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(認定)特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会 シェアは、保健医療を中心として国際協力活動を行っている民間団体(NGO)です。

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地域のリハビリテーション・海外編

人権が議論されるようになって来たCBR
WHO(世界保健機構)のCBR(Community Based Rehabilitation:地域に根ざしたリハビリテーション)マニュアル作成時からCBRをPHC(プライマリ・ヘルス・ケア)と連携させることが奨励され、それがために医療モデルに基づくCBRが主流と成った時代が20年以上にわたって続いている。医療のみでない多分野(multisectoral)的アプローチであるといくら強調されても、その影響は尾を引いている。

CBR合同政策指針書
1980年代のCBRの開始以来、世界各地でWHOの「地域社会でのリハビリを中心とする障害者の訓練」というCBR概念を自己流に解釈した種々のCBRプログラムが実践されるに至った。それ故、WHO、ILO(国際労働機関)、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は1994年にCBRに関する合同政策方針(Joint Position Paper)を発表した。 さらに10年後には改訂版が同じ3機関によって出された。これが最新のCBR像であるといえよう。そこでの目新しい点は、人権、貧困などの不平等の是正、そのエイジェントとしての障害当事者団体の役割の拡大である。その背景には、ミレニアム開発目標(*1)がある。CBRは貧困の削減に対して効果的な対応ができると繰り返し強調されている。2002年から国連で討議が始まった障害者の権利条約を意識して作成されて、人権に1節があてられている。かつ、「人権アプローチに基づいてCBRプログラムが必要であるとの認識」がCBRの4つの必須要素のひとつとされるなどさまざまな箇所に登場する。障害者当事者団体(DPO)の役割は以前よりずっと拡大され、DPOは積極的にCBR実施の際に役割を担う存在となっている。CBR推進に当たって地域社会と肩を並べてDPOの参加が必要とされる。

コミュニティ開発から人権へ
CBRが単なる村落開発の手法であるときには、障害者は社会の一員であったが平等な一員であるための配慮は十分とはいえなかった。障害者にサービスを提供するCBRワーカーとして障害者を選ぶことはCBR実施者の発想にはなかった。適切な発言が期待できる障害者がいないことを理由に、CBR委員会の中に障害者が入ることもなかった。障害者は結局サービスの受け手という地位に甘んじるよりほかなかった。 世界的障害者当事者団体であるDPI(障害者インターナショナル)が2004年のCBR国際コンサルテーションへの意見書で述べていたように、CBR のアプローチは、医療的障害像にこだわることなく、人権に基づいた障害の社会モデルに達することを目標としてきたはずであった。しかしその前提条件となる、地域社会全体における障害者の人権の尊重や、障害者の地域社会での完全参加の積極的な推進は行われてこなかった。何もできなかった障害者が歩けるようになり、地域の学校に通えるようになり、床屋の店が出せればそれでよかった。

シリアのCBRプログラム
WHOのウェブで唯一紹介されているCBRプロジェクトが、シリアのCBRである。これはJICA(国際協力機構)においても自らが実施するCBRの中での誇るべき成功例となっている。 成功の鍵は、障害者のCBRワーカーとしての参加と、その場で考えうる限りのさまざまな活動を駆使して障害者のエンパワメントに務めたことにある。私も実際に訪問してみて、まるでクラブ活動に参加しているかのように、障害の有無とは関係なく村の人々が平等にCBR活動を楽しんでいるのに感激した。 脳性まひの女性は、会合やイベントの初めに自作の詩を朗読することでCBRワーカーとしての務めを果たしていた。誰が障害者かわからにほど、床に座って夢中になってシッティング・バレーをしている男性たちは、シッティング・バレー(座った状態でするバレー)を広めていくことがCBRワーカーの仕事であると確信しているようであった。 障害者のリハビリから始める従来のCBRでは、CBRワーカーが毎日記録を取ることでCBRワーカーと障害者の間に期せずして上下関係を生んでいた。また、少なくも読み書きができることがCBRワーカーの条件であったので、教育を受ける機会のない大半の障害者にはCBRワーカーになることは無理とされた。その意味でシリアのようなCBRプロジェクトが可能であることが証明された意義は大きい。

* 国連ミレニアムサミットにより採択された、貧困改善を目的とした8つの目標。
 
                                                                     文責:ADI(アジア・ディスアビリティ・インスティテート)代表 中西由起子
                                                                                                        機関誌「Bon Partage」No.136(2007年7年)掲載
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