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(認定)特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会 シェアは、保健医療を中心として国際協力活動を行っている民間団体(NGO)です。

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国際緊急援助

最近の、世界の緊急事態での国境なき医師団(MSF)の経験と、緊急人道援助の基本的な考え方を概述します。

大規模自然災害:津波、地震

インド洋津波の1週間後には、インドネシア、スリランカなど10カ国以上で200名以上のMSFボランティアが活動し、救援資材を満載したチャーター機が現地に多数到着していました。しかし、緊急ニーズは予想より小さく、多くは国内からの援助によってすでにカバーされていました。さらに、世界中から援助団体が殺到して援助競争の様相を呈し、宿舎、自動車など物価は上昇し、被災地への道路は渋滞しました。MSFは、大部分の地域から早期に撤退する一方、MSFへの津波に対する寄付中止を呼びかけました。緊急ニーズに対応するための資金はすでに集まっており、必要以上の津波寄付金を受け付けるのは不適切と判断したからです。
パキスタン・カシミア地震では、過去の経験から、地震による直接の負傷者よりも、家を失った避難民のための住居と、水、食料、生活・防寒用具、内科医療などの援助を中心に考えていました。しかし実際は、倒壊家屋によって負傷し、一週間以上たってから受診する患者さんが後を絶ちませんでした。避難民への援助の他、空気で膨張させて作るテント病院での手術や、病院の周囲に"医療村"を設置して食・住の提供と処置・診療を行うなど、新しい援助手段を実用化して対応しました。多くの家屋が簡素な木造だったため致命傷は比較的少なく、また、被災者が山中のアクセス困難な地域に広く分散していたため受診まで時間を要したと考えています。
自然災害に対する国際援助は、時間的制約や、道路などインフラによる制約、文化的制約もあり、国内からの援助への補完的な役割である場合も多いと感じています。

紛争、避難民、食糧危機、疾病...

2003年に始まったスーダン・ダルフールの人道危機は、近年ではもっとも重大な緊急事態で、短期間のうちに200万人の難民・避難民が発生しました。
当初、世界の関心は低く、2004年夏の時点でも広大なダルフールに外国人援助スタッフはわずか二百数十名、その三分の一はMSFという状態でした。その後事態は多少改善しましたが、2006年、国際社会が残存反政府勢力の停戦協定参加と、国連軍ダルフール派遣を実現すべく、反政府勢力とスーダン政府の双方に圧力をかけると、両者はこれに反発して戦闘を激化させました。
援助スタッフも標的にされていたるところで援助がストップし、さらに、すでに約束されていた支援金が棚上げされて資金難から活動を中断する団体もあるなど、生活をほぼ100%援助に依存している避難民の状況は、再び極限まで悪化しています。
2005年ニジェールでおきた大規模な食糧危機は、初期にはWFP(世界食糧計画)や現地政府が危機の存在を否定し、メディアの関心も低く、対応したのはMSFなどごく少数でした。
私たちは、緊急食糧援助を行うと同時に、世界に対し事態の深刻さを訴えました。この年、MSFはニジェールで6万人以上の低栄養児を治療しましたが、そのために、栄養失調の重症度分類を見直し、新しい治療プロトコールを大規模に導入しました。

必要とする人たちのための緊急援助

大きな自然災害は世界の注目を集め、そこには援助が殺到します。しかし、国際緊急援助の役割は限られており、しかも多くの場合、中・長期援助に早晩移行できます。これに比べ、ダルフールやニジェールのように、国際社会の無関心のなか、静かに進行し継続する緊急事態をいち早く認識し、これに対応することはとても重要です。2001年に、MSFが途上国でのARV治療(*1)を開始したのも、途上国のHIV/AIDSを顧みられないChronic Emergency(慢性の緊急事態)と認識したからです。
本稿を執筆している2006年10月にも、世界の多くの国々でコレラの集団発生や食糧危機、内戦などの緊急事態に対応しています。
人道援助の目的は、ニーズにあったサポートをして人々の苦しみを軽減することです。緊急ニーズは、報道の有無には関係なく世界に常に多く存在しますが、現地の状況は毎回異なっています。これらに有効に対応するためには、過去の経験の上に安住せず、常時ニーズを評価して適切な援助を行うこと、自分たちの活動を反省して常に改善する柔軟性を持つことが大切です。


*1 Antiretroviral:抗HIV薬 エイズ治療薬のこと

文責:国境なき医師団日本会長 臼井律郎
機関誌「Bon Partage」No.132(2006年11月)掲載
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