間が短縮されることが予測されます。結核は社会の中で生活基盤が弱い人々の間で流行しやすくWHOが結核治療を無料で行うべきであるとしているのはこのためです。充分な患者支援策をとらずに公費負担による入院医療の短縮だけを行えば、治療継続ができずに多剤耐性結核となってしまう人々が増加し、却って将来の財政負担を増加させることが予想されます。治療継続に困難が生じそうな人々には以下のような例があります。
a.経済基盤の弱い若者
雇用が不安定で健康保険に入れない若者が外来治療を受ける際に、現行制度では肝機能検査などが自費となるため医療費負担が高く、治療中断に至る可能性があります。
b.野宿者
野宿者については、この間の取り組みでは入院期間中に生活保護や宿所の確保、外来DOTSの体制を作ることで結核治療に成果をあげてきています。しかし1ヶ月という限定された入院期間でこれらの体制を整備するには無理があります。生活の立て直しができないまま、治療を中断し、もとの野宿生活に戻り、栄養障害や体力の低下から結核を再発するひとが続出すれば、多剤耐性結核が地域に広がることにつながりかねません。入院期間を短縮しつつ確実な治療を求めるのであれば、入院治療段階から福祉制度による生活基盤の再構築を支援すると共に、外来DOTSを行うために必要な中間施設や、人材を確保する具体的な施策が必要です。
c.外国籍住民
言葉が不自由な外国籍住民にとっては短期間の入院だけでは服薬方法の徹底は困難です。治療中断を避けるためには入院中および外来DOTS中に十分な理解が得られるよう通訳体制の構築が不可欠です。また昨今、日本人と結婚した外国籍女性が出産する際に母国の母親が子育て支援のために短期間来日するケースが増えています。こうした日本人配偶者の呼び寄せ家族が一時滞在中に結核を発症した場合国民健康保険に加入できないため外来治療に切り替わった時点で医療費負担が高額となります。こうした状態では治療を中断する事態が起きやすく、健康保険に入れなくとも医療費を軽減して治療完了を支援する必要があります。この場合、子供への感染が懸念されると同時に母国側に耐性結核を広げる事態も予想されます。こうした事態は沖縄サミット以来感染症対策への貢献を重視している日本の外交政策と整合性を欠き信用を低下させる結果になります。

2.強制隔離を医療保障の交換条件とする考え方からの脱却
今回の法改定に際しては、結核医療の公費負担制度を、強制措置と表裏一体のものとして捉え、強制措置でない外来治療は保険診療にまかせるという意見があったようです。しかし半年以上の治療を完了できなければ耐性結核を生じることにつながる結核については個人の利益のみならず、公衆衛生の維持のためにも治療完了への強力な支援が必要であり外来治療への医療費軽減の支援は不可欠です。また、結核患者が医師の入院勧告に従い自ら入院した場合にも結核対策の法規に基づき治療継続のための医療費支援を行うべきです。そもそも強制的に隔離しなければ感染症治療の医療費を負担できないという考え方自体が「適切な医療提供と人権の尊重」をうたった感染症予防法の前文の精神と食い違っています。また、ハンセン病患者に不必要な隔離政策が行われた原因を検証した「ハンセン病問題に関する検証会議」の報告が感染症に対しては強制力を持たない場合でも公費医療を実施するべきだと提言している事を無視してはなりません(*文末資料参照)。

3.結核入院医療費の公費負担の終了にあたっては、専門家の意見を踏まえた総合的科学的な判断が必要です。
結核対策のもっとも重要な要素は、治療の困難がある結核患者が多剤耐性結核とならないように十分な支援を行うことです。耐性結核や免疫不全などの合併症がある場合は一時的に菌が陰性化しても入院治療を中断してしまえば合併症の治療や全身状態の維持に支障を来たし再度菌陽性化する可能性が高くなります。結核医療専門家の見解を踏まえ科学的かつ人権に配慮した形で入院医療費給付の期間を検討する必要があります。

4.適切な外来医療の提供の保障を
感染者がその時代で行い得る最も上質の医療が受けられるように担保しなければ、多くの感染症患者は法に従わず、有効な感染症対策は行われません。現行の結核予防法34条で提供される医療は昭和30年代の医療を基準に作られたものであり、このまま入院機関の短縮を行うことは医療の後退につながります。医療の進歩に応じた外来医療費の支援を行う範囲を再検討する必要があります。検討が必要なものには、CRP、肝・腎機能検査、断層写真などがあります。また結核患者の入院管理料を他の疾患と同等に引き上げるべきです。
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